故人や遺族の想いを込めた祭壇を。種類や選び方とは

ご家族の通夜・葬式準備
故人や遺族の想いを込めた祭壇を。種類や選び方とは
葬儀の場では、祭壇は故人を送る大切な場所となります。以前は葬儀社にデザインやレイアウトを任せる場合が多かった祭壇ですが、最近では葬儀の形式も増えて、故人の好みや遺族の想いを込めたものを選ぶようになっています。そのため、生花やキャンドルで飾られた祭壇など種類も豊富になりました。そこで今回は、祭壇のもつ意味や種類、選ぶときのポイントなどをご紹介します。

葬儀での祭壇の意味と選び方

葬儀の中心的な場所となる祭壇。まずは、祭壇の意味や選び方のポイントをみていきましょう。

祭壇とは

祭壇とは葬儀会場の正面に設けられている壇のことで、遺影や供え物を捧げて故人を供養する場所です。宗派によって祭壇の種類や大きさ、飾り方などに違いがあります。

以前は仏式の祭壇といえば白木祭壇が一般的でしたが、最近では家族葬や密葬など葬儀の形式も変化しています。白木以外の祭壇を選ぶケースが増え、祭壇の種類も増加。今ではたくさんの花に囲まれて故人を送る花祭壇などが人気を集めています。

祭壇を選ぶポイント

祭壇を選ぶポイントは大きく分けて2つあります。
葬儀の規模に合わせる
近年では家族葬など近親者のみで葬儀をおこなうケースが増えており、小規模の葬儀に大きすぎる祭壇ではバランスが取れません。逆に、参列者が多い場合はある程度の大きさの祭壇を選ぶと、人望のあった故人を偲ぶ葬儀となるでしょう。

参列者の数は祭壇の大きさを決める最大のポイントです。故人を弔う心を大切に、葬儀の規模に合った祭壇を選びましょう。
故人の好みに合わせる
遺影が置かれる祭壇は、故人そのものをあらわしているといえるでしょう。そのため、祭壇の周りを故人が好きだった花や果物で飾るなど、故人の人柄が伝わるような演出もよいのではないでしょうか。

葬儀社にプランナーがいる場合は、故人の人柄や趣味、思い出などを伝えると、それに合わせた祭壇を提案してくれます。

宗派に合わせた主な祭壇と飾り方

葬儀式や告別式で遺影や供え物、供花で飾られる祭壇は、宗派によっても種類が異なります。代表的な宗派の祭壇をご紹介していきます。

仏式祭壇

一部の宗派を除き、一般的な仏式での葬儀で使われているのが白木祭壇です。木のぬくもりと厳粛な印象を与える白木祭壇ですが、仏教要素が強いため、仏式の葬儀以外にはあまり使われません。

飾り方は宗派によっては異なる場合もありますが、祭壇の中央に遺影が飾られ、周りに白い生花を飾るのが一般的です。

神式祭壇

神式のお葬式でも仏式と同じ白木を使った祭壇が多いのですが、形が異なる八足の祭壇を使用します。神道でのお葬式は「神葬祭(しんそうさい)」といわれ「遺された家族を守ってください」と祈る意味があります。神道では、亡くなった後も御霊(みたま)は家にとどまり、遺族の守護神になるといわれているからです。

神式の祭壇には神道の三種の神器を飾ります。三種の神器とは、「八咫の鏡(やたのかがみ)」「草薙の刀(くさなぎのつるぎ)」「八尺瓊の勾玉(やさかにのまがたま)」で、祭壇の中央に鏡、五色旗の向かって左に剣、右に勾玉を吊るします。

キリスト教式祭壇

キリスト教の葬儀は教会でおこなわれるため、教会の祭壇に白いクロスを敷いて飾り付けをします。宗派によってきまりが異なるため、カトリックの場合は神父、プロテスタントの場合は牧師に相談しましょう。専用の斎場にはキリスト教式の祭壇が用意されています。

キリスト教式祭壇は一般的にシンプルな飾り付けで、両脇にろうそく、手前に棺、棺奥の中央に遺影を置いた後、周辺を白い生花で飾ります。

その他の祭壇の種類とは

家族葬や密葬など葬儀の形式が変わりゆく中で、葬儀の中心となる場所である祭壇も、故人らしさを重視して選ぶケースが増えています。ここでは、近年注目を集めている祭壇をいくつかみていきましょう。

花祭壇

造花や生花で飾った祭壇の総称。最近では白木祭壇と並ぶスタンダードな祭壇になっています。とくに生花を使った生花祭壇が人気で、宗教色がないためどんな宗派の方でも利用できるのがメリットのひとつです。

以前は菊の花が多く使われていましたが、現在は故人の好きだった花や季節の花など、さまざまな種類の花を使ったデザイン性の高い祭壇もつくられています。

キャンドル祭壇

無宗教の葬儀でよく見かけるキャンドル祭壇は、棺や遺影をキャンドルで包みこんだ祭壇。柔らかなキャンドルの灯りがつくる幻想的な空間が特徴です。

キャンドルは、その灯りで不浄を燃やして周囲を清め、故人を導くといわれています。故人との別れのセレモニーを厳かに演出してくれます。祭壇に組み込まれたキャンドルや、水に浮かべたキャンドルなど種類が豊富でさまざまなデザインが選べるのもポイントです。

オリジナル祭壇

今、注目度が高まっている祭壇です。故人の趣味や仕事をイメージしたり、好きな物を飾ったりと、故人に合わせてオリジナルで制作します。使われる素材もガラスや金属などさまざまで、自由度が高く、故人の人柄が偲ばれる祭壇をつくり上げることができます。

祭壇を制作する時間がかかるため、タイトなスケジュールの中でどのような祭壇にするのか検討する必要があります。また、1度きりの祭壇に予算をいくらかけるべきかも併せて考えておきましょう。

葬儀の後に飾る「後飾り祭壇(あとかざりさいだん)」とは

葬儀が終わった後、自宅につくられる祭壇を「後飾り祭壇」といいます。遺骨を埋葬するまでの間、弔問者がお参りできる場所です。

後飾り祭壇とは

後飾り祭壇は、葬儀が終わり自宅に戻った遺骨を安置するための祭壇。ろうそくを灯し、四十九日まで毎日線香をたいて故人の冥福を祈ります。

また、後飾り祭壇は遺影や供物が飾られ、自宅に弔問へ来た方にお参りしていただく場所です。一般的に四十九日法要を済ませると必要がなくなります。

後飾り祭壇はどの方角に置く?

自宅に仏壇がある場合、後飾り祭壇は仏壇の前や傍らに設置します。仏壇がない場合は、手を合わせる方角が北向きになるように、または西向きになるように設置するのが良いとされています。

その他、高温多湿となる場所や直射日光が当たる場所、水回りの近くは位牌や遺骨が劣化するため避けた方がよいでしょう。葬儀社を利用している場合は、プランによって後飾り祭壇の設置までおこなってくれます。

一般的な後飾り祭壇の飾り方

ここでは、後飾り祭壇の飾り方や注意点などをご紹介します。仏式・神式・キリスト教式と宗教によって飾り方が異なります。

仏式

一般的には白木で作られた2~3段の祭壇を使います。上段には、遺骨や遺影、中段に仮位牌(白木位牌)を飾ります。下段には、香炉・線香立て・ロウソク立て・花立て・鈴・鈴棒・茶器・仏飯器・焼香台を並べます。

お供え物は、仏飯・お水・お茶・お菓子・果物・お膳・生花が一般的とされています。浄土真宗では、仏膳や茶湯はお供えしません。これは、浄土には「八功徳水(はっくどくすい)」というお水があるとされているためです。

神式

白木で作られた八足の祭壇を使います。上段に遺骨や遺影、中段に霊璽(れいじ)や榊立(さかきたて)、下段に火立・三方(上に徳利・水玉・皿を置く)・玉串を飾ります。また、神式祭壇には仮霊舎(かりみたまや)の檀を設ける必要があります。

一般的なお供え物は、お神酒・お水・洗米・塩などですが、とくに決まりはありません。

キリスト教式

小さなテーブルに白い布を被せた台が祭壇です。上段に十字架、中段に遺影や遺骨、下段には花・ろうそく・聖書・パンを飾ります。祭壇に供える物にとくに決まりはありませんが、お菓子や果物など故人が好きだったものを選ぶとよいでしょう。

キリスト教信者の方であれば、すでに祭壇が家にあります。用意するのは遺影と遺骨のみです。

故人にふさわしい祭壇選びを

宗派や葬儀の規模、予算など祭壇を選ぶ条件はいろいろとあります。祭壇は大切な故人を送り出すためにも悔いのないよう慎重に選びたいものですね。

祭壇選びに迷ったときは、葬儀社に相談しましょう。どのような葬儀にしたいのか希望をしっかりと伝え、故人と遺族にとってふさわしい祭壇選びができるといいですね。