霊廟(れいびょう)とお墓の違いとは?有名スポットも紹介

お葬式のマナー・基礎知識
霊廟(れいびょう)とお墓の違いとは?有名スポットも紹介
霊廟とは、亡くなった人々の鎮魂を祈り、お祀りするための建造物のことを言います。お墓と混同されることもありますが、礼拝を1番の目的として建てられるのが両者の大きく異なる点です。本記事では、霊廟の基礎知識と歴史、また国内外の有名な霊廟の特徴と場所について紹介します。

お墓とは違う?霊廟を詳しく知る

死者を祀る目的で建てられる霊廟とはどのような建造物を指すのか、まずは霊廟の意味と代表的な建物、併せてお墓との違いを解説します。

霊廟は先祖や偉人などが祀られている場所

霊廟は「れいびょう」と読み、「御霊屋(みたまや)」とも呼ばれます。「廟」には『王者や偉人の霊を祀る場所・建造物』という意味があり、霊廟もほぼ同義です。現代では先祖や偉人など特定の人物、生前に社会に大きな影響を与えた人物が祀られている場所を指すことが多いです。
霊廟の代表的な例には墳墓や神殿・寺院がありますが、仏教では仏壇や先祖をお参りする部屋なども広義では霊廟と呼べるでしょう。神道では、仏教の仏壇にあたる「御霊屋」「御霊舎(みたましゃ)」を自宅に置き、日々祖先に感謝の気持ちを伝えています。

起源と歴史

霊廟は世界各国に存在し、東アジアでの起源は中国と言われています。儒教の盛んな中国では親や先祖を重んじる教えがあり、お墓とは別に家の敷地内に祖先を祀る建物があったそうです。それを「廟」と呼んだのが始まりとされています。
ちなみに、中国には孔子や関羽といった歴史上で有名な人物を祀る廟が各地に存在します。

霊廟とお墓の違い

死者を祀る場所という意味では、霊廟もお墓も建てる目的や意味合いは同じです。しかし、お墓は墓石や埋葬した場所を指すことに対し、霊廟は建造物そのものを指します。また、お墓には遺骨を埋葬しますが、霊廟には遺骨が納められているとは限りません。混同しやすい霊廟とお墓ですが、しっかりとした違いがあります。

【宗教別】霊廟の種類とそれぞれの特徴

日本に存在する霊廟は大きく分けて3種類あり、基本的には宗教によって分けられます。宗教ごとの霊廟の種類を紹介します。

神道の「神式霊廟」は神社とほぼ同じ意味

神道における霊廟は、現在では神社とほぼ同義です。実在した人物を神格化し崇めるようになったのが神式霊廟の始まりとされています。ただし、日本全国に多くある八百万の神を祀った神社は、特定の人物を祀っているわけではないので、全ての神社が霊廟と同じとは言えません。

神式霊廟は建物に特徴があります。権現造(ごんげんづくり)と呼ばれる建築様式で建てられているものが多く、その拝殿と本殿とを石の間で連結した複合社殿には、複雑な彫刻や美しい彩色が施されています。有名なものでは豊臣秀吉を祀る豊国神社や、徳川家康を祀る日光東照宮が挙げられます。

仏教の「仏式霊廟」は寺院と付随して祀っている

仏教では、将軍や藩主などの有力な檀家や宗祖を、寺院と付随して祀っている場合が多くみられます。伊達政宗を祀る瑞鳳殿(ずいほうでん)や、天台宗の祖である天海を祀る慈眼堂(じげんどう)がその代表です。

廟の奥部には、宝塔があることも多いです。宝塔とは、円筒形の仏教建築の建物で、笠と呼ばれる屋根がつき、その上には輪が幾重にも重ねられています。よく墓石として扱われ、一重の塔と呼ばれることもあります。

儒教の「儒式霊廟」は大きさが権力を表す

中国から広まったとされる、儒教の教えに基づいて建てられた霊廟が儒式霊廟です。特徴として、有力者ほど建物が大きくなる傾向があります。

代表的なものは、儒教の創始者である孔子の霊を祀った「孔子廟(こうしびょう)」。なかでも中国の山東省曲阜市にある「孔廟(こうびょう)」が総本山で最も大きく、1994年にユネスコの世界遺産に登録されました。孔子廟は中国だけでなく日本を含めた世界各地に存在し、孔子を祀る目的以外にも、儒学を学ぶための場としても開かれています。

神式霊廟がある3つの場所

日本国内では、有名な武将や偉人が祀られている霊廟が観光地としても人気です。有名な神式霊廟がある神社を3つ紹介します。

1.日光東照宮/栃木県

徳川家康を祀る神社はいくつかありますが、有名なのが日光東照宮です。境内には徳川家康のお墓にあたる宝塔もあります。さらに国宝8棟・重要文化財34棟を含む55棟の豪華絢爛な建造物が並んでおり、観光として訪れる人も多いです。

日光東照宮は先述の通り、霊廟建築の代表である権現造で建てられた神社としても有名です。日光東照宮がこの形式を採用したことから、それ以降の霊廟建築で広く用いられるようになったと言われています。

<所在地>栃木県日光市山内2301

2.靖国神社/東京都

靖国神社は、明治維新の大事業遂行のために命を落とした人々や、国内外の戦争などで命を落とした軍人たちを「英霊」として祀るために、1869年に創建されました。靖国神社で祀る「英霊」は246万6千余柱にもおよびます。
<所在地>東京都千代田区九段北3-1-1

3.北野天満宮/京都府

北野天満宮は、学者出身で「学問の神様」として有名な菅原道真を祀る、全国約1万2000社の天満宮・天神社の総本社です。「天神信仰」発祥の地とも言われています。本来、「天神」とは特定の神様を指すものではありませんでしたが、菅原道真が雷神信仰と結びついたことや、「天満大自在天神」の神号を賜わったことにより、菅原道真の神霊への信仰を「天神信仰」と呼ぶようになりました。

北野天満宮は世間では「北野の天神さん」と呼ばれ親しまれています。

<所在地>京都市上京区馬喰町

仏式霊廟がある3つの場所

日本にある仏式霊廟では、歴史に名を残した武将や僧侶が祀られています。特に多くの参拝者を集めている仏式霊廟を3つ紹介します。

1.瑞鳳殿/宮城県

仙台市の経ケ峰公園の中にある瑞鳳殿(ずいほうでん)には、初代仙台藩主の伊達正宗の遺骨が納められており、周囲には殉死した家臣たちの墓石が建ち並んでいます。さらに近隣には2代藩主忠宗の霊廟「感仙殿(かんせんでん)」、3代藩主綱宗の霊廟「善応殿(ぜんのうでん)」などもあり、伊達氏に関連のある霊廟を見て回れます。豪華絢爛な桃山様式で建てられた建築美は一見の価値ありです。
<所在地>宮城県仙台市青葉区霊屋下23-2

2.慈眼堂/滋賀県

江戸幕府の政治に影響を与えた天台僧・天海が祀られているのが慈眼堂(じげんどう)です。境内には江戸時代以降の歴代天台座主の墓があり、徳川家康や紫式部の供養塔もあります。
<所在地>滋賀県大津市坂本4-6-1

3.高野山/和歌山県

和歌山県にある高野山は「日本総菩提所(にほんそうぼだいしょ)」とも言われ、多くの参拝者を集めています。奥の院には真言宗の開祖である弘法大師・空海が祀られており、その参道には、織田信長や親鸞といった有名な武将や高僧から庶民にいたるまで、あらゆる階層の人々の墓石や記念碑が並んでいます。
<所在地>和歌山県伊都郡高野町高野山600番地

有名な海外の2つの霊廟

その美しさで有名なタージ・マハルも、実は霊廟に数えられます。ここでは海外の霊廟を2つ紹介します。

1.タージ・マハル/インド

ムガル帝国第5代皇帝のシャー・ジャハーンが、1631年に亡くなった王妃ムムターズ・マハルのために建設したと言われているのが、インドの有名スポットであるタージ・マハル。インド北部のアグラに位置します。総大理石で造られた、真っ白の美しい建築が世界中で注目を集めています。

2.サン・ドニ大聖堂/フランス

キリスト教ではさまざまな聖人が大聖堂に祀られていますが、その中の1つがフランス・パリにあるサン・ドニ大聖堂です。3世紀半ばに殉教した、パリで最初の司教ドニ(聖デュオニシオス)が息絶えたとされる場所に建てられました。大聖堂の地下には、フランス革命で知られるルイ16世とマリー・アントワネットの墓もあります。ほかにも数多くの王族の棺や墓標があるため、フランス王家の墓とも言われています。

祖先や偉人を崇め鎮魂を祈る場所、それが霊廟

普段はあまり聞きなじみのない霊廟ですが、お寺や神社など意外と身近な場所にあります。機会があればぜひ立ち寄って、祀られている人々の歴史や生き様に想いを馳せながら、死後の平安をお祈りしてはいかがでしょうか。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。