「一生ひとりで愉快に」おかずクラブ・オカリナさん【インタビュー後編】~日々摘花 第60回~

コラム
「一生ひとりで愉快に」おかずクラブ・オカリナさん【インタビュー後編】~日々摘花 第60回~
看護師から芸人に転身した異色の経歴を持つお笑い芸人・オカリナさん(40歳)。2009年にゆいPさんと「おかずクラブ」を結成、少女漫画をパロディにしたコントと、ボケとツッコミが明確に分かれていない独特な芸風が大ウケし、瞬く間にお茶の間の人気者に。YouTube「おかずクラブちゃんねる」は登録数12.4万人を超え、今もっとも活躍している女性芸人のひとりです。
後編では、看護師時代の死別体験を通して生まれたオカリナさんの人生観について迫ります。

2度も友人と険悪に…。一生ひとりで暮らすと決意

――YouTube「おかずクラブチャンネル」は、美容やダイエット、恋愛などをテーマに、お二人が本心をさらけ出すトークが面白いと好評を博しています。相方ゆいPさんとの仲の良さもうかがえて、心が温まります。

オカリナさん:ゆいPとはプライベートで東京ディズニーシーや男性アイドルグループ「NEWS」のライブにも行きます。私は友だちが少ないので、すごく貴重な存在です。

――誰とでも仲良くなれそうなイメージがあったので、ご友人が少ないとは意外です。

オカリナさん:子どもの頃から、場の空気を読んだり、人の気持ちを推し量ったりすることが苦手だったんです。些細なことで周囲の人をイラつかせてしまうので、できるだけ距離を置くようにしていて、親友と呼べる友人はほとんどいませんでした。あと、高校時代の寮生活と、社会人になってルームシェアを経験して、他人と暮らすことも向いていないと思いましたね。

――なぜそう思われたのですか?

オカリナさん:それぞれ一緒に暮らしていた友人と、険悪になったからです。

高校の寮で一緒だった子とは、いわゆる“親友”と呼べるほど仲良くなったんです。あるとき彼女が足を怪我したので同室ではなかったんですけど、身の回りのサポートを四六時中していたら、一緒にいすぎて私がつらくなっちゃって、2週間経った頃に「私、もうムリ!」ってなってしまって。最終的に仲直りしましたが、今でもあのときは本当にごめんなさいって思っています
オカリナさん:ルームシェアをしていた友人とは看護師時代の寮が一緒で、同室ではなかったけれど仲が良かったんです。芸人になってからしばらくして、ルームシェアしない? と誘われたのですが、高校時代のことがあったので、「一緒に住むのは無理だと思う」と一度断りました。でも、「寮で大丈夫だったから平気だよ」と言われてそのまま一緒に住むことに

最初は楽しく過ごしていたのですが、2年過ぎたあたりで「私、ひょっとして嫌われているのかな?」と思い始めて……。住んでいたのがメゾネットタイプのマンションだったんですけど、私が帰宅すると無言で2階にある自分の部屋に行っちゃうんですよ。家庭内離婚ってこんな感じなのかな? って思いながら、結局4年ほど暮らしましたが、自分を嫌う人がいる家に帰るのはしんどかったですね。

ルームシェア中に、ロンドンブーツ1号2号の田村淳さんがテレビ番組のロケで来てくれて、それがきっかけで一応仲直りはできたんです。私を嫌いになった理由を尋ねたら、本人もわからないって(笑)。どうやら日々の小さな積み重ねが原因だったようです。

2回もうまくいかなかったので、一生ひとりで暮らすと決めました。

――一生ですか?

オカリナさん:はい、一生。今いる数少ない友だちがこれ以上減ると困るので(笑)。だから、楽しく、愉快に、好きなことにお金を使って、ひとりで暮らすことが目標です。

『鬼滅の刃』の鬼のように消えるのが理想

――看護師時代に多くの患者さんを見送られてきましたが、オカリナさんは「死」というものをどう捉えていますか。

オカリナさん:自分でもよくわからないんですけど、死を悲しいものとして捉えていないような気がしています。祖母が亡くなったときは、この世からいなくなってしまったという驚きが悲しみよりも勝っていて、全然泣けませんでしたし。でも、漫画の登場人物が死ぬと泣くんですよ。ひどいときは嗚咽しちゃうくらい。それは感情移入できる心理描写があるからだと思います。看護師時代に一度だけ、患者さんが亡くなって号泣した話をしましたけど(前編はこちら)、命が果てるまでの過程を見ているという点は共通しているのかな、と。

今は両親も妹も弟も離れて暮らしていますし、徐々に弱っていく姿を見ることなく亡くなったとしたら泣かない気がするんですけど、そもそも私より先に死なないでほしいんですよ(笑)。

――自分が先に逝きたいと。

オカリナさん:そうですね。できれば、霧が突然晴れるように、私も跡形もなくこの世からシュッと消えたいです。漫画『鬼滅の刃』で鬼がシュッと消えるみたいに。私は結婚していませんし、妹も弟も結婚していないので、お墓を守るのも大変だろうなって思って。でも、両親がそういうふうに急に消えてしまったら、自分は間違いなく半狂乱になりますけどね(笑)。

自分は跡形もなく消え去りたいし、主役になるのが恥ずかしいから葬儀もいらないんですけど、両親と妹と弟を見送ることになったら、きちんと葬儀はしてあげたいし、お墓にも入れてあげたい。だから、自分はどうやって死んでいくか……これが最近の悩みです。

あと、シュッと消えたくても気がかりなのが、パソコンの検索履歴やSNSなど、自分に関する情報をどのように消すかということ。すべての情報も一瞬で消せたらいいんですけど。
――インターネット上の情報はその人が亡くなったあとも残りますよね。

オカリナさん:自分が死んでいるのに、情報があちらこちらに残っているというのが、なんか気持ち悪くて。AIがもっと進化して、亡くなった人の情報をすべて消し去ってくれたらいいのにと思います。できれば、パソコン、スマホの端末の情報も消してほしい。

『科捜研の女』(テレビ朝日系列)というドラマが大好きでよく見るんですけど、川に捨てたパソコンを復元したり、証拠品を燃やしても、その燃えカスの一部から物質を抽出して、犯人逮捕につなげたりするんですよ。ドラマとして見るぶんには面白いけど、自分が消し去ったものを復元されたら、たまったもんじゃないと、見ながらいつも思っています。だから、科捜研に負けないぐらい、AIにはこれからもっと頑張ってもらいたいですね。

具合が悪くなっても入院はしない

オカリナさん跡形もなく消えたいこと、情報をすべて消し去りたいこと、それともうひとつ、望んでいるというか決めていることがあるんです。それは、どんなに具合が悪くても入院しないということ

――なぜですか?

オカリナさん:入院すると、本人が退院したいと望んでも、先生の許可が下りないと退院できないんですよ。退院させて何かあった場合、病院がその責任を取らなきゃいけないから。自分の身体なのに病院のものになってしまう感じがして、それがすごくつらいだろうなって。

ある患者さんが、もう治る見込みはないから家に帰りたいと言ったんです。でも、その方はご家族と疎遠で、退院してもひとり暮らしになるので、病院から許可が下りなくて。一緒に住んでいる人がいれば、薬を飲む時間と回数を管理できますし、異変があればすぐ病院に連れていけるので許可が下りることもあるんですよ。残念ながら、その患者さんは退院できる条件が揃わなかった。結局、一度も家に帰ることなく、そのまま病院で亡くなりました
そういう患者さんを何人も見てきたので、私は入院しないと決めているんですけど、症状があるのに放置し続けて、病院で診てもらったときはすでに手遅れだった人もいたので、お勧めはしません。

何を選択すれば正解なのかはわからないですけど、最期をどう迎えたいか、どう生きたいかを考えることが大事なんじゃないかと思います。

――オカリナさんにはまだ先の話かもしれませんが、最期を迎えるために準備していることがあれば教えてください。

オカリナさん:私は入院したくないし手術もしたくないので、病気にならないためにも今年もダイエットをしようと思っています。私のダイエットと言えばファスティング(プチ断食)ですが、運動でも始めようかな、と。できるだけ健康な身体をキープしておきたいです。

あとは、長年大ファンの漫画『僕のヒーローアカデミア』のグッズを断捨離すること。すでに生活エリアを侵食してきているのでまずい状態なんですけど、全部大事なので捨てられなくて。このまま集め続けていくと、歳をとったときにヒロアカグッズに埋もれて死んでしまうかもしれません。あ、でも……、それはそれで幸せなのかも(笑)。
――最後に、読者に言葉のプレゼントをお願いします。

オカリナさん「辛い時でもごはんは食べて」という言葉を贈りたいです。辛いことや悲しいことがあっても、私の場合はごはんを食べると元気が出るんです。看護師時代に“身体が資本”ということを何度も実感しているので、食事は欠かさないほうがいいと考えています。もしいま食欲がない人がいたら、少量でもいいのでごはんを食べてみてください。きっと少しは元気が出るはずですから。

~EPISODE:追憶の旅路~

人生でもう一度訪れたい場所はありますか?
地元・宮崎県西都市にある高塚山(たかつこやま)。標高が300メートルほどで、気軽に登ることができるので、子どもの頃は家族5人でしょっちゅう遊びに行っていました。何がそんなに楽しかったのか、具体的なことは覚えていないのですが、ただただ“楽しかった”という鮮烈な感情は残っています。
高塚山を思い出すたびに、両親に守られながら幸せに過ごしていた日々が蘇ってきて、幸福感に満たされるんですよ。人生を終える前にといわず、次に帰省したときには訪れたいと思います。

高塚山森林公園

高塚山は標高305メートルの自然豊かな山で、高塚山森林公園から山頂まで通じる登山道があり、頂上からは西都市を一望できます。春には桜やつつじ、秋には紅葉を楽しむことができ、地元の人々にも親しまれています。
高塚山森林公園(西都市)※写真提供:西都市観光協会

プロフィール

芸人/オカリナさん

【誕生日】1984年9月28日
【経歴】
宮崎県出身。日南学園高等学校看護科を卒業後、看護専門学校へ進学。看護師として関東の病院に4年務めたのち、2008年、24歳で吉本興業グループのNSC吉本総合芸能学院東京校に入所。09年、NSC東京校15期生の同期・ゆいPと女性お笑いコンビ「おかずクラブ」を結成。15年、『ぐるナイ大晦日恒例! おもしろ荘』に出演し、一躍注目を浴びる。19年、コンビで日本テレビ「女芸人No.1決定戦 THE W」決勝進出。「世界の果てまでイッテQ!」(日本テレビ)「デルサタ」(メ~テレ)、冠番組「キャイ~ン&おかずクラブの激ウマ西遊記」(中京テレビ)など多くのレギュラー・準レギュラー番組を持つ。ソロでは実写ドラマ「天才バカボン」で主演、映画「妖かしの恋一陣の風に」で大家さん役を務めるなど役者としても活躍中。

おかずクラブちゃんねる
(取材・文/鈴木啓子 写真/鈴木慶子)