遺族へ支給される弔慰金とは?制度をどう使えば、いつ受け取れるのか

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遺族へ支給される弔慰金とは?制度をどう使えば、いつ受け取れるのか
弔慰金(ちょういきん)は、企業が従業員やその家族が亡くなったときに支給したり、行政が災害で亡くなった人に支払ったりするお金です。故人を弔うとともに、遺族の生活の支えになります。家族が亡くなるとさまざまな面で出費が増えるものです。そんなときに役立つ弔慰金制度の利用方法についてお伝えします。

弔慰金の基礎知識

多くの企業では、福利厚生の一環として慶弔金(けいちょうきん)制度を設けています。これは、従業員本人や家族にお祝いごとや不幸があった際に、お金が支給されるという制度です。結婚祝い金や出産祝い金、見舞金なども慶弔金に含まれますが、ここでは、死亡時に給付される弔慰金について見ていきます。

弔慰金とは

「弔慰金」とは、企業が所属していた故人の功労をみとめて、支給するお金のことです。公的機関が災害で亡くなった人に支払う場合もあります。

支給金額は企業・団体、勤続年数などによって異なります。企業の場合は勤続年数が1年以上でなければ支払われないなど、給付条件があることがほとんどです。条件が満たされていれば、本人はもちろん、家族が亡くなった場合に「家族弔慰金」が支給されることもあります。

公的な弔慰金

弔慰金というと、企業から支払われるものというイメージのある人が多いかもしれません。しかし、公的に支給されるものもあります。

《災害弔慰金》
一定の基準を満たす自然災害によって死者が出た場合、その遺族に対して国が 1/2、都道府県が 1/4、市町村が 1/4 を負担して災害弔慰金を支払うことを定めています。生計維持者が死亡した場合には500万円、その他の場合には250万円が支給されます。

《国会議員が死去した際の弔慰金》
国会議員が在職中に死去した場合、歳費月額の16ヵ月分を支給します。さらに、職務中の死去の場合は、特別弔慰金として歳費月額の4ヵ月分が追加支給されます。

《戦没者遺族への弔慰金、特別弔慰金》
日本では、昭和27年に戦没者遺族への支給について定め、昭和40年に受給資格を有する者に特別弔慰金を追加支給しました。

《国籍離脱者となった戦没者遺族への弔慰金》
第二次世界大戦後、日本国籍から離脱したために恩給を受給できなかった朝鮮人日本兵、台湾人日本兵などの遺族にも、弔慰金を支払うことになりました。

《国外犯罪被害弔慰金》
2013年にグアムで起きた、通り魔事件を受けて制定されたもの。日本国外で犯罪行為によって殺害された被害者の遺族に、被害者1人あたり200万円の弔慰金が支払われます。

近年、自然災害が多く、利用が増えているのは災害弔慰金でしょう。

弔慰金は原則非課税

相続財産とみなされない弔慰金は、原則として非課税です。しかし、いくらでも非課税になるというわけではなく、限度範囲を超えると相続税がかかります。受け取った弔慰金が非課税枠を越えると、「死亡退職金」として扱われます。

弔慰金は誰のものか

弔慰金は香典と同じく喪主への贈与金とみなされます。ですので、喪主が自分の裁量でどのように使っても問題はありません。受け取り後は、遺族や親族で分配して構いません。

弔慰金と香典や死亡退職金との違い

弔慰金と区別して考えなければならないお金に、死亡退職金や香典などがあります。いずれも家族の死亡時に受け取るお金であることは変わりませんが、扱いが異なります。

香典との違い

まずは、香典との違いから確認していきましょう。弔慰金と香典では、同じお金でも意味合いや受け取る時期が異なります。

《意味》
弔慰金は「福利厚生」⇔香典は葬儀代の負担軽減

故人を弔う弔慰金は、企業の福利厚生の1つです。遺族を慰める気持ちを示すもので、遺族の生活費になることが多いです。一方、香典は故人の霊前に供えるもの。現在では葬儀にかかる金銭的負担を軽減するための意味が大きいです。

《受け取る時期》
弔慰金は「後日」⇔香典は当日

弔慰金を受け取る時期は企業によって異なります。葬儀が終わって落ち着いたころに受け取る流れが一般的です。一方、香典は当日受付で受け取ります。

死亡退職金との違い

弔慰金と死亡退職金は、どちらも勤め先の会社から遺族に支給されます。遺族のその後の生活のために渡されるもので、故人への弔いの気持ちを表しています。

死亡退職金は支給される金額が被相続人の死亡3年以内に確定したものは相続税の課税対象になります。死亡退職金だけでなく、亡くなる人に支払われるはずの功労金や給与を受け取った時も相続税の課税対象です。

弔慰金と死亡退職金の大きな違いは「非課税限度額」にあります。

・弔慰金の非課税枠 「最後の給料×6ヵ月分」
・死亡退職金の非課税枠 「500万円×法定相続人の数」

それぞれ非課税対象の計算方法が異なるため、別々の会計処理が必要です。

弔慰金の受け取り方

弔慰金はいつどうやって受け取ることができるのでしょうか。申請方法や受け取れるタイミングも気になるポイントです。

弔慰金の申請

企業の弔慰金は、家族が申請をしなくても受け取れる場合が多いです。

当社(家族葬のファミーユ)をモデルケースとすると、申請書はありますが、従業員本人が亡くなった時には所属部署の上司などが代理で申請をすることが大半です。家族の弔事に関しては、従業員本人が申請をしたり、周囲のスタッフが代わりに手続きをしたり、と状況によります。

公的な弔慰金は、遺族による申請が必要です。死亡届などが必要になることもあるので、当該の市町村などに詳細を確認してください。

主な給付方法は「現金(封筒)」か「振り込み」

給付方法は企業や行政の対応によります。現金手渡しか、振り込みが一般的です。

現金の場合は、表に「弔慰金」と記載された封筒で手渡されます。金額が多い場合は「目録」と記載された空の封筒を渡され、別途振り込まれるということもあるそうです。

振り込みは、給与の振込先に入金されることが多いです。

弔慰金を受け取れる時期

弔慰金は葬儀の当日ではなく、葬儀が終わって落ち着いてから渡されることが多いです。葬儀の当日に手渡された場合は、弔慰金にお返しは不要なので、香典と区別して管理します。

もしも、弔慰金を渡す側(会社側)になったら、遺族の大変さを考慮して葬儀とは別日程でお渡しするようにしましょう。

弔慰金の支給金額の決まり方

企業や会社によっても差がある弔慰金の金額ですが、支給金額の決定には「死亡時の状況」が大きく関わります。実際に受け取れる金額についてみていきます。

弔慰金の相場金額

企業の弔慰金に明確な相場はありません。弔慰金の算出法としては、定額支給か勤続年数に応じての支給に分かれます。どちらの場合も企業の規模、考え方等々により金額設定に差があります。

また、勤務中の死亡か否かによっても金額に大きな差が出ます。勤務時間と勤務時間外では非課税限度額にも違いが出ます。

弔慰金は遺族のその後の生活を支えの一部となるものです。しかし、金額が多くなると課税対象になる場合もあります。

業務上の原因で死亡した場合

業務上の死亡に相当するものは主に以下の通りです。

・業務遂行中の事故
・出張中に起きた事故
・職業病
・通勤途中の災害
※業務中に病気で突然死亡したときは、その病気が業務と関係あると判断された場合のみ、業務上の原因での死亡と扱われます。

死亡の原因が業務にある場合、弔慰金には遺族への補償の意味も込められます。そのため、金額は多くなるケースがほとんどです。国税庁のホームページでは、業務上の死亡の場合は「死亡当時の普通給与×3年分」を弔慰金とし、これを超える部分は死亡退職金とみなし課税対象になるとされています。

つまり、故人の1ヵ月の給与が30万円だった場合、非課税枠は1,080万円です。

業務外の原因で死亡した場合

一方、死亡の原因が業務に関係ない場合は「死亡当時の普通給与×6ヵ月分」を弔慰金とし、これを超える部分は死亡退職金とみなされます。

つまり、故人の1ヵ月の給与が30万円だった場合、非課税枠は180万円です。業務内での死亡と業務外での死亡では、実に900万円以上の差があるのです。

弔慰金で少しの安心を得る

弔慰金は故人を弔い、残された遺族の生活の支えのために支給されるお金のことです。状況によって金額に違いはありますが、いつ頃どれくらいの金額を受け取れるのかを知っておくと、少しは安心できそうです。