形見分けはいつまでに?形見の意味や注意ポイントも

終活
形見分けはいつまでに?形見の意味や注意ポイントも
故人のものをゆかりある方々へ分ける風習「形見分け」。聞いたことはあるけれど、どのようにおこなうものか詳しくはわからないという人も多いのでは。そこで本記事では、形見分けの際に、注意したいポイントを解説しています。また、形見分けをする場合の日程や誰に何を分けるべきかについてもあわせて紹介します。

そもそも形見分けとは?

そもそも形見分けとはいったいどのような風習なのでしょうか。形見分けの由来や必要性について紹介します。

形見分けの由来

形見分けとは、故人の「形見」を家族や親しい人に分けることです。

そもそも形見とは、それを見ると故人が偲ばれる、または思い浮かんでくるようなもののこと。特に故人の愛着が強く、大切にされていたものを指します。

故人の形見を分け合うのは、日本独自の風習です。地方によっては「袖分け」「裾わけ」などと呼ばれるところもありますが、これは昔、衣類を形見とするのが一般的だったためといわれています。

形見分けは遺産相続とは違う?

遺産相続とは、資産的価値のあるものを故人の血縁者が相続することです。

一方、形見分けは、基本的に資産的価値のないものを扱います。形見を受け取る人も血縁者かどうかは関係なく「故人と親しかったかどうか」が重要です。つまり、両者は全く別物といえます。

ただし、高価なものを形見分けすると、相続税や贈与税が発生することがあります。形見分けが思わぬトラブルとなることもあるため、遺産相続と形見分けははっきりと区別しておこなうことが重要です。

形見分けは必ずやるべきか

形見分けは、義務ではありません。残された家族や親族の負担が大きいのならば、形見分けを「しない」という選択もあります。

ただ、古くから伝わる習慣のため、年配者になるほど「形見分けは当たり前」と考える人も多いものです。逆に、若い年代の場合は「もらっても困る」と感じる人も少なくはありません。考え方や状況はさまざまなので、ケースバイケースで対応していくことをおすすめします。

形見分けのタイミングはいつ?誰が誰に声をかける?

形見分けをおこなう際、気になるのがタイミングや対象となる人です。形見分けはいつおこない、誰に声をかければよいのでしょうか。

仏教や神道、宗教によっておこなう日は異なる

形見分けをはじめるのは、一般的に「忌明け後」がよいとされます。

忌明けは、仏教ならば四十九日の法要後、神道は五十日祭の後です。一方、キリスト教には「忌」という考えはありませんが、死後30日目のミサの後がよいといわれます。

そもそも忌の間は、仏教ならば「死者がまだこの世をさまよっている期間」、神道ならば「死の穢れが残る期間」です。この間は、故人のために祈りを捧げて慎ましく過ごすのがよいとされており、形見分けには適していないとされます。

ただし、近年では「近親者が一同に介すのが難しい」などの理由から、忌明けを待たず、葬儀後すぐに形見分けすることも珍しくはありません。

忌明けを待つことが難しい場合は、過去の慣例にとらわれず、親族や自身の都合を優先してもよいと考える人も増えています。

故人の思い出を大事にしたい場合は、日を置いてもOK

形見分けは、故人の残したさまざまな品を整理したり処分したりする作業です。故人との関わりが深い人なら、辛く悲しい作業になるかもしれません。故人の遺品を処分したくないときは無理をせず、日を置いて形見分けに取り組みましょう。

遺産相続などと異なり、形見分けは急ぐ理由や義務がありません。故人の残したものにきちんと向き合えるようになってから取り組む方が、整理する側としては気が楽です。

また、形見分けには「希望する方に好きなものを選んでもらう」という方法もあります。これは、形見分けのミスマッチが起こりにくい方法です。形見を希望するかどうかを尋ね、希望する人には形見分けする日時をお知らせしましょう。

家族や親戚、生前交流の深かった方に声かけを

形見分けの際は、家族や親戚、さらには故人と生前交流の深かった方々に声をかけましょう。

ただし、形見分けは基本的に、親から子、上司から部下など「目上から目下」のものにおこなうものとされています。近年になりこうした風習はだいぶ廃れてきていますが、気にされる方もいるかもしれません。

目上の方に形見分けする場合は「ご無礼とは存じますが」と一言お詫びしておくとより丁寧でしょう。

形見分けをする際に気を付けるポイント

形見分けでは、お渡しする品物によって思わぬトラブルを引き起こすことがあります。トラブルのないようにするには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

遺産分割は済ませておき、価値の有無を確認する

形見分けは、故人の遺産分割が終わり価値あるものが残っていない状態でおこないます。高価なものや価値のあるものは「遺産」として財産分割の対象になります。あらかじめ別に分けておき、形見に含めないよう注意しましょう。

一般的に、50,000円を超える遺品は、相続税の対象です。貴金属などの価値あるものは、鑑定後の換価金額も合わせて、遺産分割協議書に記載せねばなりません。

また、故人に負の遺産があった場合などは、「遺産放棄」したい人もいるでしょう。このような人が形見分けのために遺品整理をおこなうと「故人の財産に手をつけた」として、遺産放棄が認められなくなる可能性があります。

遺産放棄したい人は、基本的に形見分けにも関わらないようにします。

故人の遺志と、もらっていただく方の意思を尊重する

遺言書やエンディングノートなどで形見の行き先や処分方法が指定されていた場合は、故人の遺志を尊重しましょう。

ただし、どんなに故人が希望していたとしても、もらう方が拒否するのであれば、無理強いはできません。相手にお伺いしてよい反応が見られなかった場合は、すんなりと引き下がる方がよいでしょう。

品物は綺麗な状態にしてお渡しする

形見として大切にしてもらうならば、遺品はきれいな状態でなければなりません。相手にお渡しする前に、汚れやほこりを払い見栄えをよくしておきます。

また、お渡しするときのマナーとして、箱に入れたり包装したりして渡すのはNGです。形見は半紙などに簡単に包み、仏式なら「遺品」、神式なら「偲ぶ草」など表書きします。

相手の了承を得ていれば郵送でも構いませんが、基本的に最も好ましいのは手渡しです。

生前に品物を整理し、遺言として残しておくことも

トラブルなく形見分けをおこなう際の最もよい方法は、生前に品物の行き先を決めておくことです。自身の持ち物をリストアップして、渡したい相手の名前などを記しておくことをおすすめします。

これならば、遺品のミスマッチを防げると共に、形見として分けたくないものは別にしておけます。見られたくないものは「中身を見ずに廃棄」など記しておけば、家族が希望どおり計らってくれるでしょう。

自身の意思表示をする手段としては、遺言書に書き込む、エンディングノートに記入するなどの方法があります。どちらも安価な形見に対して法的効力はありませんが、家族に意思を示すのに有益です。

形見分けは故人の意思を尊重し、トラブルのないよう配慮を

形見分けは、故人の存在を思い出し、振り返ってもらうためにおこないます。故人の希望がある場合はそれにならい、故人の意思を尊重しましょう。

ただし、価値あるものは「遺産」として財産分割の対象となります。形見分けは遺産相続が終わった後におこない、資産的価値のないもののみを分けるのが望ましいでしょう。

せっかくの形見によって、身内や故人の友人との間にトラブルが起こるのは悲しいこと。形見を選ぶときや分けるときは、十分な注意が必要です。