神社にある「手水舎」の読み方とは?正しい作法で身を清めてから参拝を

お葬式のマナー・基礎知識
神社にある「手水舎」の読み方とは?正しい作法で身を清めてから参拝を
「手水舎(てみずや)」とは、神社で参拝者が身と心を清める場所のことです。よく目にする場所ですが、その名称の手水舎の読み方や意味を尋ねられると困る人も多いかもしれません。この記事では、手水舎の基本的な知識と正しい作法、神道の祭式における儀式・手水の儀について解説します。

手水舎の基本情報

「手水舎」には、読み方が複数あります。まずは読み方や意味に加え、手水舎の起源を紹介します。

手水舎の概要

神社を参拝する際には手や口を清める風習があり、これを手水(てみず、または、ちょうず)と呼びます。手水舎は、手水をおこなう建物のことです。中央の部分に水をたたえた桶の「水盤」が設けられ、柄杓が置かれています。神社・寺院の入り口、参道、社殿の脇に設置されていることが多いです。

龍の口から水が流れ出る手水舎は、龍が水を司る神様として崇められていたことが由来とされています。龍以外に、ウサギや亀のモチーフが使われていることもあります。手水舎に取り入れられたモチーフにより、神社の特色を伺い知ることができます。

手水舎のさまざまな読み方

「手水舎」の読み方はさまざまです。神社本庁は「てみずや」、大國魂神社は「てみずしゃ」と呼びますし、「ちょうずや」「ちょうずしゃ」と呼ぶところもあります。

また、手水舎は「水盤舎(すいばんしゃ)」や「御水屋(おみずや)」と呼ばれることも。場所や地域によっては表記の仕方が変わることもあります。

手水の歴史と手水舎の誕生

昔、神社の参拝前には川で清めをおこなう「禊(みそぎ)」という儀礼が風習化されていました。しかし、すべての神社の近くに川があるわけではありません。また、時代の変化により川で体を清めること自体が困難になりました。

そのため、清める作法(手水)をおこなうことを目的とした建物を作り、手水舎と呼ぶようになりました。手水舎は「禊」を簡略化し、現代に合わせた形にしたものであると言えます。起源を知ると、手水舎での清めが大切で、簡略化されてありがたいことだと思えるのではないでしょうか。

手水舎での作法と正しい順番

ここでは手水の基本的な作法と注意点を紹介します。

1.心を落ち着かせる

心身を清めることが、手水の主な目的です。そのためには、心の平静を保つことが大切です。まずは鳥居の前で一礼をし、神様に挨拶をします。その後、手水舎に着いたら手水の前に心を落ち着かせてください。邪念を払い、落ち着いた気持ちになれたら軽く一礼をします。

2.右手で柄杓を持って左手を清める

作法では、柄杓(ひしゃく)を持つ手が決められています。まずは右手で柄杓を持ち、水をくみます。そのまま左手に水をかけて清めます。

柄杓には、たっぷりと満杯になる程度まで水を入れてください。柄杓の水はこの後も使うため、すべてを左手にかけないように注意が必要です。3割くらいの量を目安に使うようにします。

3.左手で柄杓を持って右手を清める

続いて、柄杓を左手に持ち替えます。このとき、水をこぼさないように注意してください。持ち替えたら、左手と同様に3割くらいの水を使って右手を清めます。

4.右手で柄杓を持って口を清める

両手を清めたら柄杓を右手に持ち替えます。左手に水を注ぎ、口をすすいでください。衛生面が気になる場合は口を漱ぐ真似をします。この時、柄杓の水は、少し残しておくのがポイントです。

5.両手で柄杓を持って持ち手部分を清める

口と両手を清めたら、使用した柄杓の柄を清めます。両手で立てるように持ち、柄杓の中に残っていた水を持ち手部分に流してください。このとき、勢いよく柄杓を立てると衣服が水で濡れる場合があります。

なるべくゆっくり立てて、水しぶきを立てないようにするのがコツです。清め終わったら柄杓を元の場所に戻し、軽く一礼をしてから離れます。

手水舎でのマナーと注意点

清めの儀式をおこなう際には、さまざまなマナーがあります。こちらでは、知っておきたいマナーや注意点、手水舎がないときの対処法を紹介します。

口を清めるとき

口を清めるときに、柄杓に直接口をつける人がいます。しかし、これはマナー違反です。他人が口をつけた柄杓を使うのは、決して気持ちが良いものではありません。衛生的にも良くないので、必ず手に水を注いで口を清めてください。

また、口に含んだ水を水盤に戻すのもNGです。水盤は多くの人が使用するため、唾液などが含まれた水を戻すのは不衛生です。排水溝や、水盤の外側に出すようにします。

手水が終わった後

手水の後にハンカチなどで手を拭くか否かは、人それぞれ考え方が異なります。衛生面や、濡れた手で神社のものを触って汚さないようにするという意味で、拭いた方が良い場合があります。はっきりと「ハンカチNG」とされていない限りは、手を拭きましょう。

手水を終えたら、髪や顔など余計な部分を触らないようにすることも大切です。せっかく清めた手が再び汚れてしまいます。また、トイレに行った場合は改めて手水舎で清めると良いです。

手水舎がない場合

神社によっては手水舎がないこともあります。その場合は何もせず参拝しても問題ありません。しかし、さまざまなやり方で心身を清められるので、以下の方法を取り入れてみるのもおすすめです。

例えば、草手水や花手水なら手水舎がなくても心身を清められます。草手水は青草、花手水は榊の葉で手を拭うのが基本です。また、雪が積もっている場合は、手で揉み砕いてみてください。これで、雪手水と呼ばれるお清めができます。

その他に、ペットボトルや水筒に入っている水を利用しても大丈夫です。ウェットティッシュを持っていれば、それで手を拭く方法もあります。柔軟に考えながら、心身を清めてみてはどうでしょうか。

手水の儀について

神道の葬儀や祭式では、「手水の儀」と呼ばれる儀式があります。あまり聞き慣れない言葉ですが、知っておくと神式葬儀の際に役に立つことでしょう。ここでは、手水の儀の意味と作法について解説します。

手水の儀とは

神道の通夜や葬儀、納棺の際には身を清める必要があります。そのためにおこなわれるのが、「手水の儀(ちょうずのぎ)」です。式場に入場する前、参列者がおこなうのが基本です。仏式葬儀では、焼香がこれに近い役割を担っています。しかし、最近は儀式の簡略化に伴い省略されることも多いです。手水の儀をおこなうか否かは、遺族で話し合って決めてください。

手水の儀の作法

ご神水と呼ばれる水が入った手桶を式場の入口に置き、儀式をおこなうのが一般的です。柄杓を右手で持って水をくみ、左手を清めます。続いて左手に持ち替え、右手を清めてください。最後に左手に水をかけたら、口を軽くすすぎます。

柄杓の水は何度もくむのではなく、最初にくんだ分を3回に分けて使います。ただし、水をかける回数などの作法は宗旨や宗派、地域によって異なることもあるので、心配な場合は事前に確認しておくと安心です。

お清めが終わったら、手拭や懐紙を使って手を拭きます。これらは葬儀社が用意していることが多いです。ない場合は、手持ちのハンカチなどを使ってください。手水の儀の後は、玉串奉奠(たまぐしほうてん)に移ります。これは、仏式の焼香にあたるものです。

手水舎は神社や参拝者にとって大切な場所

参拝の前に手水舎は必ず立ち寄っておきたい大切な場所です。手水によって心身を清めることへの意味や歴史を知ると、手水舎がよりありがたいものに感じられるのではないでしょうか。正しい作法でスムーズに参拝できれば、周囲に迷惑がかからず、ご利益もアップするかもしれませんね。