「『やっと死んだか』って思われたいんですよ」テリー伊藤さん【インタビュー後編】~日々摘花 第2回~

コラム
「『やっと死んだか』って思われたいんですよ」テリー伊藤さん【インタビュー後編】~日々摘花 第2回~
「日々摘花(ひびてきか)」は、様々な分野の第一線で活躍する方々に、大切な人との別れやその後の日々について、自らの体験に基づいたヒントを頂く特別インタビュー企画です。

本編は、第2回のゲスト、演出家・テリー伊藤さんの後編です。
前編では、テリーさんを見守り続けたお母様との大切な思い出と、そのお母様との別れを経て得た、人生の指針についてうかがいました。後編では、テリーさん独自の死生観に迫ります。

最期の日を自分で決めてもいいと、アメリカンインディアンの言葉から学んだ

ーーテリーさんはご自身の「最期」について、何かイメージをお持ちですか?

テリーさん:僕ね、死ぬ日を決めているんですよ。102歳で死ぬの。あれ? みんな、決めてないの?

ーー私は決めてないです(笑)。

テリーさん:決めた方がいいですよ。人間って、「死」以外は全部自分で決めているんですよね。どこの学校に入って、誰と結婚して、どこに住むかって。もちろん、思い通りにいかないこともありますけど、最終的には自分で決めている。それなのに、「死」だけは自分で決めていません。いつ来るかわからないから、死が怖いんです。

でも、僕は102歳で死ぬって決めているから、その怖さがありません。もし、102歳より前に死んだとしても、それは「旅の途中」なんですよ。「死」に対しては、そういう解釈をしているんです。

ーーそう考えるようになったきっかけは?

テリーさん:30年ほど前に読んだ本で、アメリカン・インディアンの古い詩にある「今日は、死ぬにはいい日だ」という言葉を知り、「すごいな」と思ったんです。彼らは死を当たり前のものとして受け入れていて、死より自分の方が優位に立っている。「あ、そうか。死ぬ日を自分で決めてもいいんだ」と合点がいって、「俺も、決めよ」となったんです。あとね、僕には「たかが死」という思いもあるんですよ。

みんな、自分たちで「死」というものを不幸にしている

ーー「たかが死」、ですか。

テリーさん:「死」って何だか、劇的なことのようなイメージがあるじゃない? 僕も若いころはそうでした。でも、おふくろを亡くしたときにわかったんです。「死」って日常の延長にやってくるんだなって。

実家は狭い敷地に建てた3階建てで、階段が急だったんですね。その階段をのぼるときに、おふくろが途中で止まって、息苦しそうにしていたことがあるんです。それから間もなく、「ちょっと病院行ってくるわ」といつもと変わらない感じで家を出たまま入院しました。その時点では、母も僕たちも1週間くらいで退院するんだろうと思っていたから、見舞いに行っても、他愛のない話しかせず、いつも通りに過ごしていたんですよ。ところが、ある日急変して、あっという間に亡くなってしまいました。

あまりにあっけなくて、若気の至りで、お医者さんに「なんで助けられなかったんだ!」と憤りをぶつけました。その一方で、「そうなんだな」と感じたのは、「死」って特別なことではないんだなと。だから、「孤独死」という言葉も、僕は嫌いなんです。

ーー高齢者の「孤独死」は、よく新聞やテレビで取り上げられますね。

テリーさん: その背景にあるさまざまな社会問題を取り上げるのはいいんだけど、「孤独死は悲しく、不幸なもの」という論調に違和感があります。だって、孤独じゃない死なんてないですよね。例え、10人の家族に見守られて最期を迎えたとしても、死ぬときはひとり。孤独以外の何物でもありません。

第一、「孤独死」を不幸だと感じるかどうかは人それぞれですよ。もちろん、誰かに看取られて死にたいという人もいますが、ひとりでひっそりと最期の瞬間を迎えたいという人もいるはずです。それなのに、ひとりで亡くなった人を「不幸」と決めつけるのは、ちょっと違うんじゃないかと思うんです。

「死」は特別なことじゃないし、ひとりで死ぬというのも、当たり前のこと。そう考えると、僕には「死」がそんなに重要なことだとは思えません。みんなはなぜ自分たちで「死」というものを不幸にしているのかなあと不思議なんですよ。

「寿命102歳」なら、残り32年。手堅く生きていたら、つまらない

ーーテリーさんにとって、「死」よりも重要なことというのは何でしょうか。

テリーさん:生きる姿勢、じゃないですか? 最期をどう迎えるかよりも、それまでの何十年間をどう生きたかの方がよほど重要だと思います。

ーー「死」を怖れて縮こまらないで、最後の最後まで全力で生きるということでしょうか。

テリーさん:そう! 僕は自分が死んだ時に、周りから「やっと死んだか」と思われたいんですよ。僕は1947年生まれでの「団塊の世代」だけど、同世代の姿を見ていて思うのは、みんな欲深いなと。時代に恵まれてそこそこ幸せな現役時代を送っておきながら、「幸せな老後を送るには?」なんて言ってる。この期に及んで、まだ幸せになろうとしているんです。

ーーぜひ幸せになっていただきたい気もしますが…。

テリーさん:幸せって一見いいようだけど、この歳になって幸せでいようとすると、保身に走りがちなんです。スケールが小さくなって、手堅くなってしまう。僕は今70歳だから、102歳まで生きるんですよ。残り32年、手堅く生きていたら、つまらないじゃないですか。

ーー確かにそうですね。テリーさんは2017年から大学院で心理学を学ばれたり、昨年は「YouTubeチャンネル」を始めたりと「手堅さ」とは無縁な気がしますが、今後さらに挑戦してみたいことはありますか?

テリーさん:世の中に発信し続けたいですね。ジャンルや場所は何でもいいんです。ずっと発信し続けて、「あいつ、まだこんなことをやってるんだ」と言われたいですね。
ーー最後に、読者の皆さんに何かお言葉を!

テリーさん:「お言葉」なんてそんな大層なものじゃないけど、「明日晴れます」 かな。なんか、いいでしょう? 「明日、晴れます」って。

〜EPISODE:癒しの隣に~

沈んだ気持ちを救ってくれた本・映画・音楽などはありますか?
気分が乗らないときは、体を動かしています。以前は走っていましたが、最近は膝が痛いから、朝5時くらいから散歩ですね。万歩計で1万歩くらい歩いて、帰ってシャワーを浴びたら、たいていスッキリしてる。映画や本もいいけど、頭を使っちゃうからね。悩んだときは、体を動かすのが一番ですよ。

テリーさんの散歩コース

鎌倉市の七里ガ浜海岸駐車場。駐車場内にはハワイアンプレートランチをコンセプトにしたカフェ「Pacific DRIVE-IN」がある。駐車場から海岸に降りることができ、江ノ島や富士山も見渡せる。

Pacific DRIVE-IN 七里ヶ浜

2015年春、鎌倉七里ガ浜に誕生した、ハワイアンプレートランチをコンセプトにしたドライブインカフェ。ハワイ、カフクの名物「ガーリッックシュリンププレート」をはじめ、豚肉とキャベツと炒めた「カルアピッグ&キャベッジプレート」や、オリジナルのグレービーソースをかけた「ロコモコボウル」などが味わえる。
SHOP PROFILE
ADDRESS:神奈川県鎌倉市七里ガ浜東2-1-12
ACCESS:江ノ電 七里ヶ浜駅徒歩3分
TEL:0467-32-9777(※電話予約不可)
URL:https://pdistores.stores.jp/

・プロフィール

演出家・テリー伊藤さん

【誕生日】1947年12月27日
【経歴】東京都・築地で生まれ育つ。「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」「ねるとん紅鯨団」「浅草橋ヤング洋品店」などのテレビ番組の企画・総合演出を担当し、注目を集める。現在は演出業のほか、プロデューサー、タレントとしてマルチに活躍している。
【趣味】自他ともに認める「車好き」。YouTube公式チャンネル『テリー伊藤のお笑いバックドロップ』  では、車両本体価格30万円の魅力的な中古車を求めて全国をめぐる「30万円車探しの旅」など車に関する企画も多い。
【そのほか】2017年9月より慶應義塾大学院政策・メディア研究科在籍。心理学を学んでいる。

・Information

著書も多いテリー伊藤さん。2020年7月17日に発売された書籍「老後論 この期に及んでまだ幸せになりたいか」(竹書房)では、「男は『乙女力』の花を咲かせよ」「リタイア後に人生をリセットするな」など独自の視点で老後の生き方について語られている。歳を重ねるのが楽しくなる一冊。
(取材・文/泉 彩子  写真/刑部 友康)