お供えする線香の選び方|かけ紙の書き方やマナー【基礎知識】

お葬式のマナー・基礎知識
お供えする線香の選び方|かけ紙の書き方やマナー【基礎知識】

この記事はこんな方におすすめです

お供えする線香の選び方を知りたい
お供えする線香の渡し方やマナーを知りたい
仏壇やお墓などにお供えする線香。訃報を知ったタイミングや初盆など、弔意を表すために線香を贈るシーンは多々あります。故人やご遺族に気持ちを伝える贈答用線香の選び方や渡し方、マナーを紹介します。ご遺族の負担にならないよう、基本をおさえた上で贈ることが大切です。

線香をお供えする意味

お線香をお供えするのには、故人のお食事として、故人と心を通い合わせるため、その場や自分の身を清めるためなどいくつかの意味があります。また、その意味は四十九日法要の前後でも変わります。まずは線香をお供えする3つの意味を確認してください。

線香の香りが仏様(故人)の食べ物となるため

線香の香りは故人の食べ物となると考えられています。由来は4~5世紀ごろに著された『倶舎論(くしゃろん)』にある「生前よいことをした故人にはよい香りが食物となる」という記述からです。
一部の宗旨では四十九日は故人が極楽浄土へ旅立つまでの期間となりますが、この期間には線香を絶やさない風習があります。それは死後、故人が香りを食べるため、食べ物を欠かさず、あの世に向かえるようにするためと言われています。

故人と心を通い合わせるため

線香は故人と心を通わせるためにお供えするとの説もあります。仏教では、線香の煙があの世とこの世の架け橋となり、煙を通じて仏様と心を通わせる意味があると言われています。亡くなった故人を偲び、線香をあげて手を合わせることで「あの世」と「この世」をつなぎ、故人と心を通わせられるという説です。

その場や自分の身を清めるため

線香をあげるのには、その場やお供えする人自身の身を清める意味も込められています。線香によって、その場や自身が清らかな香りに包まれ、故人に挨拶をする前に俗世で汚れた心や体を一掃できるとの言い伝えです。自分自身を清めた上で、仏壇、お墓、寺などの空間に身を置く意味があるとされています。

どんなときに線香を贈る?

線香には自宅用と贈答用の2種類があります。贈答用線香とは贈答用の線香のことで、かけ紙をつけて贈ります。贈答用の線香は、訃報の知らせを聞いたときや初盆お見舞い時などのタイミングで遺族に贈るのが一般的。葬儀の少人数化が進むなか、弔意を伝える方法として線香を贈ることが増えています。どんなときに線香を贈るのか、具体的に紹介します。

訃報の知らせが届いたとき

最も一般的なのは訃報の知らせを聞いたときのお悔やみ(お供え・供物)として贈る場合です。葬儀や法事など、四十九日までの間に贈るのが主流。遠方に住んでいるなど、なんらかの事情で通夜や葬儀に参列できないときなどにも贈られます。

初盆お見舞いのとき

初盆のお供えものとして線香を贈る場合もあります。初盆とは、故人が亡くなってから1年目のお盆のこと。故人を偲び、供養するためにおこなわれます。初盆の時期は地域によって異なりますが、お盆の入りの1〜2週間ほど前に贈るのが一般的です。

喪中はがきが届いたとき

線香は喪中はがきのお返しとして贈る場合もあります。近年は少人数で葬儀を済ませることも増えており、喪中はがきで初めて訃報を知る人も多いようです。香典として現金を郵送するのは、香典返しの風習もあるため、かえってご家族の負担になる場合も。そんなときに、仏壇やお墓に供えられる線香やろうそくを贈ります。葬儀が終わっていても、贈答用線香を贈れば偲びの気持ちを表すことができます。

お供えする線香の選び方

お供え用の線香を贈る際は、香りや煙の量、価格、外箱などを考慮し、相手方に適したものを選ぶのがおすすめです。ご遺族の事情と自身の弔意、どちらも反映できるものを選ぶとよりふさわしいと言えます。ここでは、お供えする線香の選び方を紹介します。

香りで選ぶ

線香の香りは、寺院をイメージさせるような落ち着いた香りからフローラル系の香りまで幅広くあります。例えば香木(こうぼく)として、白檀(びゃくだん)、沈香(じんこう)、伽羅(きゃら)を使用したものがあります。その他、植物の花などから抽出したオイルを使用したフローラル系のもの、漢方系の粉末を混ぜたものなどがあります。
香りは使ったときの印象を左右する大事な要素であるため、相手方の好みに合わせて選びます。故人が好きだった香りで選ぶという方法もおすすめです。

煙の量で選ぶ

線香には煙がつきものですが、なかには煙が出にくいタイプの線香もあります。ご遺族が集合住宅にお住まいなどの場合は、周囲への配慮を考えて匂い移りがしにくい煙が少ない線香が喜ばれるかもしれません。

一般的には漢方系の線香は煙が出やすく、香水や香油系・活性炭系が含まれる線香は煙が少ないと言われております。

価格・外箱で選ぶ

贈答用の線香は幅広い価格帯で販売されているため、予算内で選ぶ方法もあります。比較的安価なものは2,000円前後から、高価なものは1万円を超えるものまでさまざま。希少価値の高い香料を使用していたり、箱のデザイン性が高かったりするものは価格も上がる傾向にあります。
また、贈答用線香は贈り物なので見た目も大事です。ご家族がもらっても困らないお線香を選んでください。線香の外箱には紙箱、桐箱、塗箱などの種類があり、それぞれ見た目や印象が異なります。
線香の購入場所としては、仏壇仏具専門店や通販などが考えられます。香りや外箱などを実際に手に取って選びたい場合やどこで買うのが良いかわからない場合は、仏壇仏具専門店に行って実際に確かめたり相談したりするのがおすすめです。

お供えする線香のマナー|渡し方・かけ紙の書き方・その他

お供え用の線香はご自宅へ持参、もしくは郵送で渡します。持参と郵送では注意点が異なるため、事前に確認しておいてください。渡す際のマナーやかけ紙の書き方についても解説します。

線香の渡し方

自宅に行って仏壇へお参りし仏前に供えさせてもらう方法と、郵便で送る方法の2つがあります。自宅へ持参する方がより丁寧ですが、お返しで気を遣わせることのないように郵送を選ぶ人も少なくありません。持参して手渡しする場合は、自宅に到着してすぐにではなく室内に通されてから渡すのが通常です。ご家族に挨拶を済ませ、品物に汚れや傷などがないかを確認してから渡す、もしくは仏壇にお供えします。
郵送の場合は贈答用の線香を購入し、自分で贈る、もしくは仏壇仏具専門店から発送するのが一般的です。

かけ紙の書き方

贈答用の線香は、包装してかけ紙をします。通夜や葬儀で渡す場合、かけ紙は水引が白黒の結び切りのものを選ぶのが通常です。お盆や法事で渡す場合は、関西など地域によっては白黄を選ぶこともあります。
表書きは、かけ紙の上部中央に先方の宗教宗旨・命日などに合わせた形で記載します。四十九日より前に渡す場合は薄墨で書くのがマナーです。もし亡くなった日がわからないなら、「御供」を選んで書けば間違いありません。
かけ紙は内側にかける場合・外側にかける場合がありますが、どちらでもマナー違反ではありません。一般的な傾向としては、葬儀に参列しなかった場合は内側にかけ、葬儀で直接贈る場合は外側にかけることが多いです。

その他のマナー

線香を持参して渡す際は、事前にご家族にアポイントを取り、風呂敷や手提げ袋に入れて持って行くのがマナーです。仏前にお供えさせていただく場合も考慮し、数珠も一緒に持って行くこと。仏壇または仮祭壇へお供えするときは、以下のように宗派によって線香の本数や置き方が異なることも知っておくと安心です。
宗派 お供えの仕方
天台宗・真言宗 3本を香炉に立てる
浄土宗・曹洞宗・臨済宗・日蓮宗 1本を香炉に立てる
浄土真宗本願寺派・真宗大谷派 1本を適当な長さに折り香炉に寝かせる 
特に葬儀後、ご家族は手続きや対応に追われて忙しい場合がほとんどです。忙しそうであれば、線香は「ご仏前へお供えください」と手渡すに留めたり、玄関で渡したりする配慮をしてください。
また、郵送する場合は、お悔やみ状でご家族にメッセージを同封するとより気持ちが伝わります。
線香以外のおそなえ物については下記の記事で紹介しています。

弔意の気持ちを添えてお供え用の線香を贈ろう

故人のお食事として、または故人と心を通わせるため、仏前の場や自分を清めるためにお供えする線香。葬儀後や初盆などに線香を贈るのは、弔意を表す一般的な方法として知られています。ご自宅に持参する場合はご家族の状況を考慮する、郵送で贈る際はメッセージを添えて気持ちを伝えることが大切です。

監修:1級葬祭ディレクター 瀬戸隆史

家族葬のファミーユにて新入社員にお葬式のマナー、業界知識などを伝える葬祭基礎研修の講師を務める。
【保有資格】1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定制度)/サービス介助士、訪問介護員2級養成研修課程修了