自宅葬の流れと注意すべきこと。住み慣れた我が家から、故人を送り出すために

わたしのお葬式
自宅葬の流れと注意すべきこと。住み慣れた我が家から、故人を送り出すために
「葬儀は少人数でひっそりとやりたい」「家で済ませたい」といった願いを叶えてくれるのが自宅葬です。新型コロナウイルスの影響もあり、自宅での葬儀を検討する人が増えてきました。本記事では他の形式にはないメリット、自宅葬に向けての流れ、注意点などをひと通り紹介します。

自宅葬にする3つのメリット

故人の家で通夜や葬儀をおこなう自宅葬は、一般葬などとは違ったメリットがあります。こちらでは、自宅葬のメリットを3つご紹介します。

1.故人の遺志を尊重できる

自宅葬は家族や親族を始めとした、故人と深い関係だった人のみが参列します。会社の人など、故人とそこまでプライベートで仲良くしていなかった人も参列することが多い一般葬とは違います。

あらゆる人々を招く場合は作法や地域のルールに気を配る必要がありますが、身内以外が参列することの少ない自宅での家族葬は、比較的決まりごとに囚われなくて済むのがメリットです。また、新型コロナウイルスなどの感染病がはやっているときは、自宅葬を選択すれば無理に式場に人を集める必要がなくなります。

入院生活が長かった人や介護施設で過ごしていた人ほど、「元気になったらまた自宅で過ごしたい」と考えていたのではないでしょうか。自宅葬は、慣れ親しんだ自宅から故人を送り出せるところが最大の魅力、と言えるかもしれません。

2.家族の心的ストレス軽減

多くの人が参加する一般葬では、遺族は参列者に対して気を遣う必要があります。身内が亡くなった悲しみを抱きながら、多くの参列者を気遣うことは精神的につらいものです。肩の力を抜きやすい自宅で葬儀が執りおこなわれる自宅葬なら、気を張らず独自のペースで進めやすいので、残された家族の心的ストレスを軽減できます。

また、「住み慣れた自宅に帰りたい」と故人が考えていたのと同様に、家族も「自宅に帰ってきてもらい、自宅から送り出してあげたい」という想いを抱いているのではないでしょうか。自宅葬なら、故人の遺志だけでなく、家族の想いも尊重できます。

3.経済的にもやさしい

自宅葬は会場を借りる費用が必要ないため、式場代の節約になります。また、参列者が限られている自宅葬は、会食費用を始めとした飲食費や接待費を抑えられる可能性があります。悲しみに襲われている状況でも、経済的には少しだけ救われるかもしれません。

自宅葬の”ご臨終〜葬儀”までの流れ

自宅葬は他の一般的な葬儀と違って自宅で執りおこなわれるので、事前に確認しておくべきポイントがいくつかあります。人が亡くなるシチュエーションはさまざまですが、ここでは病院で亡くなり、葬儀社を通して自宅葬を進めていく場合を例に見てみましょう。

葬儀社との打ち合わせの前に確認すべきこと

「自宅葬がしたい」と思ったら、葬儀社に相談します。故人が亡くなる前か後かはどちらでもかまいません。ただし、打ち合わせに必要な内容は確認しておいた方がスムーズです。確認内容の詳細は、以下の通りです。

[自宅葬の打ち合わせ前に確認すべきこと]
・自宅環境の確認(棺、祭壇が置けるか否か)
・地域住民の理解はあるか
・葬儀の規模の確認
・僧侶を呼ぶのか
・自宅もしくは周辺に駐車場スペースを確保できるのか
・自宅前に霊柩車(れいきゅうしゃ)が停車できるスペースがあるのか

自宅葬を執りおこなう場合は、初めの打ち合わせが特に重要です。棺が入らないようなスペースではおこなえません。また、車の出入りや騒音のこともあるので地域住民の理解も必要です。

その上で、葬儀社は参列者や弔問客の数を基に、祭壇の設置を始めとした自宅葬の準備をおこないます。そのため、葬儀に参列する親族の人数や、想定できる弔問客の人数などをあらかじめ確認しておくことが大切です。

駐車スペースも重要です。参列者や弔問客が自動車を使用しなくとも、霊柩車は必ず自宅前に停まります。そのため、霊柩車が停められるスペースの有無だけでなく、火葬場に向かう出棺時にできるだけ速やかに乗棺できる状況か否か、も確認しておく必要があります。

「死亡時刻の確認」〜「葬式の手配」までの流れ

まず、病院で亡くなった時間を医師に見定めてもらい、死亡診断書を受け取ります。その後、葬儀社へ連絡してご遺体を自宅まで運んでもらいます。事前に葬儀について相談していなかったら、連絡時に「自宅葬を執りおこないたい」と希望を伝えると、搬送から自宅葬までの流れがよりスムーズに進むでしょう。

自宅にご遺体が到着したら、北枕の状態で寝かせます。その後、葬儀社がドライアイスを設置し、枕飾りを準備します。枕飾りとは、寝かされたご遺体の枕元に設置する台のこと。地域や宗派によっても異なりますが、お線香やロウソク、花や枕団子などを台に飾ります。

これらの準備が完了したら、葬式(通夜・葬儀・火葬など)に必要なもの、逆に不要なものなどを葬儀社と話し合います。日程や喪主、棺や返礼品なども決定したら葬式の手配は完了です。

通夜当日のスタンダードな流れ

まずは、ご遺体を棺に納めます。納棺を終えたら、祭壇を始めとする儀式で使用するものを葬儀社が自宅内に設置します。

その後は僧侶による読経がおこなわれ、参列者は焼香をします。これらを終えたら、参列者へ通夜振る舞いのようなもてなしをするのがスタンダードな流れです。

葬儀当日のスタンダードな流れ

葬儀は僧侶による読経と、参列者の焼香から始まります。読経と焼香が終わって僧侶が退席した後は、故人との最後のお別れの時間です。故人に別れを告げたら霊柩車に棺を乗せ、火葬場に向かいます。このとき、参列者は各自の自動車に乗り、霊柩車のうしろに続いて火葬場へ向かいます。

自宅に設置していた祭壇などは、式の終了後に葬儀社が片付けるので心配いりません。ただし、火葬中に葬儀社が祭壇などを片付ける場合は立会人(留守番)が必要になります。

火葬場に霊柩車が到着したら、約1時間~1時間半前後の時間をかけてご遺体を火葬します。火葬後は、故人のお骨を骨壺に納める収骨をします。その後、会食により参列者をもてなし、持ち帰ってきた骨壷を後飾り段へ安置するまでが、葬儀当日のスタンダードな流れです。

自宅葬は自由だからこその注意点がある

喪主や遺族のペース、システムで進めやすい自宅葬。しかし、おこなう前に把握しておくべきことがあります。こちらでは特に重要な3つの注意点を紹介します。

1.儀式の環境づくりが容易ではない

自宅葬は故人を寝かせたり祭壇を設置したりするので、ある程度のスペースが必要です。襖や仕切りをずらして隣の部屋と二間続きにできる部屋や、リビングなどが接している広いスペースがあるのが理想。部屋に十分な広さがないと、自宅葬をしてもらえない場合もあるので注意が必要です。

マンションなどの集合住宅であるならエレベーターの設計上、棺を運べないことも。運べる場合でも、エレベーターに棺を乗せても問題ないか、大家さんや管理人に必ず確認してください。また、そもそも自宅葬を禁じているマンションなども存在するため、トラブルを避けるためにも確認は必須です。

僧侶を始めとした宗教者を招く場合は、控室の確保も必要です。自宅に到着してから着替える人もいるため、鏡やハンガー、座布団(僧侶が高齢の場合は椅子)なども準備します。

夏場や冬場に自宅葬を執りおこなう場合は、冷暖房を使用します。自宅葬の最中に電力トラブルが発生しないためにも、電力会社へ連絡をしてアンペア変更をした方が安心です。

2.近隣住人への配慮も必要となる

葬儀に近隣住民が参列しない場合でも、自宅葬を執りおこなう旨をあらかじめ伝えておかないと、住民トラブルに発展することも。声がけをしないまま葬儀を執りおこなうと、お経の音を聞いた近隣住民からクレームが来る恐れもあります。

遺体を運んだり参列者が来たりで、騒がしくなるかもしれないと伝えておけば、近隣住民とのトラブルに発展しづらいはず。故人を自宅から気持ちよく送り出すためにも、葬儀を始める前には必ず近隣住民に知らせましょう。

また、参列者や僧侶の自動車を停める場所を確保できなかった場合は、路上駐車を避けるためにも借りられる駐車場などを探しておきましょう。自宅葬を執りおこなう旨を事前に近隣住民に伝えておけば、駐車場を借りられたり、協力してもらえたりするかもしれません。

3.参列者へのもてなしも忘れてはいけない

自宅葬であっても、参列者への感謝を込めた振る舞いはするべきです。準備するものは、一つ一つ包装されているお茶菓子や、故人が好んでいた食事の他、お酒やお茶といった飲み物などです。

また、もてなしは飲食物だけではありません。親族の中に自宅を初めて訪れる人がいる場合は、最寄り駅などから案内をして、道に迷わないよう気を配ることも大切です。前項で述べたように、車や自転車の駐車スペースの確保ももてなす側が忘れてはいけないことです。

自宅葬をスムーズにできるよう、入念な事前準備を

自宅葬は故人の「我が家に帰りたい」という想いと、遺族の「我が家から送り出したい」という両方の想いを叶えられる葬儀です。しかし、相応の準備と根回しが必要になります。自宅葬を視野に入れている人は、当日にゆっくりと落ち着いて式が進められるように事前確認をしておきましょう。