過去帳の役割とは?記入方法や宗派による違いも解説

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過去帳の役割とは?記入方法や宗派による違いも解説
過去帳とは、先祖代々の名前や命日が記録された台帳のことです。目にする機会は少ないかもしれませんが、自分のルーツを知る手段として興味のある人もいることでしょう。この記事では、過去帳の役割と記入方法を宗派による違いも含めて解説します。購入する際のポイントについても紹介します。

過去帳の役割と歴史

仏壇に祀られている紙の束、それは過去帳かもしれません。どのようなものか、その役割と歴史から紹介します。

役割

先祖代々の名前と戒名、没年月日と死亡年齢などが記入された系譜を過去帳と呼びます。仏具の1つであり、主に次の3つの役割があります。
①覚書
命日や法要などで供養する人のことが書かれたページを開いて手を合わせる際に、覚書としての役割を果たします。
②家系図
過去帳の記載を辿ることで、先祖代々の歴史を知ることができます。自分のルーツを知る上でも重要な役割を果たし、家系図のような役割としても有用です。
③位牌のまとめ役
位牌の数が多くなって保管に困ったときは、三十三回忌・五十回忌などの法要のタイミングで、位牌に書かれた記録を過去帳に書き写します。これによって、仏壇を大きいものに買い替える必要がなくなります。過去帳は先祖の記録をたくさん残せて、位牌をまとめる役割も担っています。

位牌との違い

位牌、過去帳のどちらも、先祖の記録を残したり偲んだりするためものですが、両者には大きく異なる部分があります。位牌は故人の魂を移すものとすることに対して、過去帳は先祖の記録簿の意味合いが強いものです。とはいえ、過去帳は位牌に相当する大切な仏具であるため、単なる系譜書類ではありません。

歴史

「東大寺上院修中過去帳」の逸話にあるように、鎌倉時代には過去帳があったとされていますが、今のものとは少し意味合いが違うようです。過去帳は古くから寺院で保管されており、例えば、曹洞宗の各寺院で最古のものは江戸期前半から中期のものと公表されています。江戸時代の「檀家制度」によってお寺に所属する信徒の過去帳が多く作られ、戸籍のような役割を果たしました。そのため、江戸時代以降のものが多く残っていると考えられています。
寺院で保管している過去帳は、一部に差別的な歴史を残すものもあり、また、個人情報保護の観点から非公開のものが多いです。

過去帳を購入・記入する前に知っておきたいこと

過去帳を新調する際は、見台(けんだい)の同時購入をおすすめします。こちらでは、見台の役割とともに、過去帳を購入・記入する前に知っておくと役立つポイントを紹介します。

見台も併せて購入する

見台とは、過去帳をのせて開いておくための台のことです。固定しておくための押さえがあり、見やすい角度がつけられます。過去帳とセットになって販売されていることも少なくありません。
見台を購入する際は、過去帳に合ったサイズを選びます。過去帳よりも一回り小さめのものがバランスが良いとされています。見台の中には、黒と金で仕立てられた美しいものや、モダンなものも。部屋のデザインに合わせて選ぶのも一案です。

書く人に決まりはない

過去帳を書く人に関する決まりは特にありません。準備した人や、故人と親しかった人が書いても良いでしょう。ただし、過去帳にこれまで触れてこなかった場合は、いきなり書くのは難しいかもしれません。慣れていない人や記入に不安がある人は、お寺に記述を依頼する方法もあります。

自分が使いやすい筆記用具で記入する

過去帳へ記入する際は、墨と筆を用いるのが理想です。これは、長い年月が流れても墨で書かれた文字は残るため、後世に引き継がれる過去帳に適しているという理由からです。
墨と筆で書いたり準備したりするのが難しい場合は、普段使っているようなボールペンや鉛筆でも問題ありません。難しく考えず、自分が使いやすい筆記用具で記入をしてみてください。

過去帳の基本的な記入方法

過去帳は日付入りと日付なしの2種類があります。こちらでは、基本の記入方法を紹介します。

表紙

両者とも、表紙には「○○家過去帳」や「○○家先祖代々」と書くのが一般的です。苗字を書かず「過去帳」とだけ記しても差し支えありません。

中身

過去帳は、日付入りと日付なしで、記入する内容に若干の差があります。
<日付が入っているタイプ>
1ページに1日分、例えば、「七日」「十四日」「廿日(20日のこと)」などの日付が印刷されています。故人の命日と同じ日が書かれたページに「亡くなった年」と「月」「戒名」「俗名(生きていた時の名前)」「享年(亡くなった人の年齢)」を記入します。家庭ではこの日付入りを日めくりのように使って、月命日に手を合わせたり、法要の確認をしたりするのが一般的です。
<日付が書かれていないタイプ>
1ページ目から記入し、戒名、没年月日、俗名、享年に加えて「亡くなった日付」も記します。故人を享年順に書き綴ることができるため、家系の系譜や戸籍のように使えます。寺院などに残されているものは、ほとんどがこのタイプです。

書き方

いずれの仕様でも記入する際は、1行につき1人分を記載します。ただし、書くスペースが小さい場合は2~3行に分けて記入しても構いません。

また、世代が変わると数世代先の子孫にとって、先祖が誰なのか分からなくなってしまうこともあります。そういった事態を避けるためにも「〇〇の祖父」など、作成者から見た故人との続柄を書くと良いでしょう。

宗派による記入内容の違い

各宗派によっても、過去帳に記す内容が異なることがあります。中でも、浄土真宗は戒名ではなく法名を記すのが特徴です。こちらでは、主な宗派による記入内容の違いを紹介します。

浄土真宗

浄土真宗が戒名とは呼ばずに法名と呼ぶのは、教義に基づいて受戒を行わないためです。過去帳に記入する際は、法名の前に「釈号(しゃくごう)」と記します。
これまで男性は「釈〇〇」、女性は「釈尼〇〇」などと記されていました。しかし、現在は男女の区別がなく「釈〇〇」とされるため、それに従って記入してください。ちなみに、「釈」とはお釈迦様の弟子という意味。寺院への貢献度により、院号がつけられる場合は「××院釈〇〇」となるので、それと同様に記入します。

浄土宗・天台宗・日蓮宗

浄土宗では、戒名の前に誉号(よごう)がつきます。ちなみに、位牌には、戒名の前に『キリーク』という梵字(ぼんじ)も入れます。天台宗においては戒名の前に、大日如来(だいにちにょらい)をあらわす梵字、『ア』を入れることもあります。日蓮宗では、戒名の前に日号がつけられ、男性は「日〇〇」、女性は「妙〇〇」となります。

過去帳の保管方法と宗派ごとの扱い方

過去帳は後世に引き継ぐ大切なものです。そのためには、正しく保管することも知っておきたいもの。こちらでは、過去帳の保管方法と主な宗派ごとの扱い方について紹介します。

保管方法

過去帳は仏壇の引き出しの中に収納しておき、月命日などに見台へ飾ります。保管方法は宗派による違いはありません。仏壇に引き出しがない場合は、湿気が少ない場所で保管をします。過去帳は永続的に残すものなので、基本的に処分はしません。

宗派ごとの扱い方

日蓮宗の過去帳に記載されているのは、故人の情報だけではではありません。日蓮大聖人(にちれんだいしょうにん)や、歴代の御法主上人の命日が記載されています。それに加え、日蓮大聖人の法難(ほうなん)やお題目も併記されており、信徒は毎日の勤行の際に過去帳を使用するのが一般的です。
その他、浄土真宗では位牌に魂が宿るという考えがないため、位牌を祀る代わりに過去帳を仏壇に飾ります。

日々の供養をしやすくする過去帳

自分の先祖やルーツを知ることは、他の何ものにも代えがたい価値があります。過去帳の活用で故人や祖先の命日がわかりやすくなると、日々の供養もしやすくなるのではないでしょうか。先祖とのつながり、受け継がれてきた命の大切さを、後世に残していきたいですね。

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