葬儀で心付けは必要? 相場やタイミング、マナーを解説

ご家族の通夜・葬式準備
葬儀で心付けは必要? 相場やタイミング、マナーを解説
日本には、葬儀を手伝ってくれた人などに感謝の気持ちとして心付けを贈る習わしがあります。葬儀費用とは別に用意する必要があるため、心付けを渡すべきか迷う人も少なくないようです。この記事では、葬儀における心付けの意味や渡す相手、タイミング、金額の相場、マナーなどを詳しく解説します。

葬儀における心付けの意味と必要性

心付けは、昔から日本にある風習の1つ。形式は時代とともに変化していますが、現在も心付けをおこなう地域は少なくありません。最初に、葬儀における心付けの意味や変化について解説します。

心付けは感謝の気持ちを表すもの

心付けとは、恩を受けた人やこれからお世話になる人に「ありがとう」の思いを込めて贈る品物や金銭のことです。海外におけるチップと同類の意味があります。
必ずおこなうべきものではありませんが、冠婚葬祭で助けてもらった人に心付けを贈るのは、日本古来の習慣です。ただし、心付けを贈るべきか、誰にどのくらい贈るかなど、細かな決めごとは地域によって異なります。

心付けの必要性

近年は心付けに対する考え方に変化が生じ、相手が恐縮することもあるため、無理に贈る必要はありません。葬儀社においては、葬儀費用の簡略化や曖昧な勘定・会計の回避が主流になりつつあり、心付けをおこなわない事例が増えています。また、親戚との関わりが少なくなったり、核家族が多くなったりして冠婚葬祭の礼法を把握していない人が増加したのも、心付けが減った要因の1つです。
心付けをするときは、居住地域や業者それぞれの取り決めに沿って準備します。葬儀で手伝いを借りた知人などには心付けを贈り、お礼の気持ちを表すと良いのではないでしょうか。ただし葬儀社の場合は、心付けの受領を禁じ、受け取ると懲罰が発生するところも増えているので、辞退されるパターンもあります。相手の状況を意識した上で、準備することが大切です。

【相手別】葬儀で心付けを渡すタイミングと相場

葬儀を手伝ってくれた人に贈る、心付け。誰にいつ渡すか、どのくらいの金額を準備すべきかなど、気になることはたくさんありますよね。ここでは、心付けを贈る相手とタイミング、相場の一例を紹介します。

葬儀を手伝ってくれた人

葬儀の世話になった友人や知人、親戚などには、お礼を贈るのが礼儀です。通夜と葬儀・告別式を手伝ってもらった場合は両日とも心付けを渡すほか、遠い場所から来た人には車代や宿泊代も用意します。
【世話役、案内係、受付係、台所係】
・お葬式の翌日もしくは翌々日
・代表世話役:1万~3万円、世話役:5,000円~1万円、手伝い:2,000円~3,000円

宗教者への心付け

宗教者にも心付けを準備します。主には車代と食事代です。僧侶には戒名や読経への謝礼としてお布施を、神職には祭祀料(さいしりょう)を渡しますが、これとは別に用立てます。
【僧侶、神職など】
・お葬式の終了後(お帰りになる前)
・車代:実費+5,000円~1万円、食事代:料理の金額+2,000円~3,000円

遠くから来た宗教者に対する車代は、通常より高めの金額を準備します。自家用車を用意したり、お寺や教会で葬儀をおこなったりする場合は不要です。食事代は、宗教者が食事を辞退したときに渡します。

運転手に渡す場合

【寝台車】
・式場や安置所に着いたとき
・2,000円~5,000円(搬送距離が長い場合は多めに)

【ハイヤー】
・ハイヤーを降りるとき
・2,000円~3,000円

【マイクロバス】
・火葬場から式場に戻ったとき
・2,000円~3,000円

【霊柩車】
・式場に着いたとき
・3,000円~5,000円

火葬場のスタッフに渡す場合

【火葬場係員】
・火葬炉に棺を入れるまでに
・3,000円~5,000円

【休憩室係員】
・火葬が終わるまでに
・2,000円~3,000円

【料理配膳人】
・食事を終えたとき
・2,000円~3,000円
ただし、公営火葬場は心付けの受領が懲戒処分の対象になることがあるため、原則必要ありません。

葬儀の心付けにおける3つのマナー

心付けは、お礼の思いを形にしたものなので、失礼にならないよう渡すことが大切です。ここでは、心付けを贈る際のマナーについて紹介します。

1.封筒に入れて渡す

心付けは、ポチ袋や白無地の封筒に入れます。金額が5,000円以上になった場合には、白無地の封筒を使うとより丁寧です。二重になったタイプは「不祝儀が重なる」と考えられるため、一重タイプの封筒を用います。
また、新札を使う必要はありませんが、過度に古くなった紙幣は避けます。想定外の場面で入り用になることもあるため、多めの心付けを準備すると安心。
表書きには、御礼もしくは志、心付けと入れ、その下か裏面の左下に名字のみ記します。なお、あらかじめ袋を準備している葬儀社もあるため、事前確認をおこなうのがおすすめです。

2.個々に直接渡す

お礼の言葉とともに、個々人に直接渡すのが心付けのマナーです。これにより、思わぬトラブルを避けられます。
場合によっては、心付けのタイミングを逃したり、渡し忘れてしまったりすることもあるので、注意します。直接渡すのが困難なときは、他の遺族や世話役、葬儀社の人に託しても問題はありません。ただし僧侶に対しては、喪主がお布施と一緒に心付けを手渡して礼儀を示します。

3.心付けに対するお礼はない

「ありがとう」の思いを表すための心付けは、基本的に返礼されることはありません。どうしてもお礼がしたい、と後日お礼状がくることはあるかもしれませんが、それに返事をする必要はありません。

現金以外に心付けとして渡すお礼の品4つ

親戚や近所の人などに葬儀を手伝ってもらった場合、金銭を渡すと失礼な印象を与える可能性があるため、お礼の品物を贈ることも少なくありません。一般的には「悲しみが続かないように」との思いを込め、消え物を用意すると良いと言われています。ここからは、葬儀のお礼におすすめの品物を紹介するので、参考にしてください。

1.お菓子

洋菓子や和菓子のセットは、後に残らず、相手に配慮したお礼として好まれやすい品物です。洋菓子ならクッキーやマドレーヌ、和菓子ならせんべいや羊羹など、日持ちするものがおすすめです。勤務先の人たちに葬儀を手伝ってもらった場合は、簡単に分けられる個包装のお菓子が重宝します。

2.カタログギフト

何を贈るべきか迷うときは、カタログギフトを選ぶのも1つの方法です。予算に見合ったカタログを贈れるだけでなく、相手が好きな品物を選べるのが魅力。また、カタログはかさばらないので、贈る人・受け取る人双方の負担を抑えられます。

3.タオル

タオルは「悲しみを覆う(拭う)」といったことを表す品物です。また、毎日使用するタオルは消耗が激しいため、消え物の1種と捉えられます。派手な色・柄は避け、好みを問わず取り入れやすいシンプルなデザインや無地のタオルを選ぶのがおすすめです。

4.葬儀の供花や果物

地域の風習によっては、葬儀でもらった供花や果物などのお供え物をお礼の品として配ることがあります。親族だけでなく、参列した近所の人などにお礼の挨拶をして配るのが一般的です。

葬儀で心付けを渡すときは感謝の気持ちを込めて

お礼の思いを表すための心付けは、昔からの風習。近年は、社会情勢などの変化に伴い、心付けを受け取らない方針の葬儀社や火葬場が増えています。ただし、現在も心付けを贈る習わしが残る地域もあるため、全く不要と言い切れるものではありません。マナーや決まりごとを確認した上で、葬儀を手伝ってくれた人たちに「ありがとう」の気持ちを伝えてはいかがでしょうか。