通夜振る舞いのマナー

お葬式のマナー・基礎知識
通夜振る舞いのマナー
通夜振る舞いとはお通夜のあとの会食のことです。僧侶や弔問客を別室に招き、お酒や料理を出してもてなします。参列経験のある人には、通夜式のあとのごちそうというイメージかもしれません。今回は主催の喪家、招かれる参列者、それぞれの目線でご紹介します。

通夜振る舞いの意味とは? 最近の傾向もチェック!

通夜振る舞いは、単に食事をすることではありません。通夜に訪れた僧侶や弔問客に感謝の意を伝え、皆で思い出を語るなどして故人を偲ぶための場です。通夜振る舞いの意味と最近の傾向についてご紹介します。

通夜振る舞いの歴史

かつてのお通夜は故人を夜通し見守るもので、通夜振る舞いの宴も区切られることなく続きました。しかし、近年では参加する僧侶や弔問客の都合を考えて1~2時間ほどで切り上げるようになっています。自宅葬が少なくなり、葬儀場などでおこなわれるようになったのも変化の理由のひとつでしょう。

通夜振る舞いの食事の内容

食事の内容も変わってきています。忌明けまで肉や魚を避ける仏式(=仏教のお葬式)では、精進料理がメインでした。今ではそこにはあまりこだわらずに、鯛や海老などの祝膳の食材を避ける程度となっています。
具体的には、大勢で簡単につまめるサンドイッチやお寿司、オードブルなどの大皿料理が一般的です。これらは葬儀社や仕出し屋で手配してくれます。料金は一人3,000円を目安にすると良いでしょう。
加えて、お清めの意味で、ビールや日本酒などのお酒も用意します。ただし、近年では道路交通法の改定により飲酒運転は厳罰化されています。アルコールを飲まない弔問者も多いので、ノンアルコール飲料なども用意しておくと良いでしょう。

精進落としとの違い

精進落としは、四十九日法要後の食事のことです。現在では、初七日法要の後の会食を指すことが一般化していますが、通夜振る舞いとは違います。精進落としの場合は、参列者の人数が把握できるため、お膳で個別に料理を振る舞うことが多いです。料金の相場は、一人あたり平均4~5,000円と言われています。

喪主側が知っておきたい通夜振る舞いの流れとポイント

通夜を仕切る喪家(喪主)に向けた通夜振る舞いの流れとポイントについてご説明します。

通夜参列者へのお誘い

通夜振る舞いの席へは、喪主から通夜式終了の挨拶でお誘いします。挨拶は、お通夜への参列と生前のご厚情に対するお礼から始まります。「別室にてささやかな酒肴をご用意いたしました。よろしければ故人の思い出話とともにお召し上がりください」と通夜振る舞いに誘います。

僧侶へのお誘い

通夜式の後すぐに酒席へ移動する場合もありますが、喪主や世話役は僧侶と葬儀の打ち合わせをするのが一般的です。その際、僧侶を通夜振る舞いへとお誘いし、上座へ案内します。よく葬儀で見かける光景ですが、住職を上座へ、遺族親族を下座にすると、住職が一人で食事をすることになってしまいがちです。親族の中で接待係を決めて僧侶の隣に座らせることや、町会の長に座っていただくことを検討しましょう。僧侶が辞退したら「御膳料」として5,000~10,000円程度を包み、お車代とともにお渡しします。

通夜振る舞いの流れ

通夜振る舞いの席では、関係者は末席に座り、僧侶や参列者に挨拶回りをします。すべての参列者に飲み物が行き届いたら、献杯をして会食を始めます。献杯とは、宴会の乾杯に代わるもので、故人を偲んだ会食の始まる合図です。献杯の音頭は、喪主や通夜振る舞いの仕切り役、または、献杯の挨拶を依頼された人が取ります。乾杯とは違うので、盃を高く上げたり、近くの方とグラスを打ち合わせたりといった行為は避けましょう。会食を進めつつ、頃合いを見て終了の挨拶をし、閉会となります。

通夜振る舞いの手配数

通夜振る舞いの飲食は、葬儀社などに依頼することが多いです。参列者数は前もって把握できれば良いですが、通夜に来る人数は分からなくても大丈夫です。不安なときは、葬儀社に相談に乗ってもらいます。確定している人数分か、それに若干プラスした大皿料理になることでしょう。多少の増減があっても葬儀費用に大きく影響することはありません。

仕切り役を依頼しておく

通夜当日、喪主は弔問客の出迎えやお見送り、翌日の葬儀の段取り等々で忙しいことが予想されます。そのため、できれば遺族や親族の一人に通夜振る舞いの仕切り役を依頼しておきましょう。通夜振る舞いの仕切り役を依頼されたら、参列者一人ひとりに感謝を伝え、お酌や挨拶回りをします。

通夜振る舞いでの喪主の悩み4つ

通夜振る舞いによくある喪主(仕切り役)の悩みを4つに分けて見ていきます。

悩み①席順

祭壇に近い席が上座です。僧侶に参加していただける場合、上座は僧侶にすすめます。僧侶が参加しない場合は、年長者や葬儀の委員長に上座へ座っていただきましょう。喪主や遺族は末席に座るのが一般的。参列者は上座以外であれば、好きなところに座れます。

悩み②お酌のタイミング

お酌は、弔問客に挨拶回りをする際におこなうのがベストです。通夜振る舞いに参加してくれた方一人ひとりに挨拶を兼ねたお酌をして回ります。ただし、宴会ではないので一巡に留めておきます。それ以降は各々で注げるよう、お酒や飲み物の準備をしておきます。参加者へのお酌が済んだら、会食を始める合図となる「献杯」に移ります。

悩み③食事の取り分けとすすめ時

食事に箸をつけるタイミングは献杯後です。通夜振る舞いの食事は大皿料理が多いので、座席によっては取りにくい場合があります。喪主や仕切り役が率先して食事を取り分けて、参加者にすすめるようにします。

悩み④茶菓子の用意

通夜振る舞いの場には、茶菓子も用意しておきましょう。茶菓子は、参加者の方に気軽に取っていただけるよう、個包装されたものがおすすめです。ご年配の方には、半生菓子や抹茶系のお菓子が人気です。小さなお子様がいる場合は、クッキーやチョコレートなどを用意しておきましょう。故人を偲ぶ場なので、故人が好きだったお菓子を用意するのも良いです。

通夜振る舞いでの挨拶

通夜振る舞いは始まりと終わりに簡単な挨拶をします。30分程度で帰られる方が多いので、挨拶も手短にするのがポイントです。

献杯の挨拶

献杯の音頭を取る前に、一言挨拶を添えましょう。通夜振る舞いの献杯挨拶では、通夜参列へのお礼を伝えることが重要です。

(例文)
「本日はお忙しい中、通夜に参列していただきありがとうございました。皆様方にお越しいただき、〇〇(故人)もさぞ喜んでいることと思います。ささやかではございますが、お食事を用意いたしました。お時間の許す限り、〇〇との思い出話などを語っていただければと存じます。それでは、グラスを手にしていただき献杯のご唱和をお願いいたします。「献杯」。ありがとうございました」。

通夜振る舞い閉会の挨拶

閉会の挨拶では、通夜振る舞い参加のお礼と、翌日の葬儀・告別式の開始時間を伝えることが大切です。

(例文)
「皆様、本日は〇〇の通夜にご弔問いただき、誠にありがとうございました。皆様の温かなお心遣いに〇〇もさぞ喜んでいることでしょう。夜も更けて参りましたので、本日はこの辺で終了とさせていただきたく存じます。なお、明日の葬儀・告別式は〇〇(会場名)で〇〇時におこないます。何卒よろしくお願い申し上げます」。

通夜振る舞いに参加するときのマナー

通夜振る舞いに参加するときのマナーやNGな言動についてご紹介します。

通夜振る舞いのマナー

通夜振る舞いは、宗教儀礼ではありませんが、故人とそのご家族を想っていただくものです。お誘いを受けたら、できるだけ参加するようにし、一口でもよいので箸をつけるのがマナーです。故人の遺族や親しい間柄でない場合は、30分ほどで退席しても構いません。途中で退席する場合は、「お先に失礼します」と声をかけてから失礼します。

辞退する場合

辞退する場合は、遺族や通夜振る舞いの仕切り役に、辞退することを告げます。事情を伝えておくとより丁寧です。重ねて参加のお願いをされたり、少しでも時間が取れたりする場合は、献杯後、一口だけでも箸をつけます。頃合いを見て退席するようにしましょう。

忌み言葉はNG

遺族や親族に声をかける際は、くれぐれも忌み言葉を使わないように気をつけましょう。具体的には「死亡」「ご存命中」などのストレートな表現や、「重ね重ね」「度々」などの重ね言葉などです。臨終のときの様子や、どこで亡くなったか、なぜ亡くなったのかなどを詳しく聞くのも失礼にあたります。

場をわきまえた行動をとる

また、通夜振る舞いでは、遺族が故人の生い立ちを語ったり、職場や趣味の仲間が思い出話をしたりして過ごします。商談や遊びの予定など、故人に関係のない話は控えましょう。そしてお酒はほどほどに、故人を偲ぶ場としてわきまえることが大切です。

通夜振る舞いは故人との別れの宴

喪主になるといろいろな準備がありますが、通夜振る舞いもそのひとつです。適切な段取りをして参列者をもてなしましょう。
参列者側は声をかけられたらできるだけ参加し、一口はいただきたいものです。また、故人を偲ぶ話で盛り上がったとしても、宴会とは違います。節度ある振る舞いが求められます。
故人と縁ある人たちでおこなう別れの宴は、心に残るものになることは間違いありません。いい旅立ちになるようにみんなで努めたいですね。