木魚は読経のリズムを取る仏具。宗派別の違いや使い方を解説

法事・お墓
木魚は読経のリズムを取る仏具。宗派別の違いや使い方を解説

この記事はこんな方にオススメです

木魚の選び方を知りたい人
木魚の由来を知りたい人
木魚(もくぎょ)は、お経を読む際に叩くと、ポクポクと音のなる仏具です。寺院だけでなく、家庭でも仏壇の前に置き、毎日の供養に使われます。この記事では木魚の意味と由来、使い方、宗派別の違いを解説します。また、選ぶ際のポイントとなる大きさや素材、デザインにも触れていますので購入するときの参考にしてください。

木魚の意味と由来

お経を読むときに用いられる木魚。その意味や由来を解説します。

叩くことで煩悩を吐き出させるという意味がある

木魚(もくぎょ)とは、仏教でお経を読む際などに用いられる丸い木製の仏具で、専用の棒(バチ)でたたくと音が鳴ります。木の中は空洞になっており、叩くと「ポクポク」と響きます。大きさは家庭用では5寸(約15センチ)くらいのものが主流で、お寺には1メートルを越える巨大木魚も存在します。
元来木魚は、平たい魚の形をしていたとされ、口の部分に「煩悩の珠」と呼ばれる玉があしらわれていました。それを叩くことで、煩悩を吐き出させるという意味があったと言われています。そのほか、起床や食事の時間、集合などを知らせるときにも使われていました。

魚は寝ない生き物と考えられていたのが由来

木魚の原形は、「開梆」(かいぱん)と呼ばれる魚の形をした法具とされ、京都府宇治市にある黄檗山萬福寺(おうばくざんまんぷくじ)に現在も残っています。かつて魚は四六時中目を開けて、寝ない生き物と考えられていました。それが転じて、いつも目を開けている魚のように怠けることなく、一生懸命修行に励みなさいという意味が込められています。
また、お経が読まれている最中に眠くなる僧侶や修行僧も多く、木魚を叩いて眠気を覚ましていたとも言われています。

読経のリズムを取るための道具でもある

お経を読む際、リズムを取るために木魚を叩くという楽器説もあります。木魚がメトロノームのような役割をし、リズムを取りやすくなるためです。
古来、中国では木魚が民族楽器として使われていました。日本では歌舞伎において、寺院に関連する場面の下座音楽(げざおんがく)に木魚が使用されます。下座音楽とは、舞台下手にある黒御簾(くろみす)の中で演奏される効果音や伴奏のことです。また西洋などでは、木魚を原形とする「テンプルブロック」と呼ばれる打楽器も登場し、ジャズやクラシックのリズム楽器として西洋などで使用されています。

木魚の基本的な使い方と注意点

木魚を使う際は、バチや座布団などが必要です。叩き方の種類も紹介します。

まず必要なものを準備する

    <準備するもの>

  • 木魚
  • 専用のバチ(木魚バチ、木魚しもく、木魚バイとも呼ばれる)
  • 木魚を置く座布団(木魚を支え、叩いているときに動くのを防ぐ)
いずれも仏具店で販売されています。近所に店舗がない場合は、ネット通販を利用するのもおすすめです。価格は大きさや素材、デザインによって変わります。安いものであれば、木魚とバチ、座布団のセットで1万円程度から購入可能です。

木魚の叩き方は2通りある

木魚の叩き方には、頭打ちと合間打ちがあります。例えば浄土宗の場合、次のタイミングで木魚を叩きます。
  • 頭打ち
  • 発声するのと同時に叩く
(例)「ぶ」太字部分を発声するときに叩く
  • 合間打ち
  • 文字と文字の間に叩く
(例)「な━むあ━みだ━ぶ」長音部分で叩く

木魚を叩く時間帯に注意する

木魚を叩くときに注意したいのが時間帯です。早朝や夜遅くに叩くと近所の人から苦情が出るなど、騒音トラブルになりかねません。実際に「苦情を言われた」という声もあります。早朝や夜の遅い時間帯に木魚を叩くのは控えることをおすすめします。

[宗派別]木魚の違い

木魚はすべての宗派で使うわけではありません。読経の際に木魚と違うものを使う宗派や、不要とする宗派もあります。宗派別に木魚の違いを解説します。

禅宗、真言宗、天台宗、浄土宗など

お寺や地域によって異なりますが、木魚は禅宗や真言宗、天台宗、浄土宗などの宗派で主に使われています。叩き方にも宗派で違いがあり、浄土宗以外の宗派では頭打ち、浄土宗では合間打ちが正式とされています。浄土宗でもお参りの人と一緒のときは、リズムを取りやすいように頭打ちで叩くなど使い分けしているお寺もあるようです。

日蓮宗、法華宗

日蓮宗と法華宗では、木鉦(もくしょう)と呼ばれる円錐形をした仏具が使われます。木鉦もお経を読むのに合わせて、木のバチで叩いて音を鳴らします。叩いたときに「カンカン」と音が鳴るのが特徴で、木鉦の歯切れの良い音はリズムが取りやすく、お経を速く読むときに適しているそうです。
ちなみに日蓮宗や法華宗でも、木魚を使う場合があります。祈祷のときは木鉦、法事のときは木魚といったように使い分けることもあります。

浄土真宗

浄土真宗では木魚を使用しません。浄土真宗は独自の教えによる取り決めが多く、般若心経も唱えることはありません。

選ぶときの参考に!木魚の大きさ・素材・デザイン

木魚にはさまざまな大きさや素材、デザインがあります。使用する木魚に決まりはないため、好みで選んで問題ありません。木魚の大きさや素材、デザインを紹介するので、選ぶときの参考にしてください。

大きさで選ぶ

木魚の大きさは寸で表され、一寸(約3センチ)刻みで決められています。家庭用では、5~6寸の大きさのものが一般的です。叩いたときに小さいものは「ポクポク」、大きいものは「ドッドッ」と鳴り、大きいほど重厚感のある音が出ます。
専用の座布団も、木魚に合ったものを選んでください。叩いたときの音は、座布団の硬さと接触している面積によって異なります。家庭用では、木魚より四方の一辺が10センチ程度大きい座布団を選ぶのがおすすめです。例えば大きさが15センチの木魚なら、座布団の幅が25センチのものを選ぶと良いと言えます。

素材で選ぶ

木魚は、楠(くすのき)、栓(せん)、欅(けやき)、桑(くわ)といった木が使用されます。素材別の特徴は以下の通りです。
素材 特徴
太く育つため大きい材料を取り出しやすく、寺院の木魚にも良く使われている。桑に比べると色が白っぽい。
やわらかい材質で、かつて桐の代わりとして使われていた。最近は価格が高騰しているため、使われることが少なくなっている。
楠や栓と比較すると硬めの材質だが、木目が良く出る。
ほかの種類と比較すると硬めの材質だが、木目が良く出る。しかし、木目の揃った材料が取り出しにくい。高級な素材となり高価。時間の経過とともに色が黒くなってきて、風合いが出る。
材質が硬いほど、叩いたときの音が高くなります。

デザインで選ぶ

木魚の中をくり抜き乾燥した後に、以下のような彫刻が施されます。
デザイン 特徴
名古屋彫り 複雑な曲線や渦紋を刻むなど、凝った高級仕様のデザイン。左右に彫られた2匹の龍が一つの珠をくわえ、本体部分には魚のうろこ模様を施した竜頭魚身のデザインが多い。魚から龍となった故事「登竜門」をモチーフにしたものとされている。
並彫り 名古屋彫りを簡略化したデザイン。ほかのデザインと比較して安価。
龍彫り 造りは名古屋彫りと同じだが、細かい部分まで複雑な装飾を彫ったデザイン。素材も色合いが良く、最高品質のものが使用される。
鯱彫り 伝説上の動物である「鯱(しゃち)」を施したデザイン。
製造元によって、デザイン(彫り方)の名称が異なる場合があります。

まずは家庭の仏壇にあった木魚を選ぼう

木魚はただ叩くだけの道具ではなく、煩悩を吐き出す、修行に励むなどの意味があります。また大きさや素材によって、音が違って聞こえるので、購入を検討する際は実物を叩いて確認すると良いかもしれません。仏壇や木魚などの仏具が準備できたら、自宅での先祖供養を毎日の習慣にしてみてはいかがでしょうか。
そのほかの仏具について、こちらの記事で解説していますので参考にしてください。