【申告期限4ヶ月】準確定申告とは。必要書類や手続きを解説

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【申告期限4ヶ月】準確定申告とは。必要書類や手続きを解説
準確定申告とは、確定申告すべき人が亡くなった時に相続人が申告・納税をすることです。必要となる書類や申告期限は通常の確定申告と異なるため、注意が必要です。本記事では、準確定申告の意味や期限、必要な書類、手続きなどについて解説します。いざというときの参考にしてください。

遺族がするべき準確定申告とは

亡くなった人に代わり、相続人が申告と納税をおこなう準確定申告。ここでは、準確定申告の意味や申告期限について説明します。

相続人がする確定申告と納税

確定申告の必要がある人が、年の途中や年が明けてすぐなど生前の所得等を申告する前に亡くなった場合、納税が完了してない状態が続きます。そこで相続人が準確定申告の手続きをして、故人(被相続人)の代わりに納税します。どこの税務署でもいいわけではなく、故人が亡くなったときの住まいのある納税地で税金を納める必要があるのです。
ただし、故人が確定申告をする必要がなければ、相続人に準確定申告の義務は発生しません。準確定申告が必要となるのは、自営業やフリーランスで48万円以上収入がある人、2,000万円以上の給与収入のある人、建物や土地を売却した人、競馬の払戻金や懸賞の賞金品の金額が大きい人、副業などで給与以外の所得が年20万円を超える人、等々です。国税庁ホームページなどで、故人の状況を確認して申告が必要か判断してください。

期限は原則として4ヶ月

通常の確定申告は、毎年2月16日~3月15日に申告と納税をおこないます。2021年の確定申告では、新型コロナウイルスの感染防止対策のため、4月15日まで期間が延長されました。それに伴い準確定申告も2月2日~3月14日の間に期限が訪れるものに対し延長の措置が取られました。社会情勢により期間が変わることもあるので、事前に確認してください。
準確定申告は、相続人が相続の始まりを認知した日の次の日から4ヶ月以内に、相続人全員で申告とともに納税をする必要があります。例えば2020年11月30日に亡くなって、その日に相続の開始を知ったのであれば相続人は2021年3月30日までに申告と納税を済ませる必要があります。
納税義務がある場合に、相続人が申告を怠ったり、期限を過ぎたりすると、加算税や延滞税が生じる場合があるため、気を付けてください。また、故人が税金を多く納めている時には、還付金としてお金が戻ってきます。

準確定申告に必要な書類

準確定申告の期限内に申告と納税を済ませるため、早めに準備をすることが大切です。ここでは、申告に必要な書類について解説します。

確定申告書

準確定申告でも、通常の確定申告と同様の申告書を使用し、タイトルの確定申告と書かれている箇所に「準」を加えます。申告書にはA・Bの2タイプがあります。申告書Aは、故人が給与を得ていたり、年金を受け取ったりしていた場合に使用。申告書Bは、事業や不動産による所得を故人が得ていた場合に提出します。
事業所得を申告する場合、内容によっては収支内訳書や青色申告の決算書が必要です。確定申告書は国税庁の公式サイトからダウンロードでき、記載例も同サイト内で確認できます。

故人の源泉徴収票など所得を証明するもの

故人の所得を証明するため、源泉徴収票などの書類が必要です。企業に勤めていた場合は企業に、年金を得ていた場合は加入先から源泉徴収票を発行してもらいます。
加入した年金の機構・基金によって、源泉徴収票の発行時期は変わります。機構・基金に連絡し、書類が届くタイミングを聞いておくと安心です。準確定申告の申告期限である4ヶ月に間に合うよう、速やかに受給者の死亡を伝え年金受給の停止手続きをしてください。
故人が個人事業をおこなっていたり、不動産による家賃収入を得ていたりした場合は、預金通帳や請求書・領収書といった事業に関する書類が必要です。

故人の控除証明書

亡くなった日までに故人が支払った以下の保険料は、所得控除の対象です。
  • 社会保険料(小規模企業共済含む)
  • 地震保険料
  • 生命保険料
控除を受けるには、加入していた保険会社が出す控除証明書を用意します。証明書を発行するタイミングは会社ごとに変わるので、保険会社へ早めの連絡をおすすめします。

所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表

相続人が2人以上いる場合は、確定申告書付表を準備します。該当する人の署名と捺印、相続の割合を付表に記載してください。また、すべての相続人のマイナンバーと、本人であることを証明する書類を添付します。
本人確認書類では、マイナンバーの番号と身元を確認できる書類を用意します。マイナンバーの番号を確認する書類は、番号が記入された住民票の写しや、通知カードが該当。身元の確認には、パスポートや運転免許証などの書類が使えます。なお、マイナンバーカードがあるなら、番号と身元の証明を同時におこなえるため、ほかに本人確認書類を用意する必要はありません。

故人の医療費の領収書

医療費控除を受ける際には、医療費の領収書が必要です。原則、故人の死亡後に支払った医療費は控除対象になりません。ただし、故人とともに生計を立てていた相続人が払った医療費は、故人の生前・死後にかかわらず、相続人の医療費控除の際には対象となります。

委任状

所得税を過払いした場合、還付申告ができます。代表の相続人がまとめて還付金を受給するには、代表以外の相続人による委任状が必須。委任状のフォーマットは各税務署に用意されていますので、準確定申告書を提出する税務署のものを使用します。

準確定申告の手続きの流れ

ここでは、準確定申告の手続きの流れを説明します。必ず期限内に手続きを終えるための参考にしてください。

1.相続人への通知・代表者の決定

複数の相続人がいるとき、2種類の準確定申告方法を選択できます。1つ目は、前述のすべての相続人が署名した付表と委任状を税務署に出す方法。2つ目は、それぞれの相続人が別々に申告書を作り、税務署に出す方法です。
前者の場合、代表となる相続人を定めます。代表となった人は、税務署の問い合わせや、送られてきた書類の受け取りなどをおこなうのが一般的です。後者の場合、ほかの相続人に作成した申告書の内容を知らせます。相続人によって異なる記載がないように、各々の申告書を確認することが大切です。

2.必要書類の入手

前述した必要書類を準備します。申告のための書類は、国税庁の公式サイトからのダウンロードや、税務署の窓口で入手できます。ダウンロードの際は、申告する年に適した書類形式であることを確かめてください。

3.準確定申告の書類作成

必要書類が揃ったら、準確定申告書の作成に入ります。相続人が1人の場合や数人の相続人がそれぞれ作成する場合の記載方法は次の通りです。第1表は、氏名のところに故人の名前を「被相続人〇〇〇〇」と記入し自分の氏名も併せて「相続人△△△△」と記入します。第1表と第2表ともに、確定申告書の表題に「準」を書き加え、準確定申告書とします。
複数の相続人が存在し、委任状と付表を出すときは、それぞれ住所と氏名、マイナンバーの番号を書き記し、押印します。

4.準確定申告書など必要書類を提出

作成した準確定申告書を提出するには、税務署に郵送や持参、電子申告(e-Tax)といった方法があります。郵送の場合は、申告書と申告書をコピーした控え、切手を貼った返送用の封筒を同封します。この時、ゆうパックなどは使えません。後日、税務署の受領印が押された控えが送られてくるので、大切に保管してください。
準確定申告書における電子申告は、2020年分以後のものから可能になりました。電子申告できるのは、代表に定められた相続人のみです。各相続人が個別に申告をするときは書面での提出が原則です。また、代表以外の相続人が印鑑を押した準確定申告の確認書と委任状をPDF化し、e-Taxで提出します。

知っておきたい準確定申告3つのポイント

最後に、申告書提出日と納税日の関係、申告・納税が遅れたときに課せられる税など押さえておきたい準確定申告の3つの注意点を解説します。

① 申告書提出より先に納税しても良い

申告期限を過ぎなければ、申告書に先立って納税しても問題はありません。それぞれの相続人が税務署で納付書を手に入れ、必要事項を記載し、準備しておきます。すべての相続人が期限までに税金を納めるよう、注意が必要です。

② 準確定申告による還付金にも相続税がかかる

準確定申告による還付金は、相続財産に入ります。遺産分割に関する話し合いや、遺言で相続の配分が定められている場合は、その割合に従って分配します。具体的な配分が定められていない場合は、法律に定められた相続分に基づきます。なお、還付金は未収の財産とみなされ、相続税が課されるのが原則です。

③ 申告期限を過ぎた場合は延滞税や加算税がかかる

申告期限を過ぎたら、もともと納める税金のほかに、延滞税を払う必要があります。遅延の程度によっては加算税の支払いも生じます。
税金を納めない理由が悪質と認められた場合には、罰金以外に刑事罰を科される可能性があるので注意してください。
<課税される税金>
  • 延滞税:納付期限内に納税しなかったとき
  • 無申告加算税:正当な理由なしで期限内に申告しなかったとき
  • 過少申告加算税:期限内に出した申告書の記載額が足りなかったとき
  • 重加算税:課税に該当する財産を故意に隠蔽したとき

準確定申告は期限を守って手続きしよう

準確定申告は、相続を経験したことのない人にはなじみのない制度かもしれません。ですが、申告期限は4ヶ月以内と短く、申請しそびれると還付金が戻らなかったり延滞税などのペナルティが生じたりすることもあります。葬儀前後の慌ただしいさなかでは確定申告のことまで気が回らなくなることも考えられます。準確定申告について初めて知ったという方は、対象になりうるか事前に確認しておくと安心です。