喪主をやりたくないときは辞退できる?喪主の決め方や対処法

ご家族の通夜・葬式準備
喪主をやりたくないときは辞退できる?喪主の決め方や対処法

この記事はこんな方におすすめです

喪主をやりたくないときの対処法を知りたい
喪主の決め方を知りたい
喪主をやりたくないときは、辞退しても問題はありません。ただし、故人と近しい親族から喪主の代理を選ぶといった配慮は必要です。そこで、本記事では喪主をやりたくない場合に役立つ情報を解説します。一般的な喪主の決め方や、どうしても喪主を務めなければならないときの対処法などを紹介するので、参考にしてみてください。

喪主をやりたくないときは断れるの?

喪主をやりたくない理由がある場合、断っても差し支えはありません。長男だったり、遺言書で指定されていたりしても辞退は可能です。
ただし、自分の代わりに誰かが喪主を務めることは考慮しなければなりません。また、代理人を立てることもできます。喪主は、葬儀社への支払いや香典返しなどでお金を扱うことが多いため、故人と近しい親族から代理人を選ぶと安心です。

喪主をやりたくないケース

喪主をやりたくないと感じる理由は人それぞれ。周りが納得する理由であれば、喪主を辞退しても理解を得られるでしょう。ここでは、喪主を拒否する主なケースについて紹介します。

故人との関係が悪化していたケース

葬儀は最後のお別れの場だからこそ、喪主と故人の関係は重要です。故人と絶縁していたり、仲が悪かったりした場合に、喪主をやりたくないと感じるのは仕方がないこと。故人との関係が悪化していた人が無理に喪主を務める必要はないでしょう。

心身の健康に不安があるケース

体調不良を理由に、喪主を辞退する事例もあります。喪主は、葬儀だけではなく法要も取り仕切る必要があり、葬儀社との打ち合わせや親戚への連絡、故人の死去に関わる手続きなど、やることは多種多様。病気や怪我などで体に不調があると、喪主を務めるのは困難です。
また、体調に問題がなくても心の問題を抱えている場合があります。うつ病やあがり症、対人恐怖症で挨拶や参列者への対応ができない状態だと、喪主を最後まで務めるのは難しいかもしれません。心身の病気は外から見ただけでは分からないこともあるため、きちんと説明することが大切です。

金銭的な余裕がないケース

葬儀に関連した費用の支払いは施主(せしゅ)が担います。施主は血縁関係になくても務めることが可能です。ただし施主は喪主が兼ねることが多くあります。お葬式は、会場費以外に参列者に振る舞う食事や僧侶に渡すお布施など、さまざまな面でお金がかかるものです。
そのため、金銭的な余裕がなく「葬儀費用をすべて支払えるか自信がない」という理由で喪主を辞退することがあります。また、海外や転勤先など葬儀をおこなう場所から遠いところに住んでいる場合は、移動時間や交通費が問題となり辞退するケースも少なくありません。

多忙で時間を取れないケース

葬儀社との打ち合わせや支払いなど喪主がやるべきことはたくさんあります。慣れない手続きも多く、想像以上に負担を感じることもあるでしょう。そのため、多忙で時間を取れず、喪主を辞退するケースも考えられます。

また、大切な人が旅立った直後は精神的に大きな打撃を受けている状態です。「喪主になることにより、ストレスがさらに増える」という懸念から断らざるを得ない場合もあります。

一般的な喪主の決め方

喪主の決め方にルールはありませんが、故人と近しい間柄にある家族や親族が務める場合がほとんど。しかし、誰が喪主になっても問題はなく、故人の気持ちや慣習を意識しながら最終的な判断を下します。ここでは、一般的な喪主の決め方について紹介します。

遺言書に従って決める

遺言書に喪主を務めてほしい人が示されている場合は、原則として故人の遺志に従います。ただし、遺言書に指定があっても、必ず喪主を務めなければならないわけでありません。本人が喪主を断りたいときや遺族が適任ではないと判断したときは、ほかの人が喪主を務めることもあります。

血縁関係を考慮して決める

遺言書に喪主に関する項目がない場合は、血縁関係を考慮して喪主を選びます。夫婦のどちらか一方が亡くなったときは、配偶者が喪主になるのが一般的。配偶者が喪主を務められない場合は、血縁関係の深い順で喪主を決めます。

【喪主を務める順番】

  • 配偶者
  • 長男・長女※
  • 次男以降の弟と次女以降の妹
  • 亡くなった人の両親
  • 亡くなった人の兄弟・姉妹
※地域性によっては、次男が故人と同姓の場合は長女よりも優先する場合も。また故人と同居していたかも喪主を決める要因になる場合があります
なお、配偶者が喪主を務めないときは男性が喪主になるイメージが強いですが、娘しかいない場合は長女が喪主を務めることになります。

血縁者に適任がいない場合は知人・友人から代表を決める

血縁関係に適任者がいなければ、故人の知人や友人が喪主を務めます。もしくは、故人が生前入っていた介護施設の代表者が喪主を務める場合も。故人と深い関わりのある知人がいなければ、葬儀社が喪主の役割をすることもあります。このようなケースでの呼び方は、喪主ではなく「世話人代表」や「知人代表」です。
近年は、身寄りがなく、喪主を務める知人・友人が見つからない事例も増えています。喪主なしの状態になったときは、自治体の主導で火葬のみおこなうのが基本。一定期間遺骨を保管した後、引き取り手が現れなかったら無縁塚で供養されます。

後継人的役割をほかの人に依頼する

喪主を担うのが困難なときは、ほかの人に後継人的役割を頼むのも1つの方法ですが、喪主を2人以上にする選択肢もあります。注意点として、複数の決定権者がいると想定外のトラブルを招く恐れがあります。どのような選択をするにしても、家族とよく話し合い、葬儀社へも相談しながら決めるのがおすすめです。

長男以外が喪主を務める場合の注意点

昔は家督を継ぐ長男が喪主を務める場合がほとんどでしたが、現代では長男以外が喪主を務めるケースも珍しくありません。しかし、長男以外が喪主を務める際には、気を付けるべきことがいくつかあります。そこで、ここでは主な注意点について紹介します。

家族や親族に相談し、同意を得る

長男以外が喪主を務めるときは、家族や親族の同意を得ておくと安心。喪主は遺族を代表する立場であるため、古来の風習を重視する親族がいる場合、同意を得ないままだと長男以外が喪主を務めることに反対する可能性があります。
親族に反対する人がいるときは、長男以外が喪主を務める理由を説明することが重要です。例えば「故人の遺言で長男以外が指定されていた」「故人の配偶者や長男からの推薦があった」など、親族が納得のいく説明をして理解を得ることが大切です。

葬儀費用の負担など、喪主の役割を明確にする

喪主の役割は多岐にわたるため、あらかじめ取り仕切る範囲を決めておく必要があります。喪主が葬儀費用を支払うのが一般的ですが、家族で分担したり、相続した遺産からまかなったりといった方法もあるので、検討してみてください。
葬儀内容についても、どの範囲まで喪主が決定権を持ち、主体となって動くのか、役割分担を事前に決めておくとスムーズです。特に、兄弟姉妹が多い場合や、葬儀規模が大きい場合は意見が分かれる可能性も考えられます。あらかじめ家族で話し合い、お互いの役割を確認しておくのがおすすめです。

【決定権ついて話し合っておきたいこと】

  • 故人を安置する場所の決定
  • 葬儀会場と費用の決定
  • 葬儀形式と宗教者の決定

【役割分担について話し合っておきたいこと】

  • 参列者の案内や人数把握
  • 喪服やお布施の袋など必要なものの準備
  • 葬儀費用とお布施の支払いや、お香典など葬儀関連のお金の管理
  • 会計係や受付係の依頼

どうしても喪主をやらなければならないときの対処法

たとえ喪主をやりたくなくても、そのときの状況によっては喪主を務めざるを得ない場合もあります。最後に、喪主をやらなければならないときの対処法を紹介します。

喪主の負担を軽減できる葬儀スタイルを選ぶ

家族葬や火葬式など、小規模な葬儀スタイルなら喪主の負担を軽減できます。家族葬は、家族や故人と近しかった人を中心に集めて少人数で営む場合が多いため、参列者への対応に手間をかける必要がありません。近しい人のみが集まっているからこそ、慣習に縛られることなく「喪主挨拶をなしにする」といった柔軟な対処も可能です。
火葬式は通夜や葬儀を省き、火葬のみをおこなうスタイル。儀式的なことはほぼできませんが、費用は最も抑えられます。

家族で喪主をサポートする

前述の通り、喪主を務めるのが難しいときは後見人的役割を依頼し、家族のサポートを受けるのも1つの手段です。兄弟姉妹などの家族同士で喪主の役割を分担することも可能ですが、お互いの認識の違いにより思わぬトラブルに発展するリスクがあります。
決定権者である喪主は1名とし、家族間で情報を共有しながら積極的にサポートを受けられる体制を作れば、滞りなく葬儀を進められるでしょう。

喪主を辞退する理由を明確にして、家族と話し合いながら対処しよう

故人との関係や心身の問題など、喪主をやりたくないと感じる理由は人によって変わります。喪主を辞退するのであれば、家族に理由を説明し、代わりの喪主を立てるといった対策が必要です。

時には辞退することで失うものもあります。嫌だからと安易に断って、葬儀が終わった後は仲良く好きに物申せるという訳にはいかないのが遺族の心情です。

家族とよく話し、納得のいく形で葬儀をおこなえるよう喪主について考えてみてはいかがでしょうか。

監修:1級葬祭ディレクター 安藤徹舟(あんどう てっしゅう)

接客から管理職まで葬儀社歴25年。「家族葬」の黎明期からお葬式の変遷を見てきた経験を活かし、新しい葬送サービスの開発を担当している。
【保有資格】1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定制度)