お斎と精進落としは同じ?定番メニューと避けるべき食材

お葬式のマナー・基礎知識
お斎と精進落としは同じ?定番メニューと避けるべき食材
お斎(とき)とは、法要の後におこなわれる、故人を偲ぶための食事のことです。お斎と似たものとして、精進落としがあります。本記事では、お斎と精進落としの違いやお斎のルール、食事のメニューなどを紹介します。

「お斎」と「精進落とし」について

まず、お斎は精進落としと一緒に耳にする機会が多い言葉です。お斎と精進落としは意味に違いはあるものの、仏式葬儀(法要)をする人の食事という点は同じです。こちらでは、お斎と精進落としの概要と、それぞれの違い、現代のお斎を解説します。

そもそも「お斎」とは

一般的にお斎は「おとき」と読みます。ただし、地域によっては「おとぎ」と読んだり、「御斎」と書いたりすることもあるようです。お斎とは、法事の一環としておこなわれる会食のこと。地域によっては、葬儀当日の朝に故人と一緒にとる最後の食事を指します。

お斎の一番の目的は、お坊さんや参列者に初七日や四十九日、一周忌などの法要に参加してくれたことへの感謝の気持ちを伝えることです。また、お斎は参列者同士が故人との思い出話に花を咲かせる場でもあります。お坊さんはお斎に参加しないこともあります。その場合は、5,000円~10,000円を目安とした「御膳料」を渡します。

「お斎」と「精進落とし」の意味の違い

「精進落とし」とは、遺族が喪に服すために禁じられていた肉や魚などの生臭料理を解禁する最初の食事を意味します。かつては「故人の弔いのため仏門に精進する」という観点から、四十九日までは米や野菜中心の精進料理が食べられていました。殺生が「仏門の戒律の中では罪」と考えられているからです。

また、初七日法要後に食事会がおこなわれることは稀だったそうです。しかし、現在ではこのような風習が廃れたり組み合わさったりしています。お葬式の流れでおこなわれる初七日法要後の会食で既に肉魚が解禁になることから、精進落としと呼ばれています。お斎は、その後の法事での食事を指すことが多いです。

現代の「お斎」

かつては、お斎の場に出される食事は精進料理が定番でした。しかし、時代とともにお斎のスタイルも変化し、現在は精進料理よりも懐石料理や仕出し弁当が主流になっています。また、法事(法要)が自宅で執りおこなわれる場合は自宅で、葬儀場などのホールを使うときはその場で、お寺などの場合はレストランや料亭などでの会食が一般的です。

法要に参列してくれた人に対して感謝の気持ちを伝えるためのお斎では、現在も返礼品を用意するのがマナーです。返礼品を渡すタイミングは、食事の終わりが近づいたときです。参列者のお膳の前に返礼品を置きましょう。お坊さんが参加している場合は、お坊さん・参列者の順番で渡します。

「お斎」で振る舞われる定番メニュー

時代とともにお斎のスタイルは変化していますが、振る舞われるメニューに大きな変化はありません。こちらでは、お斎の定番メニューと、手作りメニューを紹介します。

精進料理

精進料理とは、肉や魚といった動物性食品を使用しない料理を指します。仏教とともに中国から伝わり、平安時代にはお寺で食べられていました。仏教と深い関わりがある精進料理は、殺生や煩悩への刺激を避けるために、穀物や野菜といった植物性食品が使用されています。

お寺でお坊さんが食べている精進料理は、ゴマ豆腐やなすの田楽、油揚げと豆腐の味噌汁など、大豆製品を使用したものが定番です。

懐石料理

懐石料理は同じ読み方をする会席料理と混同されることが多いですが、二つは似て非なるもの。懐石料理がお茶を嗜む前に振る舞われるのに対し、会席料理はお酒を嗜む前に振る舞われます。また、懐石料理はお米や汁物が先に出されるのに対し、会席料理では最後に出されるなど、食事が出される順番やメニューに違いがあります。

かつての懐石料理は「一汁三菜」を基本として作られていましたが、現在は珍味・寿司・お椀・お造り・焼き物・炊き合わせなど、品数が豊富なことも多いようです。また、懐石料理では水菓子やアイスクリームなど、口の中がさっぱりするデザートが締めくくりとして出されることが一般的です。

お弁当

昔は故人の自宅でお斎がおこなわれ、遺族が料理を振る舞うことが一般的でした。しかし、時代とともに人々のライフスタイルも変化し、核家族も増え、お斎の料理を作る人や時間も足りないといったことも多いでしょう。
そんなときに便利なのが、専門業者による仕出し弁当です。お斎などの食事会用のお弁当は寿司や天ぷら、和え物といった和食が中心ですが、なかにはトンカツやヒレカツ、エビフライといった揚げ物が入ったものもあります。

法要の後にお斎をおこなわない場合は、お茶や菓子折り、カタログギフトといった返礼品と折詰弁当を用意しましょう。返礼品は、法事や法要に参加してくれた人に感謝を表す大切なものです。

手作りするという人も

お斎で振る舞う食事を手作りすることもあるでしょう。その場合は、精進料理を意識した献立がおすすめです。具体的には、おこわや筑前煮など、家庭で作りやすい日本料理が最適です。作り置きができたり、傷みにくかったりするメニューを選べば、調理する人の負担が少しは軽くなるかもしれません。

「お斎」でNGとされている食品

現在のお斎は、精進料理にこだわらないことが主流になりつつあります。そんな現在でもお斎に適さない食品はあります。適さないとされている食品やメニューを具体的に紹介します。

かつては肉や魚はNGだった

お斎という言葉は、仏教の「斎食(さいじき)」が由来とされています。斎食とは、正午などの決まった時間に食事をすることです。仏教要素の強いお斎は、本来は肉や魚はNGとされ、精進料理が振る舞われていたのです。

しかし、現在は肉や魚といった動物性食品がメインでなければOK、という考え方が主流になってきています。

伊勢海老や鯛などのお祝いメニュー

お斎の献立に対する意識が変わってきているとはいえ、弔事の食事という理由でタブー視されている食品や盛り付けがあります。まず、伊勢海老や鯛、鰹節といったお祝いごとに登場するような食材は、故人を偲ぶ食事会には適しません。

専門業者以外にお弁当を注文する場合や、レストランや料亭を予約する場合は食事会の目的を伝えると、これらの食材を避けてもらえます。

また、自宅でお斎の食事を手作りする場合は、お祝いごとに使用される紅白を連想させるメニューを用意したり、縁起物として有名な松竹梅を飾ったりすることも避けてください。地域によって、お斎のメニューに関する独自のルールがある可能性も考えられるため、心配なときは近所の事情通に相談すると良いかもしれません。

「お斎」のルールを理解しスムーズに食事会の準備をしよう

現在のお斎や精進落としは、食事処やお弁当を使うことが増えて、昔ほど準備が大変ではなくなってきました。とはいえ、全くマナーやルールがなくなったわけではありません。お斎の基礎知識を持っていれば、準備はもちろん、当日の会食をスムーズにおこなえるはずです。

法事の会食は、故人の思い出話で盛り上がったり、懐かしんだりする大切な場です。この場を通じて残された人たちの絆がより深まると良いですね。