棺桶の値段やサイズ・素材は?選ぶときのポイントも紹介

わたしのお葬式
棺桶の値段やサイズ・素材は?選ぶときのポイントも紹介
棺桶とは、故人の遺体を納める入れ物のこと。葬儀社で手配してもらうのが一般的ですが、最後に眠る場所として棺桶の素材や形などにこだわりたい場合は、エンディングノートに自分の希望を書いて家族に託す方法もあります。本記事では葬儀に欠かせない棺桶の素材や大きさ、相場、選び方などを紹介します。

葬儀に欠かせない棺桶とは

棺桶は遺体を納めるために必要なもの。棺桶に故人の遺体を納める儀式を納棺と言います。はじめに棺桶の概要を解説します。

棺桶の意味

棺桶とは遺体を納める入れ物のことです。納棺後、故人の遺体は火葬まで棺桶に安置された状態で、家族や参列者と最後のひとときを過ごします。
日本では9割以上が火葬をします。故人の遺体を棺桶に入れた状態でないと火葬場で受け付けてもらえないため、必ずと言っていいほど棺桶の準備が必要です。

棺桶の種類と棺との違い

現在の日本で一般的な棺桶は、足を延ばしたまま納められる「寝棺(ねかん)」です。江戸時代くらいまでは、座らせた状態で納める「座棺(ざかん)」が主流であったとされています。落語などにも登場する棺桶を「早桶(はやおけ)」といいますが、これは桶に似た入れ物で、素早く組み立てて遺体を運び葬るものでした。
ちなみに、棺(ひつぎ)と棺桶は同じ意味です。棺には「霊魂を継ぐ」との意味もあるとされ、「霊継ぎ(ひつぎ)」と呼ばれるようになったとの説もあります。

サイズ・素材・形・値段で、棺桶を選ぶ

棺桶には素材や形などにいくつか種類があります。素材によっては装飾が施されたものも。こちらでは、棺桶を選ぶときの参考に値段や種類(サイズ、素材、形)を解説します。

棺桶のサイズ

棺桶のサイズは「尺」で表記されます。1尺は約30センチで、棺桶の基本的な大きさは6尺(約180センチ)とされています。
人は死後硬直すると、足のつま先が伸びて背伸びした状態になるため、棺桶は故人の身長よりも10~15センチ大きいものを選ぶと良いでしょう。また実際に遺体を火葬する炉にも規格があるため、その中に入るサイズの棺桶であることも重要です。

棺桶の素材

棺桶の素材は主に4種類あります。先ほどお伝えしたように日本では火葬が基本ですので燃える素材で作られています。素材ごとの特徴を確認して、最適な棺桶を選んでください。

  • 一般的な素材。天然木材(ヒノキ、もみ、杉、桐など)やフラッシュ材(ベニヤ板を加工した板材)が使用される。装飾は彫刻をしたり、金具をつけたりするものなどがある。
  • 布(布張り棺)
    木棺を布で巻いたもの。布の色も豊富なので、故人の好きだった色を選べる。布に刺繍や模様のプリントを施すことができる。
  • アクリル
    アクリルの板を使った、エンバーミング専用の棺桶。エンバーミングとは、遺体に防腐処置や殺菌消毒などをおこない長期保存を可能とする処置。
  • 段ボール
    エコ棺と呼ばれる段ボール製の棺桶。

棺桶の値段

棺桶の大きさや素材、形によって値段の相場が異なります。素材や装飾などにこだわると高額になる傾向があるので、なるべく費用を抑えたい場合は、シンプルなものを選ぶと良いでしょう。
  • 木棺:4万円~100万円以上(ヒノキや桐を使った棺桶は高額なものが多い)
  • 布張り棺:2万円~30万円
  • エンバー(アクリル)棺:10万円~30万円
  • エコ棺:5万円~20万円

棺桶の形

棺桶の形は宗教や宗派、地域の風習などで決まりがある場合も。次の5つの形がよく見られます。
  • 箱型棺:長方形で、蓋が平らになっている。平棺(ひらかん)や、キャスケット(casket)型とも呼ばれる。このキャスケットは帽子ではなく、アメリカで土葬に用いられる長方形の棺のこと。
  • 船型棺:海外の映画などで目にする頭よりも足元の横幅が狭くなっている形のもの。ドラキュラの柩のような六角形の棺で、英語ではコフィン(coffin)ということからコフィン型とも呼ばれる。
  • 山型棺:蓋が山型になっている。装飾などデザイン性が高いものが多い。
  • インロー棺:棺桶に蓋がかぶさったもの。名前の由来は印籠の形に似ていることから。
  • かまぼこ型棺:蓋が丸みを帯びた曲線のあるもの。R型とも呼ばれる。

棺桶の用意の仕方

終活するうちに棺桶までこだわりたいと考える人もいることでしょう。かさばるので、生前のうちに棺桶を準備しておくのは難しいかもしれませんが、自分の希望を伝えておくことはできます。葬儀社が用意する中から選ぶ方法と、故人の希望を尊重する方法を紹介します。

棺桶は葬儀社が用意をするのが一般的

葬儀社の担当者と葬儀の打ち合わせをする際に、用意されたパンフレットの中から棺桶を選ぶのが一般的です。棺桶の価格設定は葬儀社によって異なります。最近は葬儀プランに棺桶が含まれているケースも。
棺桶を選ぶと、葬儀社が手配してくれます。遺族が実際に棺桶を見るのは、納棺のときに運び込まれてからになります。
病院などで、院内業者(病院に入っている専属葬儀社)が葬儀を誘致する目的で棺桶をすすめ、納棺してしまってから搬送するケースも見受けられます。この場合、遺族は十分に棺桶を選択できないまま納棺まで済ませてしまうことになり、後にトラブルの原因となる場合もあります。
病院と契約をしている業者だからとお任せしてしまって後悔することのないよう、注意と確認が必要です。

希望する棺桶がある場合はエンディングノートに記しておく

棺桶は大きいため、生前に購入することは現実的ではありません。もし希望する棺桶がある場合は、エンディングノートを活用するのがおすすめです。素材や形など希望する棺桶の情報を記載して、家族が分かるようにしておくと良いでしょう。エンディングノートを見た家族が希望に近い棺桶を用意してくれるはずです。
また棺桶はインターネット通販でも販売されているので、どういったものがあるか見ておくと参考になります。
エンディングノートに書く内容や、書き方はこちらの記事をチェックしてください。

副葬品として棺桶に入れられるもの・入れられないもの

副葬品とは棺桶の中に遺体と一緒に入れるもののことを言い、故人が愛用していたものを入れるのが一般的。ただし、副葬品は入れて良いものと入れられないものがあるので、それぞれ解説します。

棺桶の中に入れて良いもの

棺桶には、故人が好んでいたものが入れられます。棺桶の中に入れて良いとされるものには、次のようなものがあります。
  • 洋服
  • 手紙
  • お菓子
  • 紙パックに入った飲み物
  • その他思い出の品(写真など燃えるもののみ)
  • 思い出の写真はよく副葬品になります。しかし、存命中の人が写った写真などは、棺桶に入れて火葬するのに抵抗がある人もいるので配慮が必要です。
棺桶に入れて欲しいものがある場合は、口頭で伝えておくかエンディングノートに記載します。

棺桶の中に入れられないもの

基本的に燃えないものを副葬品として入れるのは火葬場で禁止されています。他にも燃やすと爆発したり、有毒な物質が発生したりするものも入れられません。棺桶の中に入れられないものには次のようなものがあります。
  • ライター
  • メガネ
  • アクセサリー(時計や指輪など)
  • お金
  • ペットボトル
  • 厚みのある本
副葬品選びに迷う時には、下記の記事も参考にしてください。

棺桶にまつわる豆知識

棺桶は葬儀のときにしか見る機会がないので、「ひつぎ」の漢字が2通りあることや数え方など意外と知らない人も多いかもしれません。知っておくとためになる、棺桶にまつわる豆知識を紹介します。

棺と柩はそれぞれ意味が違う

棺桶と同じ意味のある「ひつぎ」は、棺と柩の2通りの表記がありますが、それぞれ意味が異なります。
棺は、まだ中に遺体が入っていない状態を表しています。故人の遺体を棺に納める納棺で使用される漢字です。
柩は、納棺後、棺桶の中に遺体が入っている状態を表しています。遺体を火葬場まで運ぶ、霊柩車で使用される漢字です。柩に使われている「久」は、人が入れ物の中に入っている状態を表すとされています。

棺桶の数え方は「一つ」ではない

棺桶の単位は「基(き)」。数えるときは「一基(いっき)」と言います。「基」は一人の力では動かせないものや、据え置きされたものを数えるときに使われます。

棺桶にまつわる風習がある

知らない人も多いかもしれませんが、母親の棺桶の中に子どもたちのへその緒を入れる風習が一部の地域であるそうです。その由来ははっきりしていませんが、「あの世への通行手形」になるとの説があります。
その逆に自分が亡くなったときに棺桶に入れてもらう人もいます。「迷うことなく、天国で母親と再会できる」といった意味があるとされています。自分のへその緒を残す必要がないなどの理由から、亡くなったときに一緒に棺桶の中に入れてもらう人もいるそうです。

希望する棺桶がイメージできたらエンディングノートへ

希望する棺桶の種類を決めたら、エンディングノートに書き留めてみてください。自分が亡くなった後、希望に近いものを家族が選んでくれるはずです。また、家族の立場になってみても、最後の希望を叶えてあげられることで小さな喜びを感じるかもしれません。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。