高齢者の運転免許証の返納。返納特典と親に勧めるコツ

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高齢者の運転免許証の返納。返納特典と親に勧めるコツ
運転に不安を感じる高齢者ドライバーの免許証返納は、近年増加傾向にあります。その一方、日常の交通手段として車が手放せない高齢者がいるのも現状です。この記事では、免許証返納の意味や手続き方法だけでなく、親などの身近な高齢者に返納を促すコツなども紹介。家族で返納を考えるきっかけにしてください。

運転免許証を自ら返す免許証返納

近年、高齢者ドライバーによる交通事故への注目度が高まり、免許証返納の呼びかけも盛んにおこなわれるようになりました。まずは、返納の意味や現状を解説するので、身近な人と話し合うきっかけにしてください。

免許証返納の意味

免許証返納とは、有効期限が訪れる前の運転免許証を自ら不要とし、運転できる権利を全て取り消すことを指します。高齢者による自動車運転事故の増加に伴い、不慮の事故を防ぐために返納手続きの制度が設けられました。ただし、行政処分によって免許の取消または停止の決定が下った人や、取消・停止の処分基準に当てはまる人は利用できません。

免許返納年齢は70代前半が最多

免許証の自主返納は、増加傾向にあります。免許証を返納する年齢に規定はありませんが、70歳以上は免許を更新するときに高齢者向けの講習が必須となる他、次の更新までの期間が徐々に短縮されます。
令和3年3月の内閣府の調査によると、自主返納者の年齢で最も多いのは70代前半で、全体の34パーセントです。続いて、60代後半が25パーセント程度を占めます。約8割の人が75歳になる前に返納しているのが現状です。
また、住んでいる地域によって返納年齢に差が出ており、過疎地ほど返納時の年齢が上がる傾向があります。80歳以上の返納者は都市部で約8.7パーセント、地方都市で7.2パーセントですが、過疎が進む地域では約16.3パーセントに倍増します。

免許証返納の手続き

続いては、誰がどこで手続きするのか、何が必要なのかなど、具体的な返納の手続きについて説明します。滞りなく手続きを終えるための参考にしてください。

手続きできる場所

免許証返納に関する手続きができる場所は、以下の通りです。
  • 運転免許試験場
  • 免許センター
  • 住んでいる地域の管轄警察署
都道府県によって一部の免許センターでは対応できないところもあるため、住んでいる場所にある警察本部のWebサイトなどで事前に確認しておくと安心です。

手続きに必要なもの

免許証返納の手続きには、運転免許証が必要です。
■免許証返納の申請に必要なもの
  • 運転免許証
  • (手数料は基本無料です。)
代理申請も可能ですが、その際は申請できる人が限られる上、必要書類などが増えます。
また、免許証返納とともに、新たな身分証になる運転経歴証明書の発行も申請できます。運転経歴証明書は次章で記しているので、参考にしてください。
■運転経歴証明書の申請に必要なもの
  • 交付手数料(1,100円)※京都府1,120円など金額は要確認
  • 申請者の写真(3cm×2.4cm)※不要の場合もある
  • 申請者の身分証(住所、氏名、生年月日が確認できるもの)
  • 申請による運転免許の取消通知書(お持ちの方))
顔写真は、警察署で手続きをおこなう場合に用意してください。免許試験場や免許センターの一部では、その場で撮影できます。

手続き申請できる人

本人が窓口に赴き、返納を申請するのが基本ですが、代理による委任申請もできます。
代理人になれる人は自治体により異なりますが、二~三親等以内の同居親族、あるいは、本人が入所する介護施設の管理者などに限られることが多いです。また、代理人では免許証の一部返納はできず、全部返納となります。
原則、申請書類の本人以外の代筆は認められていません。本人が怪我などを負って書類を書くのが難しいときは、免許センターの自主返納窓口などに相談してください。
■免許証返納の委任申請で用意するもの
  • 免許証を返納する本人が書いた委任状兼確認書(承諾書)
  • 代理人の身分証明書(運転免許証、健康保険証、マイナンバーカードなど)
■運転経歴証明書の委任申請で用意するもの
  • 免許証を返納する本人が書いた委任状兼確認書
  • 手数料
  • 本人の申請用写真(不要の場合もある)

今後の暮らしに利用できる免許証返納のメリット

日常の移動手段として車を使っていた人は、免許証を返納した後の生活に不安を覚えるかもしれません。しかし、多くの自治体には交通機関の割引を始めとした支援があります。ここでは、今後の生活に役立つ運転免許証返納のメリットを紹介します。

身分証明書として運転経歴証明書の交付を受けられる

運転経歴証明書とは、手持ちの免許証をすべて返納した日から過去5年間の運転経歴を示すものです。免許証に記載された情報を明らかにするものであり、身分証明書類として公の場で使用できます。また、運転経歴証明書があれば、交通機関の割引を始めとした特典を受けられることもあります。
令和2年4月1日からは、「運転経歴証明書交付済シール」が導入されることになりました。マイナンバーと一緒に提示することで運転経歴証明書の本体を持ち合わせずとも同様の特典を受けられます。特典については、次に詳しく記載しています。

交通機関の割引を受けられる

交通手段を失うことを心配して、免許証を返納するか迷う人は少なくありません。多くの地域では、バスを始めとした公共交通機関の割引やタクシーチケットの発行などの支援があります。
こうした支援を利用すれば、車のための諸経費(保険料や燃料代など)よりリーズナブルに済む可能性も。ただし、交通機関の割引を受けるには運転経歴証明書が必要な場合もあります。

買い物やレジャーでの特典を受けられる

運転経歴証明書を所持していると、買い物やレジャーなどで以下のような特典を受けられます。
■特典の例
  • デパートなどでの配送料割引
  • メガネや補聴器、遺影撮影など老後の生活や死後に必要なものの割引
  • 美術館や飲食店での割引や無料サービス
  • 温泉など入館料の割引
  • 法律事務所の無料相談
特典のある店舗にはロゴマークが表示されているので、要チェック。なお特典は自治体によって異なるので、事前に確認するのがおすすめです。

高齢者の親に免許証返納を促すコツ

親など、身近な高齢者に免許証の返納を促したい人も多いのではないでしょうか。しかし、高齢を理由に返納を切り出しても、すんなり受け入れてくれるとは限りません。そこで、ここからは返納を促すコツについて紹介します。

説得するタイミングを見極める

免許証返納を考えるターニングポイントの目安は高齢者講習の始まる70~74歳です。身近な高齢者の年齢が70歳に近づいたら、その人が運転する様子を確認し、注意すべき症状があるか見定めるのがおすすめです。
70歳に達していなくても、以下の項目に当てはまる症状が見られた場合は、気を付けてください。
【運転中】
  • ウインカーを誤って出す、忘れる
  • カーブをすんなり曲がれない
  • 障害物や周りの車、歩いている人に注意を配れないことがある
  • 駐車の際、塀などに車体を擦るミスが増加している
【日常生活】
  • 視野が狭くなった
  • 以前より身体の動きや反応が鈍くなった
  • 物覚えが悪くなった

具体的な現状を伝える

年齢を重ねたことを理由に返納を促しても、相手の自尊心を傷つけ、喧嘩になる場合があります。相手に寄り添い、具体的な現状を交えながら話を進めることが大切です。例えば、高齢からくる視力の低下について話し合い「雨が降ったら運転はやめた方が安全」など、本人が納得する流れを作ってはいかがでしょうか。
また、煽り運転やもらい事故を理由にドライブレコーダーの設置を提案し、客観的な映像を見ながら返納の話を進めるのも効果的です。重要なのは、無理に説得しようとせず、心から相手に納得してもらえる方法を見つけること。じっくりと話し合うきっかけ作りを意識してください。

免許証返納によるメリットを伝える

免許証を返納する場合、その後の生活への不安や疑問が残ることがありますよね。家族で返納後の生活を話し合い、心配ごとを払拭しておくと安心です。交通機関の割引や車の維持費が不要になるなど、前述のメリットを伝え、返納を促すきっかけにしてください。
また、運転経歴証明書を必要としない高齢者特典もあります。例えば、買い物や通院などの移動に不安があるときは、交通機関における高齢者サービス・配送サービスの割引を利用する方法も。身分証がなくなる不安があるならマイナンバーカード発行の提案をするなど、本人の心配ごとに合わせて不安解消法を考えるのがおすすめです。
特典やサービスを利用するだけでなく、車がない生活を家族で想像し、ライフスタイルの見直しを検討することも重要です。どのような過ごし方なら車がなくても生活しやすいか、家族で話し合う時間を設けると良いのではないでしょうか。

専門家や信頼できる人に伝えてもらう

身内や家族の言うことに耳を貸さなくても、医師や専門家、信頼している人の説得、あるいは庇護欲が有効な場合があります。例えば、既に免許証を返納した友人から経験談を聞いたり、可愛がっている孫から長生きして欲しいとお願いされたりすることで、返納に踏み出すケースもあります。
全国の安全運転相談窓口では、年齢や持病などによって運転を続けることに不安のある人や家族からの相談を受けつけています。相談ダイヤルは、全国統一「#8080」です。電話を発信した地域を管轄する警察の安全相談窓口が対応します。認知機能を検査する地域病院の紹介や、返納に関する手続きの案内があるので、利用してみてください。

まず免許証返納について考えるきっかけを

メディアでも取り上げられることの多い、高齢者ドライバーの事故。身近な高齢者の運転に不安がある人もいるでしょう。まずは、さりげなくニュース記事などを目に触れるようにしたり、家族間で免許証返納の話題を出したりして、きっかけづくりを始めてはいかがでしょうか。無理強いではなく、自ら返納したいと思えるように、より良い関係を築くことが大切です。