お盆の送り火はいつする?地域での違いと迎え火のやり方も

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お盆の送り火はいつする?地域での違いと迎え火のやり方も

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送り火について詳しく知りたい
送り火は、お盆明けの夕刻5時~夜8時頃に焚きます。ご先祖様の魂があの世へ無事に帰れるようにとの願いを込めて玄関や庭に灯します。全国的に有名なものには、京都の五山の送り火があります。また、お盆の始まりには、迎え火を焚きます。この記事では、夏に欠かせない迎え火と送り火について詳しく紹介します。

お盆に欠かせない迎え火・送り火の意味

日本には、ご先祖様の魂が数日間この世に滞在する、お盆という風習があります。ここでは、お盆の意味と迎え火や送り火について解説します。

お盆とは

お盆はお彼岸と並んで古くから伝わる風習で、「盂蘭盆会(うらぼんえ)」が正式名称です。仏教行事の1つで、この時期にあの世から帰ってくるご先祖様を供養するためにおこなわれます。
ちなみに、居住地によってお盆の時期は異なります。全国的に8月13日から16日が多いですが、東京や神奈川など一部の地域では、7月13日からの4日間がお盆とされることも。初日にご先祖様の魂を受け入れ、中日に墓参りなどをし、最終日に魂をあの世へ送るのが一般的です。

起源や日程などを詳しく▶お盆とはどんな風習?

迎え火はご先祖様を迎えるもの

「ご先祖様の魂が迷わず家に帰ってきますように」という願いを込めて焚かれるのが、迎え火です。昔は、お墓などで灯した提灯の火を仏壇に移していました。
現在は、お墓や菩提寺(ぼだいじ)が遠い、または火を持ち帰るのが難しいといった時代背景から、迎え火は玄関先でオガラ(乾燥させた麻の茎)を普通の火で燃やして済ませることも珍しくありません。

送り火はご先祖様を見送るもの

あの世へ向かい、ご先祖様の魂が無事に旅立つのを祈って焚かれる火のことを、送り火と呼びます。仏壇の火を提灯に入れてお墓や菩提寺まで届け、お墓の前で火を消すのが本来の流れです。
迎え火と同様、現在は昔の風習通りにするのは難しいため、家の前でオガラを燃やして送り火とすることが増えています。時代の流れに合わせてご先祖様を迎え、見送る準備を整えると良いのではないでしょうか。

迎え火・送り火のやり方

マンションなどの共同住宅で迎え火・送り火をする場合は、まず管理規約を確認し、可能な場合でも他の住人に配慮する必要があります。ここでは、つつがなく迎え火・送り火をするために必要なもの、基本的なやり方について紹介します。

迎え火・送り火に必要なもの

素焼きの器の焙烙(ほうろく・ほうらく)と燃やす草のオガラ、この2つが迎え火や送り火に欠かせません。また、地域によってはオガラの代わりにカンバを使います。焙烙は仏壇店で購入可能です。オガラは麻の表面を取り除いた後に現れる芯、カンバは白樺の皮で、どちらもお盆時期のスーパーや花屋のほか、インターネット通販でも手に入れられます。
古くから、麻は清らかな植物と捉えられ、魔除けの働きがあるとされてきました。オガラに火を灯すことで、汚れのない空間を生むという願いが託されています。オガラが手に入らない場合は、代用品として松などを使うこともあります。

迎え火のやり方

居住地によって異なる場合がありますが、迎え火は7月13日、もしくは8月13日に焚くのが一般的。朝起きて、午前中のうちにお盆の飾りである精霊棚(しょうりょうだな)を置き、仏壇をきれいに整えたら午後にお墓参りへ出かけます。精霊棚は、家に戻ったご先祖様が滞在する棚です。お供え物をして、ご先祖様が心地良く過ごせるようにします。
そして夕方(5~6時頃)になったら、家の玄関先で焙烙に乗せたオガラに火をつけ、手を合わせます。火から出る煙が目印となり、ご先祖様の魂が迷わず家に戻れるとされているので、心を込めることが大切です。

送り火のやり方

送り火は7月16日、もしくは8月16日におこなうことが多いです。午前中のうちに精霊棚へお供え物をし、夕方暗くなってきたらご先祖様の魂を送るために迎え火と同じ場所でオガラを焚きます。
また、地域によっては灯篭(とうろう)流しや精霊流しといった伝統行事を送り火とする風習も。灯篭流しは、送り火以外に厄除の意味があるとされています。

マンションなど共同住宅でのやり方

近年はマンションなどの共同住宅で暮らす人が増え、昔のように迎え火や送り火をするのは難しい状況になりつつあります。管理規約で玄関先やベランダなどは火気厳禁とされていたり、ご近所を気遣ったりで火を使えないことがあるかもしれません。
火を焚く代わりには、提灯(ちょうちん)がおすすめです。提灯の光が、ご先祖様がやってくるための道標になるとされています。

地域による送り火の違い

古くから地域に伝わる行事としての送り火は、京都の大文字焼きや、長崎の精霊流しが特に有名です。ここでは、大文字焼きと精霊流しを紹介します。

京都の五山送り火

京都の五山送り火は、大文字焼きという呼び方で広く親しまれています。最初は東山如意ヶ嶽に大文字、続いて松ケ崎に妙・法、西賀茂に船山、大北山に左大文字、嵯峨に鳥居形と順番に火を灯します。夜8時頃からスタートし、点灯時間(燃えている時間)は約30分です。ただし、気象状況によって点灯・消火の時間は変わります。
大文字の送り火で、名前と病名を書いた護摩木を一緒に焚くと病が治る、と信じられています。ご先祖様の魂や家族の健康に対する願いを込めた護摩木は、点火資材として山上の弘法大師堂へ。大文字寺(浄土院)の住職などが般若心経を唱える中で、焚かれた火を親火に移し、送り火が灯されます。
イベント内容は、管轄エリアでの感染症拡大防止策などにより、縮小・変更になる可能性があります。お出かけの際には、イベント主催者のホームページなどでご確認ください。

長崎の精霊流し

火ではなく水を用いて、ご先祖様の魂を舟であの世へと送るのが、精霊流しです。長崎県が有名ですが、佐賀県佐賀市や熊本県熊本市、御船町などにも行事として根付いています。初盆のときには、故人の位牌と遺影を精霊船と名付けられた山車に乗せ、流し場まで運びます。
本来は、精霊船を海に流して故人を送る行事でしたが、近年は環境への配慮から実際に船を流すのは減少傾向に。また、長崎の精霊流しは爆竹を鳴らしたり、かけ声をあげたりと盛大に催されます。地域によっては静かに送り出すところもあるので、異なる風情を感じられるのが魅力と言えるでしょう。

五山の送り火同様、イベント内容の縮小・変更・中止になる可能性があります。参加したい人は事前確認をおすすめします。

宗派別:お盆と迎え火・送り火の違いと特徴

迎え火・送り火は、地域だけでなく宗派によっても違いがあり、「する派」と「しない派」で大きく二分できます。

浄土真宗

「亡くなった人は極楽浄土へ」という教えが浄土真宗にはあるので、この世に魂が戻るとは考えません。そのため、迎え火や送り火、精霊棚などの準備はしないのが基本。提灯を飾り、仏様とご先祖様に謝意を捧げるのが浄土真宗におけるお盆の習慣です。

その他の宗派

曹洞宗、臨済宗、真言宗など浄土真宗以外の主な宗派では、焙烙とオガラを用いて迎え火と送り火をします。

キュウリで作る馬(精霊馬)や、ナスで作る牛(精霊牛)などを飾り、ご先祖様の霊をお迎えします。お盆にこの夏に収穫した野菜を捧げることは、今年も無事に変りなく迎えられたことを子孫から先祖に報告する役割も持っています。

霊棚には、精霊馬以外に団子や素麺など、さまざまなお供え物を飾ることが多いです。地域や家庭によってお供え物が異なる場合があります。

お盆にぴったりな料理は下記の記事からお楽しみください。

迎え火・送り火は供養のための大切な儀式

お盆の終わりを告げる、送り火。夏の供養がきちんと終わった証でもあります。宗派や地域、供養の仕方などによって、お盆の過ごし方や準備する物はさまざまです。古くから伝わる習わしを調べておくほか、住んでいる場所や時代の変化に合わせて、柔軟に対応することも意識しておくと、準備がスムーズに進みます。ご先祖様を大切にする気持ちを込めて、迎え火・送り火をおこなってくださいね。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。