お盆とはどんな風習?|期間、過ごし方、タブーな行為など

法事・お墓
お盆とはどんな風習?|期間、過ごし方、タブーな行為など
日本に古くから伝わる風習のお盆。全国的には8月13日から16日におこなわれる先祖供養のための夏の恒例行事です。東京などの都市部では7月13日から16日になるなど、居住地域などによっても時期が異なります。この記事では、お盆の持つ本来の意味や過ごし方、お盆にまつわる疑問について紹介します。

2024年(令和6年)のお盆の時期

お盆は、地域によって時期や期間に違いが見られます。

全国的には8月15日を中日とし、8月13日(迎え火)から16日(送り火)にかけての4日間がお盆です。お店や会社のお盆休みはこの期間の3~4日程度を指すことが多いですが、土日などを含めて1週間程度の大型連休になることもあります。

2024年のお盆休みは、8月10日(土)~18日(日)の最長で9連休になりそうです。
一方、東京や神奈川の一部地域のお盆は、7月15日を中日とした7月13日から16日になります。これ以外にも、8月下旬から9月初旬をお盆とする地域や、沖縄のように旧暦の7月13日から15日の3日間までという期間の短いところもあります。

お盆の時期や期間が幾重にも分かれる理由は、明治5年に現行の太陽暦(グレゴリオ暦)が取り入られたことによるとされています。これまでの旧暦(太陰太陽暦)から、この新しい暦が定着するまでに、地域による浸透度の差が生じて、お盆の時期もそれぞれ違ってしまったと言われています。

日程の違いはあるにせよ、この間、お盆にちなんだ儀式は各地で行われています。

そもそも、お盆とは?

夏の連休としての意味合いが強いお盆。本来の意味は意外と周知されていません。ここでは、日本におけるお盆の持つ意味や起源について改めて確認しておきましょう。

亡くなった人の魂が現世に戻る期間

お盆は、正式には「盂蘭盆会(うらぼんえ)」と呼ばれます。亡くなられた方やご先祖様が、あの世と呼ばれる世界(浄土)からこの世(現世)に戻ってくる期間のことです。故人が生前を過ごした場所、主に自宅でお迎えして、再び戻っていくあの世での幸せ(=冥福)を祈る機会となっています。

お盆の起源

お盆の正式名称である「盂蘭盆会(うらぼんえ)」は、仏教の「盂蘭盆経(うらぼんきょう)」というお経に由来しているとされています。

盂蘭盆経の「盂蘭盆(うらぼん)」は、サンスクリット語の「ウラバンナ(逆さ吊り)」が起源。お釈迦様の弟子の一人、目連(もくれん)にまつわる言い伝えを表しているのです。

その言い伝えとは、亡き母が地獄で逆さ吊りの刑を受けていることを知った目連が、母親を救済する方法をお釈迦様から聞くというもの。お釈迦様の教えが「(旧暦)7月15日に供養する」というものだったことから、現在のお盆の風習が始まったとされています。

お盆の歴史

日本でのお盆(盂蘭盆会)の歴史は古く、『日本書紀』に書かれている606年(推古14年)7月15日の施斎が初出とされています。平安時代には両親や先祖への供養料として米、麦、大豆、昆布、瓜、茄子などの飲食をお寺に納めていましたことが記述されています。はじめは天皇や貴族、鎌倉時代からは武家社会のなかでも先祖や戦死者を悼むために営まれてきた仏教行事でしたが、江戸時代以降は民衆の間にも広まりました。

お盆の風習や過ごし方

亡くなった人やご先祖様を供養する期間とされるお盆。この世に戻ってくる魂を迎えるために、どのように過ごせばよいのでしょうか?

お盆の過ごし方

住む地域や信仰する宗派によって、お盆の過ごし方は変わってきます。一般的には、盆の入り(盆入り)である13日に迎え火を焚いてご先祖様をお迎えし、盆明けの16日に送り火を焚いてあの世へ再びお送りします。仏壇にお盆飾りをし、14、15日には、家族と同じ食事を3度お供えすることが多いようです。これを「仏膳」と呼び、専用のお椀とお皿などのセットがあります。

よくあるお盆の風習やイベント

お盆期間中は、ご先祖様を供養するために過ごします。法要はもちろん、お墓参りでお供え物をすることや、盆踊りで踊りを奉納することも、お盆のよくある風習です。

国の重要無形民俗文化財となっている長野県の「新野の盆踊り」、映画のモチーフにもなった富山県の「おわら風の盆」など、日本全国に一生に一度は見たい盆踊りや夏祭りがいくつもあります。

お盆に関して知っておきたいこと

お盆は地域によって時期も風習もさまざまとはいえ、全国に共通するような知っておきたいことがいくつかあります。ここでは、お盆についての理解がさらに深まる関連用語を解説します。

迎え火と送り火

家の門前などに掲げられる迎え火。オガラと呼ばれる皮をはいだ麻の茎を重ねて燃やし、火を焚きます。ご先祖様の魂が迷わず戻れるようにという願いを込め、13日の盆入りの夕刻から夜にかけて焚かれるものです。地域によっては、ご先祖様の墓前で行うこともあります。

それに対して送り火は、お盆を共に過ごしたご先祖様をあの世へ再び送り出すためのもの。こちらも実際に火を焚きます。盆中の15日から盆明けの16日にかけて行われることが多いようです。

迎え火と同じく門前や墓前で火を焚くことが多いですが、中には山で焚いたり、海や川に火をともした船を流したりといった、大がかりな方法もあります。全国的に有名な「京都五山の送り火」もその一つです。


盆提灯

盆提灯も、迎え火や送り火と同じように、ご先祖様の里帰りの目印のために用意されます。上から吊るして飾る「御所提灯」や、床置きして飾る「大内行灯(おおうちあんどん)」などがあります。宗派による違いなどは見られないので、仏壇前で使いやすいほうを選ぶといいでしょう。

盆提灯は2つのセットが多いですが、1つのみ飾ることも珍しくありません。また、飾られるのはご先祖様がこの世で過ごされる精霊棚もしくは仏壇の前が一般的です。

盆提灯には諸行無常を感じさせるタイプも多く、中には絵柄がくるくる回転して走馬灯を表現するものも。また、目印の役割があることから家紋をオーダーすることも珍しくありません。

お盆飾りとお供え

盆の入りを迎えたら、仏壇の前に「精霊棚」や「盆棚」をしつらえて、お供えをします。

お盆飾りとしてもっとも有名なのが、キュウリの馬とナスの牛です。爪楊枝や割りばしを足にして、馬や牛に見立てたキュウリやナスを飾ります。ご先祖様に早く帰ってきて欲しい願いを込めて精霊馬(しょうりょううま)、ゆっくりあの世に帰って欲しい願いを込めて精霊牛(しょうりょううし)、と呼ばれています。どちらもご先祖様がこの世とあの世を行き来するのに使う乗り物に見立てたものです。

お供えには、刻んだナスやキュウリと洗った米をハスの葉などに盛りつけた「水の子」、団子を積み上げる「お迎え団子」など、様々なものがあります。初物のフルーツや野菜、おそうめん、ご先祖様の好物を供えることも多いようです。

お盆の献立については、下記の記事をご覧ください。
『お盆の料理特集!レシピと美味しそうな写真のコツも伝授』

初盆・新盆

四十九日の忌明け後、初めて迎えるお盆を「初盆」もしくは「新盆(にいぼん)」と言います。節目として、普段のお盆よりも盛大に行われるのが一般的です。

初盆は亡くなられた方にとってはこの世へ戻る初めての機会。通常の盆の入りより1週間早く準備を進めます。新仏さまを迷わず確実にお迎えできるようにという願いを込めて、清浄や無垢を表す白提灯でお迎えする地域が多いようです。お迎えしたあとは、使用した白提灯を送り火として焚き上げることもあります。

初盆の過ごし方としては、僧侶を招いたり寺に参ったりして、法要を催すことも少なくありません。親族に連絡するなどの段取りが必要になることもあるので、早めに準備を整えることが必要です。

お盆にタブーな行為があるのは本当か?

お盆の期間中はやってはいけないことがあると聞いたことがあるかもしれません。単なるうわさなのか、本当にしてはいけないのか。お盆にしてはいけないことの真相を解明します。

お盆に水辺に行くのはいけないことか

「三途の川」に代表されるように、水辺は古くからあの世とこの世の通り道とされてきました。そのため、多くの霊魂がこの世に戻るお盆に水辺にいくと、霊に引っ張られるという言い伝えがあります。しかし、もちろんこれは迷信です。お盆中であっても、海やプールに出かけても問題ありません。
ただし、お盆の時期は、毒をもつクラゲが大量発生し、海の波が高くなり、台風も発生しやすくなります。水辺のトラブルに繋がりやすいことから危険を避けようと言い伝えられてきました。

むやみな殺生は避けるべきか

仏教では「不殺生戒」の期間とされています。不殺生、つまり生きているものを殺さないという考えです。先述の通り、水辺に行くのはかまいませんが、殺生を避けるという意味では、釣りをするのはやめたほうがいいかもしれません。

虫取りも生き物の命を大切にするという意味で避けた方が良いとされます。ちなみに虫取りについては、中国から九州地方ではお盆ごろに飛び始める赤トンボを盆トンボと呼びご先祖が乗って帰ってくるので、捕ってはいけないとも言われています。

お盆とは何かを正しく知ってご先祖様を迎えよう

お盆はお住まいの地域や宗派によって時期や風習が異なるため、「こうすればよい」と一概に言えるものではありません。しかし、先祖をお迎えする大切な風習ですので、基本的な知識や関連用語は日本人の教養として学んでおいて損はないでしょう。

また、最も大事なのはカタチにこだわることではなく、先祖や故人を大切に供養したいという気持ちです。日頃の感謝を表し温かく迎え入れることで、自分や家族にとってより良いお盆の過ごし方となるはずです。