故人の思いを表す墓碑銘とは?その意味と費用を解説

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故人の思いを表す墓碑銘とは?その意味と費用を解説
墓碑銘(ぼひめい)とは、墓石に刻んだ故人の名字や言葉のこと。広い意味では、名前や亡くなった日を含め、墓石に書かれるすべての文字を指します。日本だけでなく、世界中で見られる習慣です。本記事では、墓碑銘の意味や選ばれる言葉、宗教ごとの違い、墓碑銘の相場などを詳しく紹介します。

墓碑銘の意味

日本でいう墓碑銘(ぼひめい)は、「先祖代々の墓」や「〇〇家の墓」などお墓に眠る故人を表す文言のこと。この他、故人の好きだった言葉など、お墓に刻んだ短文のことも指します。「やすらかに」や「絆」などの墓碑銘が彫ってあるのを見たことがある人もいるでしょう。まずは、墓碑銘の意味と語源を紹介します。

墓碑銘とは墓碑に彫られた文字

お墓と聞いてイメージする正面に彫られた文字だけでなく、亡くなった人の経歴や、業績など墓石に彫った短い文章のことを、墓碑銘と呼びます。広義では、名前や戒名、亡くなった日付など、墓石に掘られたすべての文字を指すことも。埋葬後、墓石などに文章を入れるのは、国や民族、信仰する宗教に関係なく昔から続く習慣です。

墓碑銘は英語でエピタフ

墓碑銘の英語表記は、「Epitaph」(エピタフ)です。ギリシャ語で「お墓の上部に」を表す、エピタピオスが言葉の起源とされています。
世界で最も古いと言われる墓碑銘は、古代エジプト時代のもの。広く取り入れられるようになったのは、古代ギリシャ時代からです。長い歴史を経て、現在は世界中で墓碑銘を目にします。

墓碑銘と墓碑、墓石、墓誌、墓標の違い

墓碑と墓石は、ほとんど同義と考えて良いでしょう。その他、墓誌・墓標も、似たような言葉として挙げられます。しかし、細かく見るとそれぞれ小さな違いがあるので、言葉の意味を混合しないために基本的な知識を身に付けておくと安心。ここでは、各言葉の違いについて紹介します。

墓碑は名前が刻まれた石塔

埋葬されている人の戒名や名前、亡くなった日付、縁の深い言葉などが彫られた参拝対象の石塔を、墓碑と呼びます。ほとんどの場合、墓碑と墓石を合わせてお墓としますが、偉人などを埋葬した大きなお墓は墓碑と呼ばれることが多いです。

墓石は墓地に建てられる石塔や石版

参拝の対象になるか否かを問わず、墓地に建ったすべての石の塔・板を表すのが墓石です。土葬が一般的におこなわれていた時代、猪や野良犬が遺体を荒らすのは日常茶飯事でした。そこで、簡単には動かせない重い石を設置して遺体を掘り起こせないようにしたのが、墓石の起源と言われています。

墓誌は故人名や没年月日などが書かれた石板

故人の名前や戒名、亡くなった日付などを書き、墓石の隣に設置する石碑のことを墓誌と呼びます。信仰する宗派がない場合は、名前と亡くなった日付のみを入れるのが通常です。1人以上を祀る場合は、亡くなった順に名前や日付などを彫ります。お墓に埋葬された人を記録するのが墓誌の主な目的なので、参拝の対象ではありません。

墓標は遺体や遺骨がある場所の目印

故人が埋葬された場所を示すものを、墓標と表します。木の板などに戒名をはじめとした文字を入れ、お墓を建てるまでの目印として建てた仮のお墓を墓標と呼ぶことも。
また、土葬がおこなわれた時代は、木の棒に亡くなった人の名前などを記入し、故人が葬られた場所であることを表す墓標にしていたと言われています。

墓碑銘に選ばれる言葉とは

家庭の事情やお墓の種類など、状況によって選ぶ文字や内容が変わる墓碑銘。ここでは、墓碑銘に選ばれる言葉や意味について紹介します。

どの家のお墓なのかを示す文字

墓碑銘として刻まれるのは基本的に「◯◯家先祖代々之墓」など、どの家のお墓なのかを表す文字です。しかし最近では、お墓を受け継ぐ人がいない場合もあるため「氏(うじ)」ではない言葉も選ばれるようになってきています。
お墓を受け継ぐ人がいない場合は、墓石の表面を削り、墓碑銘を変えることも。時世によって柔軟に墓碑銘を変更するのは、時代の流れを考慮に入れた1つの選択肢と言えます。

個人の名前や戒名

受け継ぐ人がいないことを前提とした1人用のお墓、夫婦2人のお墓などの場合、墓碑銘に個人の名前や戒名を選ぶことがあります。夫婦のお墓の場合、向かって右に男性、左に女性の名前を並べるのが一般的。お墓に入る予定の人が存命中に墓碑銘を掘る場合は、彫刻した名前を赤くしておきます。

故人を表す言葉

亡くなった人を表現するものであれば、どの言葉を選んでも差し支えはありません。例としては、亡くなった人とゆかりの深い言葉や詩、亡くなった人に向けた家族の言葉、「南無阿弥陀仏」を始めとしたお経の一部などが挙げられます。
特に人気があるのは、「心」「慈愛」「ありがとう」「一期一会」「やすらかに」など。どういった言葉が墓碑銘にふさわしいかじっくり考えて、決めてください。

墓碑銘を刻むときの注意点

墓石に入れる文字だけでなく、書体や彫刻のやり方、色なども決める必要があります。石材を取り扱う業者によって、できる書体や彫刻のやり方は違うので、一覧表をもらうのがおすすめ。彫刻の色は、地域の慣習や選んだ墓石との相性を考慮に入れ、業者と相談するとスムーズです。
また、墓石に彫った文字は、間違えた場合にやり直しができません。業者にすべて任せるのではなく、自分できちんと校正することが大切です。

【宗教別】墓碑銘に彫る文字

基本的に、墓石に入れる文字に厳格な制限はありません。ただし宗教によっては、使わない文字や決まりが定められている場合があるため注意が必要です。ここでは、宗教ごとの墓碑銘について紹介します。

仏式で彫る文字

仏教における墓碑銘は、宗派ごとに用いる文字が変わります。浄土宗は「南無阿弥陀仏」が一般的ですが、「最後には、極楽浄土でどんな人にでも会える」ことを意味する「倶会一処(くえいっしょ)」を選ぶ人も少なくありません。日蓮宗は、「南無妙法蓮華経」を選ぶ人が多いです。
また、供養や吉日などの言葉や梵字(ぼんじ)を使ってはいけない、といった特別なルールもあるため、菩提寺に相談しておくと安心です。

神道で彫る文字

神道におけるお墓は、「神様の眠る場所」を表す奥津城(おくつき)と呼ばれます。そのため、墓石には奥津城と入れることがほとんどです。戒名はなく、名前のうしろに諡(おくりな)を使うのも神道の特徴。諡は、男性の場合は大人命(うしのみこと)、女性には刀自命(とじのみこと)と付けます。

キリスト教で彫る文字

キリスト教には、墓石に入れる文字に関する定めはありません。仏教において、お墓は亡くなった人を供養する場所であるという考えが基本ですが、キリスト教では亡くなった人を思い出し、感謝する記念碑として捉えられています。
一般的には、墓石に十字架を描き、その下に洗礼名や俗名、亡くなった日付、聖書の一説などを入れることが多いです。

無宗教で彫る文字

無宗教の人は、仏教における戒名や神道の諡などはないため、俗名を入れます。お墓のデザインや墓碑銘まで、自分の好みで決められるのが特徴です。ただし歌や小説の一文を無断で取り入れるのは、著作権の侵害にあたる場合があり、許可が必要です。

墓碑銘にかかる費用相場は2〜5万円

ここでは、墓石に文字を入れる際の費用について紹介します。大体の予算を把握し、墓碑銘を取り入れる際の参考にしてください。
墓石に文字を入れる際にかかる費用は、2~5万円が相場です。ただし、地域によって価格に違いが出るので、注意が必要。石材店が少ない地域では競争相手がいないため、言い値になることがあります。また、現地で文字を入れる場合と、持ち帰って作業をおこなう場合があり、持ち帰るときは運搬費を念頭に置いて費用を考えることが大切です。
墓碑の価格相場は、5~20万円です。国産の石を使うか、厚みはどのくらいかなど、条件によって価格に違いが出ます。

故人らしいお墓を作るために、墓碑銘を考えよう

墓碑銘は、名前や亡くなった日付の他に、経歴や好きだった言葉など、墓石に刻まれた故人のことです。墓碑銘を決める際には、地域や宗教の決まりを確認し、業者としっかり相談することが大切。どのような墓碑銘なら故人の思いを表せるか、じっくりと考えて言葉を選んでくださいね。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。