香典返しをする時期と相場は?贈る品物や挨拶状のマナーも

法事・お墓
香典返しをする時期と相場は?贈る品物や挨拶状のマナーも

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葬儀の喪主を務める
香典返しの正しいマナーが知りたい
香典返しは、葬儀を無事に終えたことを報告するお礼の品です。受け取った金額の半額を返すマナーがあり、贈る品物は何でも良いわけではありません。本記事では香典返しを贈る時期と相場、品物の選び方をはじめ、手渡し・郵送・宅配をする際のマナー、香典返しを辞退された場合の対応方法を紹介します。

【基本】香典返しとは?贈る時期と相場香典返しとは

お通夜や葬儀・告別式などで香典を贈ってくれた人へ、香典返しを渡すのは喪主に求められるマナーの一つです。なぜ香典返しを贈るのか、その意味と品物の相場、会社の人から香典をもらった際の対応方法などを紹介します。

香典返しの意味

香典返しとは、お通夜や葬儀・告別式に参列してくれた人から手渡しされた香典や、郵送で受け取った香典へのお返しです。“香典返し”という言葉には「お返しの品物そのもの」と、「返礼の品を贈る行為」という2つの意味があります。葬儀が終わったことのお知らせと先方へのお礼を兼ねて、適切な品物をお礼状とともに贈ります。
なお、香典返しは、贈る地域や時期によって違う言葉で表現されることも。京都や大阪などの関西方面では「満中陰志(まんちゅういんし)」と呼ばれることもあります。
満中陰志にあたる地域の人は、下記の記事もご確認ください。

香典返しを贈る時期

香典返しは、故人が亡くなってから25~50日後を目安に贈ります。贈る時期は、宗教に合わせて多少前後します。
<宗教別:香典返しを贈る時期の目安>
  • 仏教:故人が亡くなってから49日後、四十九日の法要が終わった頃
  • 神道:命日から50日目の「50日祭」後
  • キリスト教(カトリック):30日目の「追悼ミサ」後
  • キリスト教(プロテスタント):1か月目の「召天記念日」後
香典返しは葬儀を終えてから早めに手配をします。なお、香典返しは「不祝儀(ぶしゅうぎ)」とみなされる点に注意が必要です。これによって、香典返しは年始やお祝い事に重ならないようにすべきという考え方を持つ人もいます。
また、近年はお通夜や葬儀・告別式の当日に香典返しを渡す“当日返し”を選択する人も増えています。手渡しすることで、配送料の負担や配送の手間を省けるのが利点です。

香典返しの相場

香典返しでは、受け取った香典の半額程度を贈る「半返し」が妥当と言われます。10,000円の香典に対して、5,000円程度の品物をお返しするというものです。
ただ、故人と親密な人の中には、数万~数十万円もの高額な香典を渡してくれる人もいるのではないでしょうか。そのほか、入院時にお見舞いの品を贈られたり、香典と同時にお花(供花)をもらったりすることもあるでしょう。
このような場合には、半返しではお互いに負担が大きくなります。高額な香典に対しては半返しせず、1/3~1/4程度の品物をお返しすれば問題ありません。ただし、先方には丁寧にお礼を述べ、感謝の気持ちを伝えてください。

会社から香典をもらった場合の対応方法

お通夜や葬儀・告別式では、故人の勤め先や取引先から香典をもらうことも。そのような場合は、香典の名義で香典返しの必要性が変わります。
<香典の名義が会社名だった場合>
従業員であった故人への香典として「慶弔見舞金」が支払われている場合があります。「慶弔見舞金」とは、従業員またはその家族に慶事や弔事があった際に、会社から支給されるお金のことです。
福利厚生の一環として「慶弔見舞金制度」を導入している企業もあるので、勤め先から香典を受け取った場合は、その会社の制度を確認してみてください。制度が導入されていれば香典返しは不要と考えられます。
<香典の名義が個人名だった場合>
会社の上司や同僚、部下など、香典の名義が個人名だった場合は、友人やほかの参列者と同じように香典返しを贈ります。
「〇〇一同」といった連名で贈られ、「誰が・どの程度の金額を出してくれたのか」分からない場合や取引先からいただいたときには、個包装になった菓子折りを贈る方法があります。

【選び方】香典返しの品物のマナー

お礼の気持ちを込めて贈る香典返しは喜ばれるもの、そしてセンスの良い品物を選びたいところ。ただし、選び方にもマナーがあるので、きちんと確認しておくことが大切です。ここでは香典返しに適した品物と、タブーとされる品物の例を紹介します。

香典返しに適した品物

香典返しに適した具体的な品物は次の通りです。
<香典返しに適した品物例>
  • 消え物(食品、洗剤など)
  • タオル
  • カタログギフト
【消え物】
古くからの習慣で、香典返しには「消え物」が良いとされます。消え物とは食品や飲み物、調味料、洗剤、入浴剤など、使うとなくなる物のこと。香典返しは不祝儀に対して贈る品物のため、残らない物を選ぶのがマナーとされます。
香典返しとしてよく選ばれる食品は、海苔、羊羹、おせんべい、コーヒー、お茶などです。食品を贈る際は消費期限に気を付け、期限まで1~2ヶ月程度の余裕がある物を選びます。
【タオル】
消耗品であるタオルも香典返しの定番の一つです。香典返しとして贈るタオルには、「涙を拭く」「悲しみを拭い去る」という意味が込められています。
【カタログギフト】
近年は、受け取った側が好きな品物を選べるカタログギフトを贈る人が増えています。カタログギフトは、香典返しの品物としてマナー違反にあたらないので心配はいりません。
カタログの金額はいろいろと設定されているため、受け取った香典の金額に見合うものを贈ります。

香典返しで避けた方が良い品

香典返しを贈る上ではマナーや禁忌があり、品物選びには注意が必要です。
<避けた方が良い品>
  • 肉や魚(特に生肉、生魚)
  • 祝い事に使う食材(干しエビ、昆布、鰹節)
  • 金券・商品券
まず避けたいのが、「四つ足生臭物」と呼ばれる獣肉や魚介類などです。仏教では四十九日までは肉や魚を食べることをタブーとする宗派が多く、好ましく思われません。また、干しエビや昆布、鰹節など、慶事に使われる食材も贈らないようにします。
そのほか、金額がはっきりと分かる金券や商品券などは人によって失礼だと感じるため、タブーではないとはいえ避けた方が無難です。もし金券や商品券を贈る場合は、弔事用の掛け紙が付いたものを選ぶ、お礼状と一緒に贈る、ほかの品物とセットで贈るなどの気配りをしてください。

香典返しに熨斗(のし)は不要

香典返しには掛け紙を使用するため、熨斗は不要です。熨斗とは、水引の上に配置された「熨斗鮑(のしあわび)」のこと。慶事の際に添える縁起物ですので、不祝儀である香典返しに熨斗を付けるのは不適切と言えます。
香典返しに使用する掛け紙は、熨斗がなく水引だけが印刷された用紙です。赤ではなく黒の水引で、弔事であることを表します。
なお、掛け紙の表書きは「志」とされることが多いです。ただし、関西方面の「満中陰志」のように、地域や贈る時期によって言葉が変わることもあります。

【手渡し】香典返しの贈り方とマナー

当日返しをする場合は、通常の香典返しとは異なる準備が必要です。ここでは当日返しの方法と、香典返しを手渡しする際に伝える言葉を紹介します。

当日返しの方法

本来、香典返しは受け取った香典の半額程度の品物を用意しますが、当日返しでは金額をその場で確認できないため、すべての人に同じ品物を渡します。
ただし、高額な香典を贈られたことが判明した場合は、先方に改めて香典返しを贈ることになるでしょう。特に急ぐ必要はありませんが、通常の香典返しと同様に忌明けには贈るようにします。

香典返しを渡すときに伝える言葉

香典返しを手渡しする際は、次の内容を簡単に伝えます。
<渡すときに伝える内容>
  • 参列と香典に対するお礼
  • 葬儀や法要が無事に終わった報告
  • 香典返しを持参したこと
  • これからに向けた挨拶

【郵送・宅配】香典返しの贈り方とマナー

元来、香典返しは手渡しが基本でしたが、現在では郵送・宅配でもマナー違反にあたりません。直接会うのが難しい、または遠方に住んでいる人に香典返しを贈るときは、郵送・宅配しても構いません。ここでは、香典返しを郵送・宅配するときに忘れてはいけないマナーとして、挨拶状と梱包について紹介します。

香典返しを郵送・宅配する際は挨拶状を添える

香典返しを郵送する場合は挨拶状を添えて、葬儀や法要を無事に終えたことと、ご厚意への感謝を伝えます。挨拶状を送る際は、次のマナーを守ります。
<挨拶状のマナー>
  • 季語の挨拶、頭語・結語を使わない(または両方とも入れる)
  • 句読点を使わない
句読点は「文章が途切れる=葬儀や法事が滞る」と考えられます。読み手に失礼とも言われるので、挨拶状では避けるのが一般的です。
挨拶状の例文については下記の記事で詳しく紹介しています。

梱包の仕方に気を付ける

香典返しは郵送・宅配する際も掛け紙を付けます。しかし、掛け紙に送り状を直接貼るのはマナー違反なので注意が必要です。香典返しを郵送する際の梱包方法は主に2つあります。
<郵送する際の梱包方法>
  1. 品物に直接掛け紙を付け、包装紙で包んでから送り状を貼る
  2. 包装紙の上に掛け紙をかけ、紙袋に入れてから送り状を貼る
※紙袋は必ず新しいものを用意する
なお、配送トラブルを防ぐために、送り状の品名は「香典返し」のような曖昧な書き方ではなく、「菓子」「タオル」「カタログ」などと具体的に書きます。

【状況別】香典返しを辞退されたときの対応方法

葬儀の受付で香典を受け取ったときや郵送されてきた際に「香典返しは辞退させていただきます」などと伝えられることもあります。そのようなときでもお礼状を送る、またはお菓子を贈るなどの配慮は必要です。ここでは、香典返しができない状況を大きく2つのケースに分けて対応方法を紹介します。

厚意から香典返しは不要と言われた場合

香典返しを辞退された場合、品物は贈らずにお礼状を四十九日後に送るのが好ましいです。親しい間柄であれば、電話でお礼を伝えても構いません。お中元やお歳暮、お誕生日や記念日など、別の機会に贈り物をするのも素敵ですね。
なお、受付で香典返しの辞退の申し出があった場合は、誰が辞退されたのか分からなくなってしまうことも。そうならないために「香典帳に記録しておく」「香典袋に直接記載しておく」などの対応を受付の担当者に依頼しておくことをおすすめします。

職業、仕事、仲間の都合で香典返しは不要と言われた場合

仕事場でギフトのやりとりが禁止されているなど、職業上の理由で受け取りを拒否する人もいます。この場合も香典返しは差し控えてください。代わりに、感謝の気持ちと無事に葬儀・法要を終えた旨をお礼状で報告します。
また、サークルや職場の連名で少額ずつ包んだ香典を贈られた場合も、お返しは不要とされることが多いです。このようなときは、小分けにできるお菓子を配ったり、折を見てランチやお茶などに誘ったりするのも良さそうですね。

香典返しは適切な時期にマナーを守った贈り方で

香典返しは贈る時期や贈り方、品物などを適切に選ぶことが大切です。その上で、相手の気持ちに寄り添ったものを贈り、お礼の気持ちを表します。
適切な品物を選ぶ余裕がない、発送などに時間が取れないという人は、葬儀社に一任する方法もあります。対応内容は葬儀社によるので、相場や最近のトレンドなどについても相談してみてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。