心と体を癒すアニマルセラピー。QOL改善効果にも期待

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心と体を癒すアニマルセラピー。QOL改善効果にも期待
アニマルセラピーとは、犬などの動物と触れ合うことで心を癒す療法のこと。動物を連れたアニマルセラピストが病院や介護施設を訪問し、利用者との触れ合いをおこないます。そのほか、自宅にいるペットと触れ合うのもアニマルセラピーの一種です。この記事では、アニマルセラピーの内容や効果、適している主な動物を紹介します。

アニマルセラピーの基本情報

日本ではペットセラピーと呼ばれることもある、アニマルセラピー。どちらも、実は日本独自の言葉です。まずはアニマルセラピーの概要や歴史、施設で実施されるアニマルセラピーの内容とともに、アニマルセラピストの存在を紹介します。

アニマルセラピーとは

動物との触れ合いを通じ、心を癒したり生活の質(QOL)を向上させたりする療法を、アニマルセラピーと呼びます。病院や介護施設などで多く実施されていますが、自宅で飼っているペットと触れ合うこともアニマルセラピーの一環です。大切な人を亡くした、もしくは悲しい出来事があった人の心を、動物たちが癒してくれます。
また、動物と人間が長い付き合いであるのと同じく、アニマルセラピーの歴史も古いと言われています。古代ローマ時代には負傷した兵士のリハビリに、馬を用いたアニマルセラピーがおこなわれていたそうです。今現在、最も主流である犬を用いたアニマルセラピーは、20世紀半ばから本格的におこなわれるようになりました。

施設で実施されるアニマルセラピーの内容

アニマルセラピーは、人と動物の共同作業によって実現する、福祉活動の1つと捉えられています。老人ホームなどの介護施設で実施するときは、生活の質の向上や精神の安定を目的として、次のようなレクリエーションをおこないます。
<レクリエーションの例>
  • 動物と挨拶や会話をする
  • 動物の体に触れる・撫でる・抱っこをする
  • おもちゃやボールを投げ、持ってこさせる
  • 動物の名前を呼んで、自分の近くにこさせる
そのほか、動物にエサやおやつをあげたり、一緒に散歩をしたりすることもあります。

アニマルセラピストの存在

人と動物の架け橋になるのが、“アニマルセラピスト”と呼ばれる人たちです。動物に関する知識、動物の健康管理やお世話、訪問する施設でのコントロールなど、アニマルセラピストに求められるものは多岐にわたります。アニマルセラピーには動物はもちろんのこと、アニマルセラピストも欠かせない存在です。

心を癒すだけじゃない、アニマルセラピーの効果

アニマルセラピーは心だけでなく、体や社会性にも良い影響を与えてくれます。アニマルセラピーにどんな効果やメリットがあるのか、具体的に紹介します。

心への効果

好きな動物と触れ合うことで、心が満たされる感覚を持った経験のある人は多いはず。アニマルセラピーでは気分が落ち着くだけでなく、不安感やストレスが減少することが分かっています。それに加え、動物たちは会話や笑顔が増えるきっかけを与えてくれます。
また、ストレスは免疫力を低下させるだけでなく、精神的な病につながる厄介な存在です。最近では、動物に受け入れてもらうことで、自信や自尊心が回復するきっかけを作ろうと、アニマルセラピーを取り入れている精神科もあるようです。
ちなみに、人を失った悲しみを癒すことを“グリーフケア”と呼びます。大切な人を亡くし、喪失感に駆られている人も、動物と触れ合う中で心が癒えていくかもしれません。アニマルセラピー以外のグリーフケアについては下記記事をご確認ください。

体への効果

アニマルセラピーでは、気持ちに加えて体もリラックスできます。動物と触れ合うことで、体の感覚や反応の改善が見込めるほか、意欲が自然と向上することも。それにより、病気の回復が促される、または神経や筋肉組織のリハビリの手助けになることも見込めます。

認知機能、社会性への効果

動物に語りかけることで、言語機能などの認知機能の低下を予防できます。アニマルセラピーによって、身近な人や介護施設で働くスタッフとの意思疎通が、今よりもスムーズになる可能性が考えられます。
また、触れ合いを通じて協調性や人との会話への意欲を向上させ、その結果コミュニケーションを活発にさせる役割もあります。実際、病院や施設でアニマルセラピーをおこなったところ、医療従事者やスタッフと利用者との信頼関係が強くなった、という例もあります。
そのほか、アニマルセラピーが自主性や将来への希望をもたらし、身体的・経済的な自立につながることも考えられるでしょう。ペットを飼う=経済的に養うことは、一緒に生きていく張り合いにもなりそうです。

アニマルセラピーに向いている代表的な動物

ここでは、安全性と効果の両方を満たしている、アニマルセラピーに適した動物を紹介します。

人の心を癒す“セラピードッグ”がいるほど、犬はアニマルセラピーにおける定番の動物です。犬は一緒に運動ができる上、忠誠心と人への愛情が強いのでアニマルセラピーに向いています。
セラピードッグは病院や施設で活躍していますが、自宅で飼っている犬との触れ合いもアニマルセラピーの1つです。語りかける、抱きしめる、一緒にゆっくり散歩をするなど、愛犬との時間を今までよりも長くすることで、心身が少しずつ癒えていくでしょう。

人の膝の上に乗れるサイズ感で温もりを感じられる猫も、アニマルセラピーに適しています。しかし、抱っこはもちろん、触られる行為自体を嫌う猫もいます。また、警戒心が強いなど、品種によっても性格の特徴はさまざまです。
そのため、高い頻度での触れ合いを望む場合は、猫の品種や性格も考慮することをおすすめします。人懐っこく、甘えん坊な性格をしている猫なら触れ合いやすいため、アニマルセラピーで癒し効果を得やすいかもしれませんね。

アニマルセラピーと言えば犬や猫が一般的ですが、実は鳥を用いた“バードセラピー”なるものも存在します。鳥は手の上に乗せたり会話をしたりと、コミュニケーションをとりやすいだけでなく、部屋の広さに関係なく飼えるところも魅力的。なかでも、インコやブンチョウなどが飼いやすいとされます。
自宅で鳥を飼えない場合は、外へ出てバードウォッチングをしてみてはいかがでしょうか。直接触れ合うことは難しくても、スズメやキジバトなど、身近な存在の鳥を改めて見てみることで、鳴き声や体の特徴に何か新しい発見があるかもしれません。また、自然の中で四季の変化を感じることでも、心にも良い刺激を得られるでしょう。

アニマルセラピーは3種類

アニマルセラピストに必須資格はありませんが、関連資格は、NPO、社団法人、通信講座によるものなどいろいろな種類があります。

ここではNPO法人日本アニマルセラピスト協会の学習内容をみていきます。同協会によると、アニマルセラピーは、おこなわれる場所や目的などによって3つに分類されます。AAT(動物介在療法)、AAA(動物介在活動)、AAE(動物介在教育)です。それぞれの違いを簡単に紹介します。

AAT(動物介在療法)

「Animal Assisted Therapy」を略したAATは、人間に対する医療行為に付随する活動です。専門的な医療行為に該当するため、施設や自宅ではおこなえません。AATは、病院などの医療機関で、医師・看護士・作業療法士・心理療法士などの専門家の主導で実施されます。

AAA(動物介在活動)

「Animal Assisted Activity」を略したAAAは、人と動物が触れ合うことにより、気持ちの安定や生活の質の向上を図る活動です。ボランティアが動物を連れて介護施設や児童施設などを訪れ、触れ合いや芸の披露などをおこないます。アニマルセラピーと呼ばれる活動は、このAAAを指すことが一般的です。

AAE(動物介在教育)

「Animal Assisted Education」を略したAAEは、学校などの教育現場でおこなわれるもので、道徳的・精神的な成長を促すことを目的としています。子どもたちは動物との触れ合いを通じ、他人をいじめてはいけないこと、生き物に優しく接することの大切さ、命の尊さを学びます。

見て触れて癒されるアニマルセラピー

アニマルセラピーと聞くと、病院や施設でおこなわれるもの、というイメージがあるかもしれませんが、決してそんなことはありません。自宅にペットの犬や猫、鳥などがいれば大切にし、そっと触れたり、行動を見守ったりしてみてください。命の温かさ、寄り添ってくれる優しさを感じて、心の傷が少しずつ癒えていくはずです。