家紋の意味と調べ方。日本に多い苗字と代表的な家紋も紹介

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家紋の意味と調べ方。日本に多い苗字と代表的な家紋も紹介

この記事はこんな方におすすめです

家紋の意味を知りたい
家紋の調べ方を知りたい
家紋は家を表す紋章であり、それぞれの家で代々伝えられてきました。近年、伝統行事や冠婚葬祭が簡素化する中、自分の家紋を知らない人も増えてきました。自分の人生を振り返り、終活を進めていく上で家紋を知りたいと思う人もいるでしょう。この記事では家紋の意味や調べ方、さらに日本に多い苗字の代表的な家紋を紹介します。

家紋の意味と由来

家紋は日本に古くからあるもので、自分の家系やルーツを知ることができます。まず家紋の意味と由来を紹介します。

家紋とはそれぞれの家に伝わるシンボルマーク

家紋とは代々伝わってきた家の紋章のことで、家系や家柄、地位などを表すために用いられてきた図柄です。苗字が同じでも、家系や出身地などルーツによって家紋が異なる場合があります。逆に違う苗字でも、同じ家紋の場合も。かつては家紋付きの着物や羽織、小物なども多く見られました。家紋は苗字と合わせ、自分の家系やルーツを実感できるシンボルなのです。

縄文土器などに用いられていた文様文化が由来?

家紋の原型は、縄文時代の土器などに用いられていた文様(もんよう)と見る研究者がいますが、はっきりとは分かっていません。日本では、縄文時代より作るものにヘビや縄などの柄をつける「文様文化」がありました。縄文土器や弥生土器に見られる文様は数百を超すと言われ、多種多様にわたります。
平安時代末期頃から、公家が牛車などに自分の家のものだと一目で分かるように、家独自の文様を付けるようになり、これも家紋のルーツとされています。公家の家紋は、着用していた着物の柄や、好んでいた花などをモチーフにしたデザインもあり、優美です。

武家が戦で用いるようになり発展

家紋と言えば、武家のイメージが定着しています。鎌倉時代には戦で味方と敵を見分けるための目印として、のぼり旗や、陣幕、兜や鎧に家紋を入れるようになったとされ、武家の間で広がっていったそうです。もともと武家の家紋は目印として使い始められましたが、次第に軍の士気を高めてまとめる役割も。江戸時代になってから、庶民も家紋を使用するようになり、一般的にも広がったとされています。

自分の家紋の調べ方

続いては、家紋の調べ方を説明します。

墓や仏壇を調べる

家紋のことは親族に聞くのが一番簡単な方法ですが、分からない場合もあります。その場合は、墓参りに行った際に、墓石に彫ってある家紋を確認してみてください。また仏壇にも家紋が入っている場合があります。
家紋は微妙な文様の違いがあるので、墓を見て確認できたら写真に撮り、種類の名前を調べておくのがおすすめです。大抵の種類はインターネットで調べられますし、家紋を扱った辞典なども市販されています。

紋付(もんつき)の着物を見る

近年は減っていますが、かつては紋付き袴が正装とされ、成人式や結婚式で着用されていました。年齢がある程度上の世代なら、紋付の着物を持っている人も多いため、家にないか確認してみると良いかもしれません。また、先祖の写真に紋付の着物を着た人物が写っていれば、自分の家紋が分かる可能性も。ただし、既婚女性の紋付着物の場合、実家の家紋が入っているかもしれません。

本家に聞く

本家に聞けば、家紋について分かるかもしれません。もし本家が分からない場合は、明治時代の戸籍を取得し、記載された本籍地を調べ、その土地の同姓を探す方法があります。古くからある家の場合、縁戚にあたることも考えられるため、同じ家紋の可能性があるからです。
電話帳や住宅地図などで調べて連絡をとってみる、もしくは墓地で同姓のお墓に彫ってある家紋を見て回るといった方法を試してみてください。ただし、電話帳については2021年10月の発行をもって配布を終了しています。

喪服にまつわる家紋

着物の喪服は正装ですが、紋の種類や数によって格が変わります。こちらでは、喪服に入れる家紋について解説します。

正式な喪服の家紋の入れ方|日向紋

家紋の入れ方や数には種類があります。なかでも日向紋(ひなたもん)で五つ紋が入ったものが最も格式が高く、正式な喪服とされています。日向紋とは、家紋全体を白抜きにしたものです。
その他、紋の縁だけを線で表した陰紋(かげもん)、陰紋よりも縁の線を太く表した中陰紋(ちゅうかげもん)があります。陰紋は裏紋とも呼ばれ、略礼装に用います。中陰紋は、日向紋と陰紋を組み合わせたものです。陰紋と中陰紋は諸説あるが、正式な紋ではないため略礼装として着用することが多いです。「しゃれ紋」とも呼ばれ、葬儀の正装としてはあまり利用されません。
日向紋(左)と陰紋(右)

正式な喪服の家紋の数|五つ紋

五つ紋とは、背中(背紋)、両袖(袖紋)、両胸(抱き紋)の合計5ヶ所に家紋を入れることです。着物に入れる家紋の数は、五つ紋、三つ紋(背紋・袖紋)、一つ紋(背紋)があり、数が多いほど格式が高いとされています。そのため、葬儀の場では五つ紋の喪服が第一正装です。法事に用いる色喪服の場合、家紋の正式な入れ方や数は決まっていません。
また紋の場所にも意味が込められており、背紋はご先祖様、抱き紋は両親、袖紋は兄弟姉妹・親戚から守られていることを表しています。

女系でひきつがれる喪服に入れる家紋|女紋

女紋(おんなもん)とは、女系で代々引き継がれていく家紋のことで、関西を中心に西日本の地域で残っている風習です。女性が喪服を仕立てる場合、独身~結婚に際しては実家の紋、結婚後は嫁ぎ先の家紋を入れるのが一般的です。しかし、女紋のように地域の風習によって異なる場合もあります。そのため、喪服に紋を入れる際は、実家や嫁ぎ先に相談するのがおすすめです。

日本に多い苗字ベスト5と代表的な家紋

最後に日本に多い苗字ベスト5が用いている代表的な家紋をそれぞれ解説します。同姓であってもルーツによって家紋が異なる場合もあるため、自分の家紋、本家や分家、親戚の家紋なども調べてみると面白いかもしれません。

佐藤|源氏車など

日本で一番多い苗字である佐藤は、特に東日本で多く見られ、藤原家一族の末裔とされています。家紋には公家の乗り物だった牛車をモチーフにした、「源氏車(げんじぐるま)」が用いられることが多いようです。

鈴木|稲紋など

関東に多い苗字ですが、和歌山県の穂積氏流鈴木氏が始まりとされています。源義経の家臣に鈴木姓の者がいたため、源平合戦の頃に東海から東北にかけて広がったそうです。
家紋はルーツである穂積氏にちなんだ「稲紋(いねもん)」が多く用いられています。なぜ稲が関係しているかというと、積んだ稲穂のことを穂積や鈴木(ススキ)と言っていたそうです。ちなみに稲紋には、抱き稲、右廻り一つ稲の丸など複数の紋があります。その他、神具としても使用される鈴をモチーフにした「鈴紋」を用いる家もあります。

高橋|笠紋など

全国各地にある「たかはし」という地名から生まれた苗字です。高い橋には、天と地をつなぐ架け橋という意味が込められています。高橋は東北に多い苗字ですが、全国のあちらこちらに分布しています。これは全国に高橋という地名が多いためです。
家紋には「笠紋(かさもん)」が多く用いられています。高橋の由来である天と地をつなぐ架け橋とは、言い換えれば竹を立てたハシゴや柱のことです。漢字では「竹」と「立」を組み合わせて笠になることから、家紋に用いられるようになったとされています。

田中|片喰など

田中も地名から生まれた苗字の一つです。日本は古くから農耕が盛んだったため、田中の地名は全国各地にありました。全国のあちらこちらに分布していますが、西日本に多い傾向があります。
家紋は藤原氏がルーツの場合、「片喰(かたばみ)」「巴紋(ともえもん)」「蔦紋(つたもん)」を、源氏がルーツの場合は「桔梗紋(ききょうもん)」「釘抜紋(くぎぬきもん)」を用いていることが多いようです。

伊藤|藤紋など

発祥地とされる三重県では一番多い苗字で、藤原家の子孫が名乗ったのが始まりとされています。家紋は藤原家がルーツであることから「藤紋(ふじもん)」、なかでも「下がり藤」が多く用いられています。

家の歴史を子孫へつなげる家紋を調べよう

家紋は家を表すシンボルであり、家紋を知ることで家の歴史を知ることにつながります。ひいては自分のルーツ探しにもなるでしょう。これまでの人生を振り返り、今後の生活を充実させるうえでも終活と合わせて家紋を調べてみませんか。