半夏生は梅雨の終わり頃の季節名。風習や咲く花を解説

お葬式のマナー・基礎知識
半夏生は梅雨の終わり頃の季節名。風習や咲く花を解説
半夏生(はんげしょう)とは、季節の変わり目をあらわす夏の季語です。夏至から数えて11日目頃を指し、日付はその年によって変わります。古来より田植えの目安とされ、米農家たちはこの頃までに田植えを終わらせるのが習わしでした。本記事では、半夏生の時期や意味、風習、この季節に咲く花、そして、半夏生に食べると良いものなどを紹介します。

半夏生(はんげしょう)の時期とは

半夏生は7月の始めに来ますが、その日にちは、その年によって異なります。半夏生の日はどのように決められるのでしょうか。

太陽黄経(たいようこうけい)が100度になったとき

2021年の半夏生は7月2日です。ちなみに、昨年2020年は7月1日でした。
かつて半夏生は夏至から数えて11日目と決まっていました。しかし現在は、太陽黄経が100度になったときとされています。
太陽黄経とは、太陽が天球上を通る経路(黄道)を等角に分割した座標のこと。春分の日の元となる「春分点」を座標ゼロとして、360度に等分したものです。

半夏生の日にちは毎年必ずしも一定ではなく、今年と去年のように7月2日になることもあれば1日になることもあります。なぜ日にちが前後するのかというと、閏年があるためです。

1年は365日とされていますが、実際に地球が太陽の回りを回るのは365日5時間48分45~6秒。このずれを補正するため、4年に1度1年を366日として、閏年を入れるのです。1年の日数が変われば必然的に半夏生の日にちも前後します。

雑節(ざっせつ)の一つ

半夏生は「雑節」の7番目に当たります。雑節とは暦の種類のことで、季節の変わり目、気候の移り変わりの目安とされる暦日です。全部で9つあります。

二十四節気(にじゅうしせっき)や七十二候(しちじゅうにこう)と雑節とは、何が違うのか、と感じる人もいるかもしれません。しかし、二十四節気や七十二候が中国由来であるのに対し、雑節は日本で生まれ日本で親しまれてきたものです。日本の気候や風土にマッチしており、主に農業の目安として使われてきました。

半夏生は七十二候の1つにも数えられていますが、読み方が異なります。七十二候での読み方は「はんげしょうず」です。

梅雨の終盤に当たる

一般に、半夏生の時期は梅雨も終わりかけの頃。この時期は太平洋高気圧の勢力が徐々に強まって、日本の上空に温かく湿った空気が流れ込みます。これが大雨をよび、半夏生の時期は河川の氾濫や土砂崩れなどが起こることが少なくありません。そのため、半夏生の時期に降る大雨のことを「半夏雨(はんげあめ)」、これにより発生する洪水を「半夏水(はんげみず)」などと言う地域もあります。

半夏生の習わし・言い伝え

季節の変わり目である半夏生にはさまざまな習わしや忌むべきことがあります。いくつか紹介します。

半夏生までに田植えを終わらせる

半夏生を過ぎて田植えをすると、秋の収穫が減るという言い伝えがあります。そのため米農家の人々は半夏生までに田植えを終わらせ、それ以降田植えをしません。田植えは、まだ田植機のない時代の人々にとっては大変な作業だったと考えられます。

例えば香川県では、米と麦の二毛作がおこなわれていました。人々は半夏生までに手作業で麦を刈り終えて水田の準備をし、田植えを済ませなければなりません。田植えの期間がわずか10日程度のことも珍しくはなかったと言いますから、みな大忙しだったはずです。

物忌みの風習がある

半夏生の日は「天より毒気を下す日」とされています。人々は天から毒気が振ってくると信じて、井戸にふたをして防ぎました。またこの頃には地面が毒を含み、毒草が生えるなどとも言われます。そのため、タケノコやワラビといった地面から生えるものを口に入れてはいけませんし、種をまくことも好ましくないとされました。
半夏生の時期は湿気が多く、カビや雑菌が繁殖しやすい時期です。人々は「毒が降る」と言うことで水や食べ物に注意を促し、疫病を流行らせないようにしたのでしょう。この他、半夏生には「ハンゲという妖怪が出る」「竹の花を見ると死ぬので竹林に入らない」などの言い伝えもありました。これも「田植えで疲れた体をゆっくり休めるように」と促す先人の知恵であると考えられます。

半夏生の時期に咲く花

半夏生という呼称は植物の名前に由来するとされます。ここでは呼称の由来となった植物や、その他、同じく7月初旬に咲く花などを紹介します。

半夏生の由来になった花

半夏生の呼び名の由来には、2つの異なる植物が関連しています。「半夏(はんげ)」と「半夏生」です。
半夏とはサトイモ科の薬草です。漢名を「烏柄杓(からすびしゃく)」と言い、半夏生の頃に咲く姿が多く見られます。そのため、梅雨が明けそうなこの時期を「半夏が生える時期」すなわち半夏生と呼ぶようになったのではと考えられます。
一方、半夏生とは、花穂のそばの葉が半分白くなる特徴を持つ、ドクダミ科の多年草です。葉が白くなる様がまるで化粧をしたように見えたことから、「半化粧」と呼ばれました。やがて半“化粧”が転じて半“夏生”となり、「この花が咲く頃=半夏生」とするようになったと言われます。

その他の半夏生の頃に咲く花

半夏生の頃に咲く花としては、タチアオイやアジサイがあります。タチアオイは、ハイビスカスのような華やかな花を穂状に咲かせるのが特徴で、6~8月にかけて開花します。またアジサイは、日本が原産地の落葉低木です。色、形はさまざまで、100種類以上もの品種があると言われます。梅雨を代表する花の1つとして広く親しまれ、見頃は5~7月にかけてです。

半夏生に食べると良いとされるもの

半夏生に食べると良いと言われるのは、タコ、餅、焼き鯖(さば)、うどんなどです。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

タコ

「稲の根が地に根付くように」「タコの吸盤のように稲穂が大きく育つように」といった願いを込めて、古くから半夏生にはタコを食べる習わしがありました。しかし、広く全国的に普及したのは、昭和に入ってからのことだそうです。半夏生の時期のタコは「麦わらタコ」とも呼ばれ、特においしいと言われます。
とあるスーパーの担当者はこのタコを効果的に売ろうと、半夏生を「タコを食べる日」として販売促進をおこないました。そしてこれが思いもよらぬ大ヒット。タコは飛ぶように売れ、やがて全国的に「半夏生にタコ」が定着したそうです。

半夏生餅(はんげしょうもち、はげっしょもち)

これは、餅米と小麦粉で作った団子にきなこをまぶしたもの。主に大阪・南河内地方や奈良県で食されます。その昔、人々は田植え後にこの団子を作り、田の神様にお供えしました。そしてその年の豊作を祈り、田植えが無事終わったことに感謝しながら団子をいただいたのです。

なお、この団子は「あかねこ餅」とも呼ばれます。当時、団子の原材料だった小麦粉は白ではなく褐色をしていたそうです。赤く丸い団子が「ネコの丸い背中」に似ていることから、あかねこ餅として親しまれるようになったそうです。

半夏生鯖(はげっしょさば)

主に福井県大野市を中心とした奥越地方の習わしで、人々は半夏生に丸焼きの鯖を食べます。これは、その昔の大野藩主が始めたものであると言われます。藩主は田植えが終わった農民に、焼き鯖を食べて力を付けるよう推奨しました。これが現在まで伝わり、この地方では「半夏生には鯖」が定着したのです。鯖はスタミナが出る食べ物で、夏バテ防止には最適。暑い夏の到来に備え、人々は鯖で英気を養います。

うどん

こちらは主に香川県の習わしです。半夏生は、香川県では小麦の収穫時期でもありました。農家の人は収穫された小麦でうどんを打ち、手伝ってくれた人々に振る舞ったと言います。現在うどん県として知られる香川県では、「半夏生にうどん」が広く親しまれています。1980年には、香川県製麺事業協同組合が7月2日を「うどんの日」に認定。県内では無料でうどんを振る舞うなどのさまざまなイベントが開催されます。

梅雨から夏へ季節の移ろいを感じて

半夏生は、梅雨が終わり夏に向かう季節の節目です。不調を感じやすい時期なので、無理をせずゆったり過ごすのが良いでしょう。ときには昔の人の暮らしぶりに思いを馳せ、慣習に倣って過ごすのも良さそうです。この季節が大切な人の命日にあたる人は、仏壇に半夏生の花を飾ったり、夏の胃に優しい旬の食べ物をお供えして共に味わう日にしてもいいかもしれませんね。