遺骨を祀る「後飾り祭壇」。設置場所と宗教別の飾り方とは

ご家族の通夜・葬式準備
遺骨を祀る「後飾り祭壇」。設置場所と宗教別の飾り方とは
後飾り祭壇(あとかざりさいだん)とは、一時的に遺骨を安置する飾り壇のことです。葬儀に使う、大きな祭壇ではなく、家庭に置ける50~60㎝程度のミニサイズです。火葬が終了してから四十九日の納骨まで遺骨を祀り、亡くなった人を偲びます。本記事では、祭壇の意味や置く場所、準備のタイミング、処分方法などを詳しく紹介します。

後飾り祭壇の概要

ここでは後飾り祭壇の概要や設置場所、タイミング、飾る期間について紹介します。それぞれに基本のマナーがありますので、一つずつ確認していきましょう。

後飾り祭壇とは

火葬を終えて故人が遺骨となって自宅に帰ったとき、一時的に安置する仮の祭壇のことを指します。遺族が冥福を祈る場所である他、通夜や葬儀に参列できなかった人が弔問に訪れた際に、お参りするための場所でもあります。自宅で枕飾りを設置した人は、その祭壇を再度使用するケースが多いです。
後飾り祭壇は各地域で呼び方が変わり、「自宅飾り」「後飾り」「後壇(あとだん)」などと呼ばれることも。仏教では、「中陰壇(ちゅういんだん)」が正式な名称とされています。

設置する場所

自宅に仏壇が設置してある場合は、仏壇の前や脇に後飾り祭壇を置きます。仏壇がないときは、室内の西側もしくは北側に置くのが一般的。どこに設置するか選ぶのが難しい場合は、「遺族がお参りしやすい」「弔問客を通しやすい」といったことを意識すると良いです。
太陽が直接当たる場所や、水道・排水口などがある湿度の高い場所は、遺骨が劣化することがあるので、後飾り祭壇の設置場所としてふさわしくありません。注意点も踏まえた上で、祭壇を置く場所を決めてくださいね。

設置するタイミング

遺骨が自宅に帰るまでの間に、後飾り祭壇の準備をおこないます。自宅葬の場合は、故人を納めた柩(ひつぎ)が火葬場に向けて出発した後に準備を開始。葬儀用の祭壇を移動させて掃除し、必要なものを設置してください。斎場で葬儀をする場合は、火葬場へ行かなかった遺族が自宅に戻り、後飾りを設置します。
自宅・斎場を問わず、葬儀社に頼んだときは後飾り祭壇がセットに含まれることが多いです。セットに含まれる場合、必要なことはスタッフがおこなうので、すべて任せて問題ありません。

飾る期間

後飾り祭壇は、埋葬や納骨を終えるまで飾るのが一般的です。ただし、期間は宗教によって異なります。仏式であれば四十九日、神式は五十日祭りまで。キリスト教式の場合、プロテスタントは召天記念日、カトリックは追悼ミサまで飾ります。もし仏壇が自宅になく、購入を検討している場合は、後飾り祭壇を飾る期間が終わるまでに準備するのがおすすめです。

【宗教別】後飾り祭壇の飾り方

信仰する宗教によって、後飾り祭壇の飾り方は異なります。こちらでは、仏式・神式・キリスト教式、それぞれの一般的な飾り方について紹介します。心配することなく飾るためのヒントにしてください。

仏式は白木の祭壇を飾る

2段か3段の木製の台、白木祭壇を使うのが通常です。白木ではない素材の祭壇を使う場合は、白い布をかぶせてください。宗派によって異なる場合がありますが、飾る方法に厳密な定めはありません。
一般的には、上段に遺影と遺骨、中段に白木位牌(仮位牌)、下段に香炉・ロウソク台・りん・花立て・お供え物を飾ります。ほとんどの場合、葬儀社の葬儀プランには後飾り祭壇に必要な仏具が含まれています。
また、宗派によって異なる面はありますが、この世とあの世を故人がさまようとされる忌明けまでは、線香をあげ、朝晩手を合わせて故人を供養することが大切です。

神式は八足の祭壇を飾る

仮霊舎(かりみたまや)と呼ばれる、白木で作られた八足の祭壇を使うのが神式の特徴です。八足の祭壇は、左右に4本ずつ脚があるものを指します。
神式では、葬儀が終了したことを神に知らせる儀式の「帰家祭(きかさい)」をおこないます。遺骨と遺影は祭壇の上段に配し、榊(さかき)と霊璽(れいじ)は中段に、そして、三方(さんぼう)に乗せた徳利、皿、玉串(たまぐし)などを下段に設置します。

キリスト教式は白布をかけたテーブルを飾る

キリスト教の人は自宅に祭壇があることが多く、その場合、新たに後飾り用として祭壇を用意する必要はありません。
オーソドックスな遺骨と遺影の飾り方としては、まず、設置しやすいサイズのテーブルに台を作り、白い布で覆います。十字架は上段、遺骨と遺影は中段、聖書や生花などは下段に設置。埋葬するまで、ろうそくを毎日灯します。

【宗教別】自宅飾りのお供え物の選び方

お供え物は、宗教ごとに変わります。仏教でも宗派によって違いがあるため、注意が必要です。ここでは、それぞれのお供え物について紹介します。

仏式は仏飯・水・お茶を毎日交換する

仏式の後飾り祭壇にお供えするものは、お茶、水、仏飯、フルーツ、お菓子、生花など。仏飯のご飯は炊きたてのものを毎日お供えします。飲み物も同様に毎日交換します。お供えしたフルーツやお菓子は、消費期限や賞味期限が切れる前に家族で食べます。生花は、枯れる前に取り替えるのが基本です。後飾り祭壇を常にきれいな状態にしていると、故人を大事に思い、供養する心が伝わるのではないでしょうか。
また浄土真宗では、亡くなった人はすぐに仏になると考えられているため、飲み物や仏飯は用いません。宗派を確認し、適切なお供え物を準備することが重要です。

神式はお供え物に関する厳格な決まりはない

飾り方と同じく、神式ではお供え物に関しても厳格に定められた規則はありません。洗米や水、お神酒、塩をお供えするのが基本です。もし他にお供え物を加えたい場合は、フルーツがおすすめ。故人が好きだったフルーツを選ぶと、きっと喜んでくれるはずです。

キリスト教式はパンを供えることがある

必ず守らなければならないお供え物の規則はありません。故人が好んで食べた、お菓子やフルーツなどをお供えする人が多いです。また、キリストの肉を象徴する、パンをお皿に乗せてお供えすることも。状況に合わせ、準備しやすいものにすると良いでしょう。

後飾り祭壇の処分方法・再利用方法

遺骨を祀るため一時的に用いられる後飾り祭壇は、埋葬や納骨などを終えたあとは処分します。ここでは、基本的な処分方法や再利用方法について紹介します。

処分方法

役割を全うした後飾り祭壇は、廃棄するのが通常です。居住地域の規則に沿って分別し、処分しても差し支えありません。しかし、廃棄することに対してためらいを感じる人は少なくないはず。不安があるときは、仏式なら菩提寺のお坊さん、神式は神主、キリスト教式は神父などから助言をもらってはいかがでしょうか。
つながりのある寺院などを持たないときは、回収してもらえるか葬儀社に問い合わせるのがおすすめです。

再利用方法

後飾り祭壇は、後飾り祭壇は、盆飾りや法要などで使える場合もあります。白い布や壇の前に置いた経机は、お盆でも使えるので取っておくと良いでしょう。
ただし、後飾り祭壇で使用する仏具に関しては、仏壇で使用するものとはサイズや色が異なる場合がほとんどです。そのため、仏壇での再利用はあまりしません。

白木位牌の扱い方

仏式の葬儀で使用された白木位牌は、本位牌ができあがるまで使う一時的なものです。本位牌との混合を避けるため、仮位牌と呼ばれることもあります。本位牌ができるまでの仮住まいとして、葬儀を終えた故人の魂は白木位牌に入るとされています。
忌明けの法要で、白木位牌から本位牌へと故人の魂を移す儀式をおこなうのが一般的な流れです。魂が移り終えた白木位牌は、お焚き上げをしてもらう必要があるので、あらかじめ菩提寺に相談してください。

しっかりと準備をした後飾り祭壇で故人を偲びましょう

後飾り祭壇は、亡くなった人があの世へ旅立つまでの時間を過ごし、遺族や弔問客が偲ぶ機会を得られる大切な場所です。それぞれの宗教や宗派の決まりやマナーに従い、準備をすることが大切です。いつか訪れるときのために知識を備えておけると良いですね。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。