死産した赤ちゃんの葬儀・供養。悲しみとの向き合い方も

お葬式のマナー・基礎知識
死産した赤ちゃんの葬儀・供養。悲しみとの向き合い方も

この記事はこんな方にオススメです

赤ちゃん供養の仕方が知りたい
悲しみとの向き合い方が知りたい
身ごもった赤ちゃんを亡くしてしまった悲しみは計りしれませんが、行政への手続きは必要です。また、赤ちゃんのお葬式や供養をすることが残された家族の悲しみを軽減し、いずれは癒しにもつながるかもしれません。この記事では、悲しみとの向き合う方法から、死産の定義と必要な手続き、葬儀をする場合の流れや手元供養をおこなう場合の種類までを紹介します。

赤ちゃんを死産した悲しみと向き合う方法

赤ちゃんを亡くした悲しみはすぐには癒えないことでしょう。死産はお母さんのせいでも誰のせいでもありませんので、自分を責めずにまずは体をいたわってください。ここでは悲しみと向き合い方を紹介しますので参考にしてみてください。

自分を責めずにいたわる

まずは自分を責めずに、体も心もいたわってあげてください。「妊娠時に何か悪いことをしてしまったのでは」と考えてしまうこともあるかもしれませんが、死産の多くは母体に原因があったわけではありません。赤ちゃんの死は、すぐには受け入れられるものではないでしょう。ゆっくりと時間をかけて、無理をせずに少しずつ癒やしていってください。

悲しみを表現する

泣くことは悪いことではありません。前向きに進んでいくために必要な過程です。涙を流すことはストレスの軽減にもつながります。無理に忘れようとするのではなく、悲しみは押さえ込まずに自分のペースで気持ちの動きと向き合い、口に出してみることも大切です。気持ちを話すのが難しい場合は、思うままに日記や手紙などに書いて文字にするのも、心の整理に繋がります。

自治体の相談窓口を利用する

悩みを打ち明ける相手や、相談する相手が身近にいない場合は、市区町村の相談窓口を利用してみると良いかもしれません。自治体ごとに、助産師や保健師などが相談に乗ってくれる支援センターなどを開設しています。同じ悩みを持った人と話ができる場を作ったり、同じ体験をした人によるサポートを受けられたりする活動もあるので、自治体のホームページなどで確認してみてください。

グリーフケアを体験する

グリーフケアとは、大切な人を亡くし悲しみの中にいる人をサポートする治療や活動のことです。具体的には、病院や専門家による治療やカウンセリング、悲しみを乗り越えるためのワークショップ、日常生活で悲しみを和らげられる行動を見つけるなど幅広い方法があります。全国各地で専門家やサポートグループによる体験会が開かれていたり、関連書籍も販売されていたりするので、選択肢のひとつにしてみてください。
グリーフケアについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。

手続きをする上で必要な死産の定義

日本の法律では「妊娠12週(4ヶ月)以降に死亡した胎児を出産すること」を死産とし、市区町村役場へ届け出を義務付けています。一方、日本産婦人科学会では妊娠22週(6ヶ月)以降を死産と定義し、それ以前は赤ちゃんが母親のおなかの外では生きていけない週数であるため、「妊娠22週未満は理由にかかわらずすべて流産」としています。
このように医師と役所では使われる言葉が異なるかもしれませんが、死産届の手続きにおいては、法律上の妊娠12週が基本となるので注意が必要です。
また、日本では12週以前の死胎であっても勝手に処分することはできません。ご自宅で体調に異変があった際には、かかりつけ医または市区町村の役場に相談してください。

赤ちゃんを死産した場合に必要な手続き

悲しみの中にいながらも、必要な手続きをおこなわなければなりません。ここからは死産が確認された場合に必要な手続きについて、妊娠12週から22週までと22週以降に分けて説明します。自分で読むのが辛い場合には、身近な人に頼ってみてくださいね。

妊娠12週~22週に死産した場合の手続き

妊娠12週から22週未満の死産では、①死産届の提出と、②死胎火葬許可証の受け取りの2つの手続きが必要です。
①死産届の提出
妊娠12週以降で赤ちゃんを死産した場合は、死産届の提出が必要です。7日以内に、届出人の住民票がある自治体、もしくは死産した病院がある市町村役場へ提出します。また死産届の提出時に役所にある死胎火葬許可申請書への記入が必要となります。なお妊娠22週未満の場合は、子どもは母胎内で亡くなったとみなされ、出生届の提出は不要で戸籍にも記載されません。
<提出時に必要な主な持ち物>
  • 医師が発行する死産証明書
  • 本人確認書類
  • 印鑑
※自治体によって異なるので、事前確認を
②死胎火葬許可証の受け取り
死産届と死胎火葬許可申請書を提出すると、死胎火葬許可証が交付されます。妊娠12週以降の死産した赤ちゃんは遺体という扱いになり、墓地埋葬法に従って火葬が必要です。死胎火葬許可証は、火葬の際に火葬場へ提出します。

妊娠22週以降に死産した場合の手続き

妊娠22週(6ヶ月)以降は、出産時に赤ちゃんが生存していたか否かで必要な手続きが変わります。出産時の生存については医師が判断します。
①出産時に既に死亡していた場合
前述の妊娠12週~22週の死産の場合と同様の手続きが必要です。
②出産時に生存が確認された場合
出産時に生存が確認された後で亡くなった場合、出生届と死亡届の両方の提出が必要です。出生届を提出するので、亡くなった赤ちゃんに戸籍が作成され、その後除籍という流れになります。また戸籍を作るために赤ちゃんの名前も必要です。

死産での赤ちゃんの葬儀(流れと費用)

葬儀は、以前からお世話になっているお寺や、葬儀社に頼むのが一般的です。死産した赤ちゃんとお別れする方法と、葬儀や火葬にかかる費用の相場を紹介します。

赤ちゃんの葬儀

死産で亡くした赤ちゃんのお葬式をするかしないかは家族の気持ち次第です。しっかりお見送りがしたいという人もいれば、火葬だけをおこなうこともあります。
葬儀をおこなう場合は、一般的には菩提寺と呼ばれる先祖代々付き合いのあるお寺に頼むか、葬儀社に依頼します。葬儀費用の相場は、地域や葬儀方法によっても異なりますが、火葬も含めておおよそ10万円前後です。ほかに棺を自分たちで用意しなければいけない場合は、数千円〜2万円ほどかかります。棺は病院や葬儀社から購入可能です。葬儀プランに含まれている場合もあるので、申し込みの際に確認しておいてください。
そして葬儀が終わったら、火葬に移ります。

赤ちゃんの火葬

妊娠12週以降に赤ちゃんを亡くした場合、必ず火葬をおこないます。火葬には前述の死胎火葬許可証が必要です。なお妊娠7か月(24週)以降の赤ちゃんの場合は、火葬する前に24時間は安置する必要があります。
火葬のみの費用は、地域によって幅があるものの1〜3万円前後です。また火葬後に火葬場から返却された火葬許可証は、埋葬許可証となります。埋葬時に必要ですので、必ず保管してください。

また、赤ちゃんの遺骨を残したい時は、火葬場へ事前確認が必要です。設備が整っている火葬場でないと火力の問題で遺骨を残せない場合があるためです。もし可能であれば事前に遺髪を残しておくことも検討しておくとよいかもしれません。

埋葬する

火葬が済んだら遺骨を埋葬します。埋葬するタイミングは自由なので、気持ちに整理がついてからでも大丈夫です。
妊娠12週以降に亡くなった赤ちゃんを埋葬する場合、定められた墓地や納骨堂に埋葬します。菩提寺にあるお墓に納骨するか、新しくお墓を建立して納骨するのが一般的です。
赤ちゃんと離れたくない場合は、納骨せずに手元供養という選択肢もあります。家族が良いと思う方法で赤ちゃんを供養してあげてください。

死産した赤ちゃんを身近で供養する手元供養の種類

亡くした赤ちゃんを身近に感じられる、手元供養を紹介します。手元供養とは遺骨や遺灰などの形見を加工して、自分の手元で保管する供養の形。代表的な手元供養には、ミニ骨壺・ミニ仏壇・遺骨アクセサリーなどがあります。

ミニ骨壺

ミニ骨壺とは、高さ5~10センチ程度の赤ちゃん用の小さいサイズの骨壺です。素材は陶器やガラス・木・金属・樹脂などさまざまなものがあります。自宅の見える場所に置くことを考慮し、一見して骨壺に見えないものや、リビング・寝室になじむデザインのものなど種類も豊富です。

ミニ仏壇

部屋に置きやすいコンパクトサイズの仏壇を、ミニ仏壇と呼んでいます。写真やお花・仏具を飾れたり、ミニ骨壺を置いたりできます。和室・洋室どちらにも違和感のないモダンなデザインのものが多いです。ミニ仏壇セットとして、必要な仏具まで揃えたものもあります。

遺骨アクセサリー

遺骨アクセサリーとは、遺骨を封入したり加工したりしたアクセサリーのこと。遺骨をカプセルに封入してブレスレットやネックレスに取り付けられるようにしたものや、遺骨からダイヤモンドを作成しアクセサリーに取り付けるサービスなどが有名です。普段から身につけられるので、赤ちゃんの存在をより身近に感じられるでしょう。

遺族にあわせた葬儀や供養で死産の悲しみと向き合う

お葬式や供養をおこなうことは赤ちゃんの冥福を祈るだけでなく、残された家族の心のなぐさめにもなるかもしれません。それは赤ちゃんを忘れることではなく、これからも心の中に生き続けるということ。葬儀や供養の方法や向き合い方はさまざまです。必要な手続きを終えたら、お体を休めて、ご自身のお気持ちを大切にしてください。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。