神棚を設置する方角と場所。マナーを守って正しく祀ろう

お葬式のマナー・基礎知識
神棚を設置する方角と場所。マナーを守って正しく祀ろう
神棚とは、神様を迎えて祀るための祭壇です。近年は減少傾向にありますが、神棚を家や会社に置くことで幸運を呼び込めると言われています。神棚で家内安全や子孫繁栄などを願うには、設置の決まりを守ることが重要。この記事では、設置する場所や方角、お供え物など、神棚に関することを詳しく紹介します。

神棚の基礎知識と設置する方角

家庭の円満や繁栄などを願い、古くから祀られてきた神棚。ここでは、神棚の基礎知識や祀る方角を解説します。

神棚とは

神棚とは、神道における日本古来の神様を祀る神聖な場所です。棚だけでなく、お神札を納入するお宮をかたどった宮形(みやがた)も含めて神棚と呼ばれます。
神道の歴史は古いですが、家庭に神棚を祀る習慣が広まったのは江戸時代の初めから中頃とされています。伊勢神宮で手に入れたお神札(おふだ)を置くために、神棚を祀るようになったそうです。現在は、自宅や会社に神棚を飾ることが多く、天照大神(あまてらすおおかみ)や、氏神(うじがみ)などの力が込められたお神札を納めます。

神棚を祀る方角

自宅や会社などに神棚を設置する際は、適した方角を意識することが大切。基本的には、神棚と同じ方向を見たときに、東か南を向く方角が吉と言われています。なぜなら、神棚に祀られる天照大神は太陽を司る神様なので、日が昇る東や、日光に照らされる時間が少しで最も長い南が重要視されているからです。

神棚の設置場所を詳しく知る

方角以外に、神棚に適した場所やふさわしくない場所も決められています。神棚の設置場所について、具体的な方法も交えて紹介します。

ふさわしい設置場所

人が集まることが多く、明るくて清潔な場所が神棚に適しています。例えば、リビングルームに東向きもしくは南向きで神棚を祀るのがおすすめです。
人の目線より下に神棚があると、神様を見下す位置関係となるため、目線より高い位置に設置します。1階や集合住宅など、上に人がいる状態になる場合は、天井など神棚の上に「雲」と書いた紙を貼ってください。天井を「雲」のある空に見立てることで、神様が最も高い位置にいることを表します。
ただし、紙に記載する文字は信仰している神社や地域によって変わり、「空」「上」「天」になることも。意味は同じですが、文字の間違いがないよう事前に確認すると安心です。
また、東や南向きの明るい場所が神棚に適しているとはいえ、間取りや隣接する建物の影響などで、日の光が入りにくいことがあります。どうしても東や南向きが難しい場合は、日光が届く場所なら西向きでも問題はありません。

ふさわしくない設置場所

汚れることが多い、暗くて光が少ない、人が上を歩く場所などは、神棚を置くのに適しません。例えば、水回りのキッチンやトイレは、汚れやすく不浄な場所と捉えられます。
そのほか、人が通ることが多い廊下や玄関は、神様が落ち着いて過ごせないため避けた方が無難です。一戸建ての1階に神棚を置くときは、2階の廊下の下にならないようにも注意が必要です。太陽の光が少なく、私的な空間である寝室も神棚の設置場所にふさわしくありません。

一軒家以外に神棚を設置する場合

アパートやマンションといった集合住宅や会社・事務所など、一戸建て以外にも神棚を設置することがあります。ここでは、クギが使えない賃貸物件や、人が多く集まる会社・事務所に神棚を取り付ける際の注意点を紹介します。

アパート・マンション

壁や柱に穴を開けられない賃貸物件に神棚を設置する場合は、ピクチャーレールや、壁に傷を付けずに取り付けられる柱や棚を活用する方法があります。もちろん、アパートやマンションであっても、日当たりの良いリビングルームを選び、東か南向きに神棚を設置するのが基本です。集合住宅は、最上階以外だと上に人が住むことになるため、神様に対して失礼にならないよう、雲と書いた紙を神棚の上に貼り付けるのを忘れずに。

会社・事務所

会社や事務所は、業績の向上や社内メンバーの団結を願って神棚を設置することが多いです。社内の人が祈りを捧げやすい、応接室などの中心的な場所が適しています。
神棚の下を人が通らない所を選ぶのに加え、神様がみんなを見守れるよう、家庭の神棚より高めの位置に取り付けるのが一般的。また、東・南向きにするだけでなく、社内の人が背中を向けないように工夫をします。

神棚のお供え物と、お神札の納め方

神棚には、神饌(しんせん)と呼ばれるお供え物やお神札などを飾るのが通常です。ここでは、基本のお供え物と、お神札の納め方について解説します。

基本のお供え物

お供え物としては、日供(にちぐ)と呼ばれる「米」、「水」、「塩」の3品が基本です。できるだけ毎日交換します。ほかに酒、榊(さかき)が挙げられます。それぞれの置き方は次の通りです。
  • 米:神具の皿に乗せ、神棚に向かって左に供える。(中央の場合もあります)
  • 塩:未精製の粗塩を使い、円錐形になるよう皿に盛り、神棚に向かって右に供える。
  • 水:朝汲んだ水を水器(または水玉)という神具(蓋付きの水入れ)に入れ、蓋を取った状態で供える。御神前と書かれたガラス製のコップ型水器に入れる場合もあります。
  • 酒:2つで1組の瓶子(へいじ)に日本酒を注ぎ、蓋をせず左と右の両方に供える。
  • 榊:榊立に入れ、左と右の両方に供える。常にイキイキとしたものを供える。

お神札の納め方

神棚には、伊勢神宮のお神札や地域の氏神を祀る神社(氏神神社)のお神札、そして、個人の信仰により崇め敬う神社(崇拝神社)のお神札を納めます。扉が1つの一社造りの神棚は、最も手前から伊勢神宮のお神札、氏神神社のお神札、崇拝神社のお神札の順番に重ねるのが通常。
また、扉が3つの三社造りは、伊勢神宮のお神札が中央、氏神神社が向かって右、崇拝神社が向かって左になります。五社造りや七社造りの場合は、三社造りと同じような位置に納めてください。
神棚にあるお社(やしろ)を宮形と言いますが、この扉を常時開けておくか閉めておくのかには賛否両論あります。ご自身の信奉する神社で確認することをおすすめします。

神棚の飾り方に関する疑問を解決

水回りは神棚にふさわしくないとされていますが、住宅事情によっては台所近くに飾らなければならないことも。ここでは、水回りに神棚を設置したい場合や、神棚と仏壇を一緒に設置したい場合の解決方法を紹介します。

水回りの近くに神棚を設置したい

部屋数が限られているなどの住環境によって、台所しか神棚を祀れない場合は、火を司る神様として知られる荒神様専用の神棚を選ぶのがおすすめです。居住者が生活に困らないよう、災いから守るご利益があるとされています。
台所に神棚を設置する際も、目線よりも高い位置で、東か南向きに取り付けてください。なるべくきれいな場所を選ぶことも大切です。神棚の扉は閉めた状態にし、お神札を交換するときのみ開きます。

神棚と仏壇を一緒に設置したい

仏壇は先祖(仏様)のため、神棚は神様のために取り入れるものですが、双方の失礼にならないように注意すれば、同じ部屋に置いても問題ありません。例えば、神棚と仏壇を向かい合わせにするのは無作法に当たります。どちらかに手を合わせるとき、もう片方に背中を向けることになるからです。
その他に神棚を上、仏壇を下などと上下に設置するのも避けます。お参りしている対象が不明確になるのに加え、序列を作る無礼な行為に当たります。仏壇を1階に置くのであれば、神棚も2階ではなく1階に設置すると良いでしょう。
神棚と仏壇を並べる場合は、部屋の真ん中付近で太陽の光が差す場所に神棚を設置してください。神様は先祖(仏様)より上と考えられるため、神棚に向かって左に仏壇を置きます。
また、家族が亡くなった場合、死によって神様の力が失われないよう、神棚封じをおこなうことも重要です。神棚封じの儀式は、家族ではなく第三者によっておこなわれます。忌中(一般に四十九日の法要まで)は神棚封じを続け、お供えやお参りはしません。

正しい方角に神棚を設置して毎日お参りしよう

古来より神聖なものとして祀られる神棚。信仰に柔軟性のある日本では、神棚と仏壇が共にある家庭も少なくありません。設置する方角や場所など、分かる範囲で決まりや作法を守り、神様にもご先祖様にも失礼のないようにしたいですね。神棚を正しく祀りお供えをしたら、清らかな気持ちで家族の健康や会社の繁栄を願ってはいかがでしょうか。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。