無縁仏を増やさないための対処法とは?現状や供養方法も解説

お葬式のマナー・基礎知識
無縁仏を増やさないための対処法とは?現状や供養方法も解説
家族のカタチが多様化する今、弔ってくれる家族のいない無縁仏の数が増えているといわれています。でも、無縁仏は、なぜ避けるべきだとされているのでしょうか?この記事では、無縁仏になる理由や、無縁仏にならない・増やさないための対処法といった情報をお伝えします。

無縁仏とは?

一度は耳にしたことがある人も多い「無縁仏」という言葉。ですが、実際にはどのような意味や由来があるのでしょうか。

まずは、無縁仏とはどういったものなのか、わかりやすくお伝えします。

仏様と縁を結べなかった霊魂を供養するもの

仏教では、供養されない霊魂は仏様と縁を結ぶことができず、空腹を抱えたままさまよい続けるとされています。このように、仏様との縁がなく、さまよえる霊魂のことを「無縁仏」と言います。

元の意味から転じて、現在は身寄りがなく弔われることのない仏像や石仏、墓石、位牌なども、無縁仏と呼ぶようになっています。

無縁仏になる理由

死後はお墓に入り、子孫に弔ってもらう。このカタチが崩れると、無縁仏が生じやすくなります。その背景にはいろいろな事情がありそうです。無縁仏が増えている理由をみていきます。

お墓を継ぐ人がいない

お墓は、親から子どもへ、先祖代々受け継がれていくもの。

しかし、現代は家族のカタチが多様化して、お墓を守り伝えるという考え方が薄れつつあります。さらに生涯未婚率の上昇から、お墓を継いでほしいと思っていても、人手がないという現実的な問題もあります。お住まいの地域からお墓までが離れているため、管理するのが難しい場合もあるでしょう。

このように、お墓はあっても継ぐ人がいないときには、無縁仏になってしまいます。

故人に身寄りがない

配偶者も子どももおらず、付き合いのある親戚もいないなど、身寄りのない人も無縁仏になりやすいです。

身寄りのない人が孤独死してしまうと、遺骨を引き取る人がいません。普段の付き合いのない親戚では、遺骨の引き取りを拒否することも珍しくないようです。

このように引き取り手のない遺骨は、無縁仏として埋葬されることとなります。

お墓の管理料が支払われていない

近年、無縁仏を増加させる原因としてもっとも多いとされるのが、お墓の管理料の未払いです。

お墓を維持する寺院や霊園には、一定の管理料を収めるのが一般的です。しかし、遠方に住んでいる、お墓を守る意識が薄れている、といった理由から、管理料を支払わない・払えない人が少なからずいます。

管理料の支払いが滞ると、墓地の管理者からお墓を維持する意思がないとみなされ、場合によっては無縁仏に移されてしまいます。

実際に無縁仏に移されるまでには、官報や墓地での掲示による1年以上の通知が法律で義務づけられています。ですので、管理料の未払いが発生したとたんにいきなり無縁仏になることはありません。しかし、墓地の管理者に連絡を取らないまま一定期間未払いを続ければ、無縁仏になる可能性が高まります。

管理料の未払いは社会的に無責感のある行為とはいえません。できる限り墓じまいなどの対策をとることをおすすめします。

自ら望んで無縁仏になるのは難しい

仏様と縁を結べない霊魂とされる無縁仏。「できることならなりたくない」と思うのが自然な感情でしょう。しかし最近は、お墓に意味を見だせない人も少なからずいるようで、自ら無縁仏を望むケースも見られます。

しかし、無縁仏は「供養してくれる人が誰もいない」ことが条件。身寄りがいれば、当然ながら無縁仏にはなれません。身寄りがないと思っていても、自分も把握していない遠い親戚がいることも。このときもやはり無縁仏にはなれないのです。

無縁仏たる条件を満たしているかどうかは、亡くなったあとに確定されます。

無縁仏にかかる費用

お墓を維持・管理していくには、定期的なお手入れや法要をはじめ、それなりの費用もかかります。お墓を持たず供養する人もいない無縁仏の場合、維持や管理はどうなっているのでしょうか。

無縁仏の維持・管理についてご説明します。

行政や委託業者が管理する

供養や法要をはじめとする無縁仏の維持・管理は、行政から委託された寺院や霊園が行うこととなります。しかし、かかる費用はすべて行政の負担。つまり、税金から賄われます。

誰からも弔われない無縁仏を救うのはまっとうな行為です。しかし、身寄りがいるのに無縁仏になる状況もあります。きちんと対処している人にとっては、不公平に思ったり、無責任に感じたりすることでしょう。すべての費用を担う行政にとっても、無縁仏の増加は頭の痛い問題です。社会や次の世代に投げ出さないように考えたいものです。

無縁仏の多くは合祀墓に移される

無縁仏になられたご遺骨は、他の多くの遺骨とともに供養されます。無縁墓、無縁塚、供養塔といった施設に合祀されることが一般的です。

受け継ぐ人のいなくなったお墓が無縁仏になる場合は、遺骨を取り出して合祀(ごうし)されます。使わなくなった墓石は撤去され、新たな墓地として提供されることとなります。

無縁仏は遺骨を個別に管理されることがほとんどありません。そのため、万が一無縁仏として合祀されたあとに引き取り手が現れたとしても、再び一般のお墓に移すのは困難です。

無縁仏にならない・増やさないための対処法

近年はお墓を持たず、「散骨」や「樹木葬」による供養を希望する人が増えています。しかし、亡くなったら先祖代々のお墓に入り、生前と変わらず大切に思われ続けたいと感じる人も多いでしょう。無縁仏になる可能性は誰にとってもゼロではありませんが、生前の心がけでその可能性を限りなくゼロに近づけることはできます。

最後に、無縁仏にならないために心がけておきたいことをみていきます。

生前にお墓の準備を済ませておく

次の世代に面倒をかけるような無縁仏にはなりたくないと思っていても、身寄りがない、お墓を継承する人がいないといった問題は、自分で解決しにくいですよね。そんなときには、生前のうちに自分の手でお墓の準備を進めておきましょう。

管理不要の合祀墓を申込んでおく、永代供養を掲げる墓地と契約しておくなど、亡くなったあとの心配が不要なお墓を選ぶことは可能です。

お墓はあるものの受け継ぐ人がいないという場合には、墓じまいを済ませておくことも大切です。将来的に無縁仏が生じるリスクを避けることにつながります。

周囲とコミュニケーションを取っておく

遺骨の受け取りやお墓の維持・管理には手間とお金がかかります。お墓を持っていても、いくら友達が多くても、親戚縁者から遺骨の受け取りを拒否されると無縁仏になる可能性は否定できません。特に普段から関わりのない相手にとっては、心理的に負担が大きいでしょう。

無縁仏にならないために何より大切なのは、日ごろから周囲とコミュニケーションを取っておくこと。特に親戚がいるなら、定期的にコンタクトを取っておくことが大切です。

もし頼れる身寄りがないなら、葬式やお墓の契約を生前のうちに行っていくのもおすすめ。専門業者なら最適な方法をアドバイスしてくれるはずです。また、親しい友人がいるなら、死後事務委任契約を結ぶこともご検討ください。血縁のない相手にも埋葬にかかる手続きを依頼できます。

無縁仏にならないために、身じまいについて考えておこう

これから先、無縁仏はますます増えることが予想されます。次の世代に負担をかけないためにも亡くなったあとのことまで、責任を持って準備しておきたいところです。

何よりも大切なのは、無縁仏にならないために周囲とのコミュニケーションを心がけることです。死後のことを話すのはためらわれるかもしれませんが、今は「終活」という言葉がよく聞かれる時代です。家族や親戚だけに限らず、友人や専門家にもお願いして、生前から身じまいについてしっかりとお考えください。