親が余命宣告を受けたら、あなたはどうしますか?

もしも親が余命宣告を受けたら、大きなショックを受けることでしょう。がん告知などが当たり前の時代とはいえ、家族の死を意識して落ち込むのは当然です。しかし、余命はあくまで医療データや医師の経験に基づく予想値です。実際の寿命ではありません。病と闘う親のために、子どもたちのできることを紹介します。

目次

医師が宣告する余命とは? どのように計算しているの!?

余命宣告の根拠はデータからの算出で、治療効果を判定する指標です。決して宣告を受けた方の寿命を意味するものではありません。親が余命宣告を受けたら、子どもも落ち着かなくなるはず。しかし、余命宣告が持つ意味を理解すれば、少しは冷静になれるかもしれません。

余命宣告はがん患者にとって重要な指標

余命の指標としては、「5年生存率」や「生存期間中央値」が代表的です。

生存率とは、診断を受けてから一定期間後に生存している確率をいいます。特にがん患者においては、治療効果を判定する重要な指標とされ、がんの種類など目的に応じて1年、2年、3年、5年、10年といった生存率が用いられます。「1年生存率」が90%、「3年生存率」が70%の場合、治療を行った1年後は90%、3年後には70%の方が生存していることになります。多くのがんは、主に「5年生存率」を治癒率の目安としていますが、乳がんを例とする予後のよいがんは、「10年生存率」のような長期的視点も必要と考えられています。

「生存期間中央値(MST:Median Survival Time)」は、同じ病状である50%の患者さんがお亡くなりになるまでの期間を基準とするものです。ある治療を行った患者さん101人を生存期間の短い順から並べて中央の位置、51人目の方の生存期間となります。データの合計値を人数で割った平均値だと、生存期間が長いデータにひっぱられてしまうため、中央値が用いられているのです。

また、集計方法には、死因に関係なくすべての死亡を含めて計算する実測生存率、性別・年齢が同じ患者群で算出する相対生存率があります。

余命=残された寿命ではない

余命は、その医師がどのような指標で宣告したかによって異なります。必ずしも余命=残された寿命とは限りません。余命を告げられるのは、本人、もしくは本人と近しい人でしょうから、期間の長短は関係なく、衝撃は大きいものです。ただ、「これからどうしたいか」を優先して考えることになり、後悔しない身じまいにつながります。

痛みを伴う治療を希望しないのであれば緩和ケアを、自宅で過ごしたいと考えるのであれば在宅で可能な治療を、といったように医療も含めた「これから」を見つめる必要があります。

セカンドオピニオンも考慮

余命宣告を受けた後、納得して今後の治療や過ごし方を考えていくために、セカンドオピニオンを受けるのも考え方の一つです。

セカンドオピニオンとは担当医とは別の病院で違う医師に診断してもらうことです。担当医に申し訳ない、という気持ちも起こるかもしれません。しかし、今やセカンドオピニオンは当たり前の時代です。治療の選択肢が広がったり、現状の治療方針があっていることの裏付けにもなったりするので、担当医との関係が悪くなることは考えにくいでしょう。

セカンドオピニオンを受ける場合は、担当医から検査結果などのデータをもらい、別の医師に提出します。同じ検査を繰り返すのは本人の負担になるからです。

余命宣告をそのまま受け止められる方は少ないはずです。複数の医師から診断を受ければ、病状の今後の見通しや治療法について幅が広がり、少しでも前向きに受け止められるかもしれません。

余命宣告を受けた本人に伝える?伝えない?

余命宣告は医師が本人に直接伝える場合と、家族に告知する場合があります。少しでも穏やかな日々を過ごせるように、本人への告知はどうすべきなのでしょうか。

家族が「第二の患者」にならないために

最近はあらかじめ知っておきたいという人が多く、家族の負担になることから、本人に直接余命を伝える医師も多いです。ただ、本人のいないところで、家族が余命宣告を受けることもあります。その内容を伝えるべきかどうかは、本人の精神状態や性格、深刻度等々を考えて判断するしかありません。人によっては自暴自棄になったり絶望したりと、病気の進行を早めてしまう可能性もあります。余命宣告は慎重にすべきです。

このように大きな問題を家族だけで抱えるのは心の負担になります。国立がん研究センターが運営するサイト「がん情報サービス」では「家族ががんになったとき」として、家族が「第二の患者」にならないよう、さまざまなヒントを示しています。本人はもちろん、家族も辛い気持ちや不安を、担当医や支援センターに相談することを勧めています。

残された時間との向き合い方は?

また、余命宣告を受けた親に、どのような言葉をかけ、どのように接したらいいのかという悩みも尽きないところでしょう。こちらも個人差はありますが、余命宣告後も周囲には変わらずに自然体で接してもらいたいという人が多いようです。

NPO法人「肺がん患者の会ワンステップ」では、がん患者にアンケートを実施。公式サイトでうれしかった言葉や配慮してほしいことなどを紹介しています。よくいわれることですが、気をつけたいこととして「がんばれ」などといった励ましの言葉が挙げられています。

治療に対して前向きに取り組んでいる患者さんであっても、これ以上何を「がんばる」のか、といたたまれない気持ちになることもあるでしょう。周囲の人が「できるだけ自然体」「ただ話を頷いて聞いてくれる」というだけでも、患者さんにとっては心が休まるといわれています。

お金の心配は保険などでカバー

当然ながら、治療には「お金」が必要です。生命保険に加入していたら、一度証書を見直してみましょう。中でも「リビング・ニーズ特約」は、余命宣告を受けた際に使える制度です。

高度な治療や思い出づくりに役立てる

リビング・ニーズ特約とは、被保険者が医師から余命半年以内の診断が下された際に、死亡保険金の一部または全額が生前給付されるというものです。請求額の上限は3,000万円(加入中の保険額が3,000万円以下の場合はその範囲内)で、使い道は自由です。亡くなった後の死亡保険金はその分減額されますが、闘病中にまとまったお金があることで、より高度な治療を受けたり、思い出づくりをしたりと、本人が悔いなく最期を迎えるための選択肢も広がるでしょう。

ほとんどの生命保険でリビング・ニーズ特約は無料

症状がよくなり、余命より長く生存しても保険金の返還は不要です。生命保険であればほとんどの場合、無料で付加できる特約で、あとづけも可能。自動的に付与されている場合もあるので、保険会社に確認してみましょう。

そして、リビング・ニーズによる生前給付金の最大のメリットは非課税ということ。ただし、被保険者が亡くなった後の保険金には相続税がかかるため、注意が必要です。指定代理請求特約を付加すれば、本人以外でも受け取りができます。ただし、本人に余命宣告をしていない場合は、気づかれてしまうデメリットもあります。

契約している生命保険の内容を改めて確認し、メリット・デメリットを考慮して、有効に活用しましょう。

親が余命宣告を受けたら何をするべき?

余命宣告を受けた本人は心の余裕がないものです。先述の医療方針のほかに、相続や葬儀の希望があっても、子どもを落胆させたり迷惑をかけたりしたくないという気持ちが先に立つものです。思いやりがあるが故、正直には要望を伝えてくれないかもしれません。家族の方から本人の気持ちをくみとってあげることも必要です。「もしも」の時のことは、日頃から話し合える関係を作っておくことが大切ではないでしょうか。

もしも親が余命宣告を受けたら何をすべきか。ここで、いったん整理します。

治療方針を決める

宣告された余命はあくまで統計であることを認識します。その上で、セカンドオピニオンを検討、本人が告知を受けていればその意向を大事にしながら、治療方針を定めましょう。長く生きることも、楽しく生きることも大切です。お互いの価値観を尊重します。

支える家族の健康も大切

本人が辛いのは当然ですが、支える家族の心身にも大きな負担がかかります。少しでも長く一緒に闘病生活をおくるためにも無理をしすぎは禁物。時には友人・知人と息抜きをし、専門家や専門機関を頼ることも考えておきます。

お金の用意をする

保険などを調べて、今後の治療にかかる費用を用意します。保険に入っていない場合でも、もしもの時の資金を貯めておくことで対応できます。それでも不安な場合は、病院の専門窓口や公的機関に相談するのがおすすめです。

また、本人のお金の管理にも気を配っておきます。預貯金の印鑑や通帳の場所、保険の契約状況、引き落とし口座などを聞いておく、エンディングノートなどに家族だけが分かる言葉で記載してもらうのも効果的です。

相続の意向を確認する

余命宣告をされた後に、相続について冷静な判断を下すことは難しいでしょう。あらかじめ家族みんなで相談しておければベストです。突然その日が来た場合には、専門家の活用を検討します。時間や法律の制約があるのでプロに任せるのも一つの手段です。

葬儀の希望を聞いておく

相続同様、余命宣告された状況では、本人の希望は聞きにくいものです。家族も治療や日々の暮らしで精いっぱいで、葬儀を迎えるころには心身とも疲れきってしまうことも考えられます。誰とどこで最後のお見送りをするのか、事前に親の希望をふくめて考えておけば後々の自分のためになります。

かかりつけの医者やいざという時の保険と同様、日ごろからおなじみの葬儀社があれば安心です。家族が亡くなってしまってから探す場合でも、頼りになる葬儀社はたくさんあります。緊急時でも、きちんと話を聞いてくれる葬儀社に依頼すれば間違いは少ないです。葬儀はプラン内容や設備以上に人が重要です。WEBサイトの情報だけで決めずに、よ~く話してみることをおすすめします。話をしているうちに落ち着くことができれば、相性のいい葬儀社かもしれません。

不安を抱える親の心に寄り添って

余命宣告されて動揺しない人はいません。不安になっている本人の心に寄り添うことが第一です。家族もひとりで悩みを抱えずに、仲間と不安を分かち合ったり、専門家を頼ったりすることも大切です。

また、余命宣告を受けてから葬儀や相続について考えるのは気が進まなく、本人にも確認しづらくなります。元気なうちに、できることから取り組めるといいですね。