低栄養の原因・症状とは?ケア方法を知って健康的な生活へ

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低栄養の原因・症状とは?ケア方法を知って健康的な生活へ
低栄養とは、健康的な生活のために必要な栄養が足りていない状態を言います。高齢者の場合、食欲の低下などから食事量が減少し、筋力や身体機能、活動量などが低下するリスクが高まります。低栄養にならないためには「バランスよく栄養を摂ること」、「食事量の減少を防ぐこと」が大切です。本記事では、低栄養の原因や症状、ケア方法について解説します。

体の元気が出ない低栄養とは

健康な身体を維持するためには、十分な栄養が不可欠です。しかし、高齢になるにつれて食事の量が低下し、低栄養の症状を引き起こしやすくなります。最初に低栄養の概要や、低栄養の可能性をセルフチェックする方法について解説します。

低栄養の意味

低栄養とは、必要な栄養が不足したときに起こる体の状態を意味します。具体的には、健康な体づくりに欠かせないたんぱく質や、身体を動かすために必要なエネルギー、ビタミン、ミネラルなどの栄養素が不足した状態のことを言います。食が細くなったり、食べ物の好みが変わったりと年齢による変化が理由となることが少なくありません。
もちろん、若い人でも病気やケガなどが原因で十分な食事がとれないと、低栄養になるリスクがあります。しかし、肉を受けつけない、柔らかく煮たものばかりが食卓に並ぶ、積極的にフルーツを食べないなど、高齢になるほど低栄養となりやすい傾向があるので注意が必要です。

「食」の変化は低栄養のサイン

以前と比べて食事の変化が気になったら、低栄養の可能性をセルフチェックしてみましょう。以下の項目に思い当たるものがあれば、低栄養になりつつあるサインかもしれません。
  • 食欲がわかない
  • 朝食を抜くなど、1日の食事の回数が減ってきた
  • 1回の食事量が減ってきた
  • 食べ物を口からよくこぼすようになった
  • 肉、魚、卵などたんぱく質が含まれる食材をあまり食べていない
  • 体重が減ってきた
ただし、自己判断は危険なので、症状が気になる場合はかかりつけ医に相談することをおすすめします。

生活の中に潜む低栄養の原因

低栄養になる原因は、普段の食生活や行動にあります。原因を知っておけば、低栄養の予防にも役立つはずです。こちらでは、低栄養の原因を解説します。

偏った食生活

高齢者だけの世帯や一人暮らしの高齢者は、食事への関心の低下や買い物や調理が億劫といった理由からメニューが同じようなものになる傾向があります。長期保存が可能な加工品や、近くの店のお惣菜で食事を済ませることも増え、栄養面への配慮がおろそかになりがちです。
そのほか、経済的な事情で食費を切り詰めている、ひとり二人分では食材が使い切れなくてもったないなど、高齢になるほど低栄養につながる要因が増えやすくなります。

筋力や機能の低下

高齢者の低栄養は、食べ物を嚙む力や飲み込む力の衰えも大きく影響します。食べる量が減る、食べるスピードが遅くなった、食べ物を口からよくこぼすということがある場合は、噛む力が低下している可能性も。また胃や腸などの消化機能の低下も、低栄養の原因の1つとされています。

精神的ストレス

ストレスを受けると、食欲が低下しやすくなります。また、配偶者やペットとの別れが精神的ストレスになることも考えられます。
高齢者特有のストレスには、「人の声が聞きとりにくくなった」「車の運転に自信がなくなった」など、前までできていたことが、思うようにできなくなった喪失感があります。外部との関わりが減り、孤立感から精神的ストレスや不安を感じるのも低栄養の原因となり得ます。

低栄養の症状と生活に及ぼす影響

低栄養の症状には、活動量や認知機能、身体機能の低下などが挙げられます。症状が現れると、生活にも影響を及ぼし、低栄養がさらに悪化してしまうことも。ここからは低栄養の症状と生活に及ぼす影響について解説します。

【フレイル】活動量や認知機能の低下

フレイルとは体の虚弱状態のことで、健康な状態と要介護状態の中間にあたります。低栄養の状態が続くと、身体機能や筋力が衰えて、活動量や食欲も低下し、体がどんどん弱っていきます。
フレイルは次第に生活に影響を及ぼし、転倒や骨折などのリスクが高まります。また、外出したり、身の回りのことをしたりするのが面倒になるなど、活動量や認知機能の低下にもつながりやすくなります。

【サルコペニア】全身の筋力や身体機能の低下

低栄養になると、たんぱく質が不足し、筋肉が減少します。筋肉量が減少し、全身の筋力や身体機能が低下することをサルコペニアと言います。サルコはギリシャ語で「筋肉」を、ぺニアは同じく「喪失」を意味します。
サルコペニアの原因の1つは、加齢。加齢によって、手や足の筋肉だけでなく、食べ物を飲み込むために欠かせない筋肉も減少するため、65歳以上の高齢者に多く見られます。歩行や着替え、食事など日常生活の動きが思い通りにできないなどの影響が出てきます。そのため運動不足となり、食欲が低下し、更なる低栄養へと悪循環になってしまうのです。ちなみにサルコペニアは、フレイルを引き起こす一因とされています。

【ロコモティブシンドローム】運動器の障害

ロコモティブシンドロームは、運動器症候群とも言い、歩く、立つなどの機能が低下した状態を示します。略して「ロコモ」とも呼ばれます。運動器は、人間の身体を動かすためにある骨、筋肉、関節、神経などの総称です。
低栄養で筋力や筋肉が衰えると、運動器の障害を引き起こし、身体機能が低下しやすくなります。症状が進行すると、「すぐ疲れる」「歩きづらい」などの理由から運動不足になり、引きこもりになったり、寝たりきりになったりする可能性もあります。

60代から始めたい低栄養のケア方法5つ

低栄養になると、心身の機能が低下していくため、日頃の食生活に気を付けなければいけません。低栄養にならないために、栄養不足が気になり始める60代からできるケアを解説します。

1.栄養バランスの良い食事をとる

食事は主食、主菜、副菜で体に必要な栄養をバランスよく摂取しましょう。体力を低下させないために、エネルギーとたんぱく質が重要です。糖質や脂質はエネルギーとなり、たんぱく質は血や肉となります。ほかにもビタミン、ミネラル、カルシウム、食物繊維は健康な体づくりのために大切な栄養素です。

2.規則正しい食生活を心がける

規則正しい食生活とは、栄養バランスの良い食事はもちろん、なるべく毎日1日3食、朝・昼・夜同じ時間に食事をとることが重要です。食事の量は、3食のうち昼を多めにするのが理想的。1回の食事で品数をたくさん食べられない場合は、1日3回という回数に縛られず、1食を2回に分ける、または間食をとるという栄養の摂り方もおすすめです。

3.食べやすいように工夫をする

加齢により食べる力が衰えると低栄養になりやすいです。食材を柔らかくしたり、細かく切ったりするなど食べやすいように工夫すると良いでしょう。また、口腔内の環境が悪いと食事量が減少する原因に。嚙み合わせが悪かったり、入れ歯が合っていなかったりする場合は、かかりつけの歯科医師に相談することをおすすめします。
食事で不足しがちな栄養を補給するための栄養補助食品は、ゼリー状など食べやすくなっているものも多くあります。スーパーや薬局で購入可能です。栄養補助食品は栄養素や味の種類が豊富にあるので、迷う場合はかかりつけの医師に相談して自分の健康状態に合ったものを選んでもらってくださいね。

4.食事を楽しむ

遊び心のある献立は、食事を楽しむことにつながります。例えば、魚料理で鯛の形をした骨「鯛の鯛(鯛中鯛・たいちゅうたい)」を探すのはいかがでしょうか?昔からこの鯛の形の骨は縁起物と言われており、鯵などの小ぶりなサイズの魚にもあるとのこと。また、2月の恵方巻、9月の栗ご飯といった節句料理を楽しむのも、目や記憶を刺激してくれそうです。
感染症の心配がなくなればという条件付きですが、低栄養のケアとして、友人を食事に誘いたいものです。外出する機会や人との関わりが増えるので、心身の健康にもつながります。誰かとの外食は、食事をすること自体がレジャーになり、食欲もアップします。

5.運動を取り入れる

低栄養にならないためには食事だけでなく、運動も必要です。しかし、栄養が足りない状態でハードな運動をすると、症状が悪化する可能性も。散歩や無理のないストレッチなど軽い運動がおすすめです。また、健康な体を維持するために、運動後にしっかり栄養補給をしましょう。とくにたんぱく質は、積極的に摂った方が良い栄養素です。

低栄養にならないために、食生活を見直そう

低栄養になると、筋力や身体機能の低下だけでなく、心も落ち込みやすくなってきます。家族に余計な心配をかけずに、長生きをして、いつまでも健康で楽しい生活を送るためにも、早いうちから正しい食生活を心がけてくださいね。