「火葬」とは?知っておきたい流れ・マナー・費用・手続きなど

お葬式のマナー・基礎知識
「火葬」とは?知っておきたい流れ・マナー・費用・手続きなど

この記事はこんな方におすすめです

火葬とは何かを知りたい
火葬の流れやマナーを知りたい
葬儀・出棺の後は、故人と最後のお別れとなる火葬です。日本では遺体を火葬するのが一般的ですが、その手続きや手順についてご存知でしょうか。そのときになれば葬儀社がいろいろと手配をしてくれますが、やはり自分でも流れくらいは知っておきたいもの。本記事では火葬に関する知識や押さえておきたい流れ、費用、手続き、火葬前の「納めの式」などについて紹介します。

「火葬」とは?歴史・仕組み・タイミング・費用

火葬はご遺体を燃やして葬る方法です。現在の日本ではほとんどのご遺体が火葬されます。まずは、火葬の仕組みや実施の割合、おこなうタイミング、費用の目安を紹介します。

日本での歴史と割合

かつて日本では土葬が一般的で、現代でも埋葬方法の一つとして法律で定義されています。しかし、実際にはほとんど土葬はおこなわれていません。それは自治体の許可が必要なだけでなく、土葬ができる霊園や土地が限られているからです。
明治政府により、伝染病死者を火葬にすることが命じられ、各地に火葬場が作られましたが、当初、火葬の普及は地域で差が見られました。現在では日本の99.9%のご遺体が火葬されているといわれています。

概要と仕組み

火葬場の方式には「ロストル式」と「台車式」の2種類があります。

<仕組み>

  • ロストル式:柩(ひつぎ)をロストルと呼ばれる格子の上に置き、バーナーで焼く
  • 台車式:台車の上に柩を載せて、台車ごと火葬炉に入れて焼く

<焼却時間の目安>

  • ロストル式:40分~1時間
  • 台車式:約70分
火葬場の火葬炉の温度は、ダイオキシンなどの有害物質が発生しにくい800度以上と定められています。温度が高すぎると骨が灰になり、低すぎると大きな骨が燃え残ってしまうためです。高い場合では、1200度以上に設定されることもあります。
このような高温で焼かれるため、巷で囁かれている「生き返る」「生焼け」といったようなことは考えられません。

火葬をおこなうタイミング

死亡が確認されてから24時間以内の火葬は法律で禁じられています。また、火葬をするには、死亡届を提出し、火葬許可証を取得する必要があります。ほかにも、火葬場の予約や遺体の運搬の手配、24時間遺体を安置する場所も用意しなくてはなりません。
葬儀をせずに火葬をする「直葬」でも、24時間のご安置と火葬をおこなうための手続きは必要です。

火葬にかかる費用

<火葬にかかる費用の主な内訳>

  • 遺体を焼却する火葬料
  • 遺族や参列者が待機するための待合室の料金
  • 骨壺代
火葬料は火葬場が公営か民営かによっても異なります。
<公営>
料金の目安:0~6万円ほど
故人が住民票登録をしている自治体であれば、無料で火葬を請け負ってもらえるところもあります。公営の火葬場がない自治体もあります。
<民営>
料金の目安:5~10万円ほど
民営の火葬場は故人や遺族の住んでいる場所によって金額が変わらないため、比較的予算が立てやすいでしょう。また、公営の火葬場に比べると数が多く予約も取りやすいです。
火葬料は故人が子どもか大人かによっても変わります。料金は地域にもよりますが、子ども(6歳以下、10歳未満、12歳未満など年齢は様々)は体が小さく、火葬の時間とコストが抑えられることから、大人の5~7割程度の金額で利用できます。

知っておきたい、火葬の流れ・マナー

ここからは出棺から火葬開始、帰宅までの流れを紹介します。当日は担当者からも説明がありますが、事前に知っておくと火葬前の儀式「納めの式」の心の準備ができるでしょう。

出棺後に火葬場へ移動する

葬儀が終わり故人の出棺後に火葬場へ移動します。火葬場に同行するのは、葬儀に参列した人全員ではなく、喪主・遺族、親戚、親しい友人など故人と関係の深い人に限られます。
最初に喪主が乗った霊柩車が出発。次に僧侶や遺族、親族を乗せた車、または葬儀社が用意したマイクロバスが続きます。喪主は火葬場に火葬許可証を持参し、到着したら火葬場のスタッフに提出します。

「納めの式」が始まる

火葬に立ち会う人が揃ったら、柩が告別室や炉の前に安置され、最後のお別れの儀式「納めの式」が始まります。僧侶が読経した後、参列者は焼香をあげ全員で合掌。焼香は、喪主・遺族に続き、親族、友人の順でおこないます。「納めの式」が終わると柩が火葬炉へと運ばれます。

火葬が始まる

柩を火葬炉に入れ、扉を閉めたら火葬が始まります。炉の点火スイッチは基本的に喪主が押します。ただし、喪主がつらくて押せないというときは、ほかの遺族や親族が代わりに押しても構いません。スタッフが押すことになっている火葬場もあります。
火葬が終わるまでには約40分から2時間ほどかかります。その間、喪主や遺族は控え室で待機し、参列者は控え室かロビーで過ごすことが多いです。
控え室にはお茶やお菓子が用意されていることもあります。火葬中だと考えるとつらい気持ちになりますが、家族や同行者と話すと少しは気分が落ち着くかもしれません。

骨上げをする

指定時刻になり案内や放送が入ると、骨上げです。炉の鍵がある場合はスタッフに渡します。喪主・遺族、親戚、故人と縁の深い順に、二人一組で足から頭の骨までを竹の箸で拾って骨壺に収めていきます。このため、骨上げは「骨拾い」「収骨」とも呼ばれます。
最後に喪主が喉仏の骨を収めて完了です。大きい骨壺にすべての骨を入れたり、小さい骨壺に入る分だけを入れたりと、地方によって骨上げの方法が異なります。骨上げの細かい方法は火葬場のスタッフや葬儀社の担当者が指示してくれるので、それに従います。分骨を希望する場合は、自分で小さい骨壺を持参しても構いませんが、事前にスタッフに相談しておきましょう。
骨上げの後は、火葬許可証を返却してもらいます。火葬場によっては骨壺の包みに入れてくれるところもあります。
喉仏が大切にされる理由や収骨の詳しい方法は、以下の記事を参考にしてください。

精進落としをおこなう

収骨の後は火葬場から別の会場へと移動し、精進落としをおこないます。精進落としは、参列者や僧侶への感謝の気持ちを表してもてなしの食事のことです。地域によっては火葬中におこなうこともあります。精進落としの所要時間は1時間〜1時間半ほどで、終了後に帰宅します。
精進落としの流れやマナーは、こちらの記事を参考にしてください。

火葬に関する手続き

遺体を火葬するには、定められたルールがあります。また、手続きも必須です。詳しく見ていきましょう。

火葬には「火葬許可証」が必要

火葬するには、「火葬許可証」を取得して、火葬場に持参する必要があります。証明書がなければ火葬を受け付けてもらえないので、葬儀前の手続きが不可欠です。
火葬後には、火葬済みであることの証印や日時を記入した火葬証明書が返却されます。これが、お墓にお骨を納めるときに提出する「埋葬許可証」にもなるため、紛失しないように持っておきましょう。

火葬許可証の取得方法

火葬許可証は、故人の本籍地または居住地の市区町村役場へ死亡届を出すときにあわせて申請するのが基本です。死亡届のように期限はありませんが、葬儀をした後にそのまま火葬することが一般的なので、一度に手続きを済ませることがほとんどです。
火葬許可申請書には、故人の氏名や本籍地・住所、生年月日などの基本情報と、死亡した日時や場所、死因などを記入。書類に不備がなければ申請した窓口で許可証が即日発行されます。
費用は自治体によって異なります。紛失や汚損による再発行は有料になるので、受け取り後は大切に保管しましょう。
火葬許可証の取得は、死亡届の提出とともに、葬儀社に代行してもらうことも可能です。

火葬するとき、棺に入れて良いもの・いけないもの

棺には故人の好きだったものや愛用していたもの、遺族や友人からの心尽くしの品物を入れます。これを「副葬品」と呼びます。燃えるものならば、何を入れても大丈夫と思われるかもしれません。しかし、実は入れてはいけないものもあります。後から取り出すように言われたりすると大変なので、入れて良いものといけないものを確認しておきましょう。

火葬前の棺に入れて良いもの

<入れて良いもの>

  • 普段からよく着ていた服や大事にしていた着物、気に入っていたスーツなどの衣服
  • ぬいぐるみやマスコット類
  • 花束(茎の太いものは十分燃えないことがあるので、花の部分だけを摘み取って入れる)
  • 故人に宛てた手紙や寄せ書き、好きだったお菓子、タバコなど

火葬前の棺に入れてはいけないもの

<入れてはいけないもの>

  • 金属やガラスといった燃えないもの(眼鏡・入れ歯・金属を使ったアクセサリーなど)
  • 精密機械
  • ビニールや化学繊維、発泡スチロールといったガスの発生や炉の損傷の恐れがあるもの
  • 缶や瓶に入った飲み物やお酒
  • お金
また、ペースメーカーやボルトなど、体内に医療機器や金属が入っている場合は必ずスタッフに伝えます。
燃えるものであっても避けた方が良いとされているのが、分厚い本やスイカ・メロンなどの大きな果物です。これらは均等に燃えにくく、燃えても大量の灰となるので、骨上げがスムーズにできないことがあるからです。
さらに、意見の分かれるのが家族写真など、生きている人が写った写真です。故人が寂しくないように入れてあげたいという人もいますが、「連れていかれる」という俗説もありますので、家族間で相談して決めるのがおすすめです。
副葬品や棺に入れられない物の取り扱い方は、以下の記事を参考にしてください。

火葬に関する疑問を解消しよう

火葬をすることはわかっていても、費用の捻出が不安な人や、どうしても火葬に抵抗がある人、遺骨をどうしたら良いかわからない人もいるでしょう。ここでは火葬に関する悩みの対処法について解説します。

火葬の費用がない場合はどうすれば?

生活保護制度のひとつとして、葬儀をおこなえない人を支援する「葬祭扶助」があります。これは各自治体がおこなっているもので、対象となるのは故人、もしくは遺族が生活保護受給者の場合です。葬祭扶助の基準額は、国によって以下のように定められています。
級 地 別 基 準 額
大 人  小 人
1級地および2級地 21万2,000円以内 16万9,600円以内
3級地 18万5,500円以内 14万8,400円以内
級地とは地域ごとに定められた生活保護の等級です。各地域の級地については、厚生労働省の級地区分の資料で確認できます。葬祭扶助は基本的に、葬儀の前に市区町村役場などに相談し審査を受ける必要があります。葬祭扶助について詳しく知りたい場合は、居住地の自治体に確認しましょう。

火葬後の骨上げをどうしてもしたくないときは?

火葬場でお別れをしたいけれど、お骨になった故人を見るのが辛い、どうしても抵抗がある、小さいお子さんがいて怖がるといった場合は、骨上げを辞退できます。
家庭の事情や、経済的な理由で収骨そのものを拒否したい場合は、地方によっては所定の手続きをすれば可能なところもあるので、葬儀社や火葬場のスタッフに相談してみてください。ただし、一度収骨しない手続きをしたら取り消しがきかないことがほとんどなので、慎重に考えるのが望ましいでしょう。

遺骨を手元に置いておきたくない・お墓がないときは?

遺骨を手元に置いておきたくない、お墓がないという場合には、「散骨」や「樹木葬」などの埋葬方法を選択できます。
散骨は遺骨を粉末状にして、山や海、森、川などに撒く埋葬方法です。樹木葬は自然葬の一つで、墓石ではなく樹木の根元にお骨を納める方法。どちらも「自然に還る」という考え方があり、故人や遺族の希望で選ぶ人も増えてきています。

火葬の手順を知って滞りなく故人を送ろう

日本で亡くなった人の約99%が火葬といわれ、ほとんどの人が通る道です。滞りなく火葬をおこなうための手続きや手順、マナーをしっかりと押さえて、故人の魂を静かに送りましょう。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。