故人の旅支度をサポートする納棺師とは?その役割と仕事内容

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故人の旅支度をサポートする納棺師とは?その役割と仕事内容
納棺師は、故人の身支度をサポートする葬儀に欠かせない存在です。映画『おくりびと』で納棺師のことを知った人も多いかもしれません。ここでは、納棺師の仕事内容や納棺師になるために必要なことを始めとした基本情報を紹介します。

納棺師とは

納棺師とは故人が旅立つための準備をおこない、身支度のサポートをする人のことです。納棺師という名前は知っていても、実際にどのような仕事をおこない、何の役割を担っているのか詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。葬儀に欠かせない存在である納棺師について紹介します。

納棺とは

納棺とは、ご遺体を棺に納める儀式を指します。「納棺の儀」とも呼ばれ、通夜の前に遺族を中心とした立ち合いのもとおこなわれます。遺族が故人とのお別れの時間をじっくり取れる、貴重なひとときと言えるでしょう。惜別の気持ちを込めて納棺の儀にのぞむ遺族に寄りそう存在となるのが納棺師です。

納棺師の役割

納棺師はご遺体を棺に納める役割を担っています。言葉にすると簡単ですが、そこにはさまざまな想いがあります。深い悲しみやつらい気持ちを抱いた遺族が故人との最後のお別れをきちんとできるように、納棺師は最大限の配慮をしなければなりません。
人が亡くなる状況はさまざまです。老衰でやすらかに亡くなることもあれば、不慮の事故によって突然この世を去ってしまう場合もあります。ご遺体の状態は常に良いものであるとは限らず、ときには激しい損傷を伴うことも。納棺の儀にのぞむ遺族が精神的な痛手を負わないように、納棺師はご遺体を整えるなどの対応をおこなう必要があります。
納棺師は死と向き合い、遺族の心に寄りそった仕事が求められます。ときには納棺師も死に対してつらい気持ちを抱くこともあるかもしれません。それでも遺族が穏やかに故人と対面できるように、さまざまな配慮を凝らしていくのが納棺師の役割です。

納棺師の仕事内容

納棺師がおこなう仕事は、所属する会社・業者によって異なります。故人が亡くなってから納棺まで、納棺師が携わる仕事は多種多様。どのような仕事をしているのか、基本的な納棺の流れを紹介します。

湯灌

湯灌(ゆかん)とは、古来よりおこなわれてきた故人の身体を清める儀式です。身体をきれいにするのはもちろんのこと、生前の苦しみや悲しみを洗い流すという意味も込められています。また、来世に生まれ変わるための大切な儀式としても捉えられてきました。

湯灌をする場合は浴槽などの特殊な設備を準備し、ご遺体を洗浄します。近年は湯灌をおこなわず、アルコール綿を使ってご遺体を清める「清拭(せいしき)」が増えています。宗教的な儀礼にこだわらないケースが増えていることや、葬儀の規模が縮小化していること、きれいなご遺体が多いこと等々が清拭のみで終える理由に深く関係しています。

清拭は看護師によって病院でもおこなわれますが、死後のご遺体の保存状態をよくすることで、表情などを整えることとは別です。お葬式経験者の中で、最もよくご遺族の印象に残るのがこの湯灌の儀(納棺の儀)です。ご遺体をきれいにするだけでなく、最後のお別れに向けてご遺族の気持ちも清める役割を担っているのかもしれません。どのような流れにするか、よく考えて判断することが大切です。

身づくろい

納棺師は火葬までの間にご遺体の腐敗を遅らせるための作業をおこないます。防腐剤を使用するほか、ドライアイスを使用するのが一般的です。こうした作業の後、故人の身づくろいを始めます。
納棺師は故人のための死装束を準備し、着替えをおこないます。死装束とは経帷子(きょうかたびら)のことです。白装束とも呼ばれます。病院では経帷子を着せず、白地に紺の模様が入った普通の浴衣に着替えさせる場合が多いです。近年は故人がお気に入りだった服を着せることもあり、遺族の意向に沿って身づくろいをします。この場合は、故人の上に経帷子をかける方式がとられます。

死化粧

死化粧は納棺師が故人に対してほどこす薄化粧のことです。化粧は女性にするイメージがありますが、男性にもほどこされます。納棺師がほどこす死化粧は、血色を良く見せるためのものです。専門的な知識をもとに、故人にふさわしい死化粧をします。

あざや傷をカバーしたり、闘病でやつれた顔を元気に見せるようにしたり、さまざまな工夫がなされます。穏やかな表情を作るため、口の中に綿を入れることも。綿を入れるのは、においを抑える目的もあります。

このような納棺師の丁寧な仕事により、遺族は元気だった頃の故人と近い形で対面し、お別れできるようになります。なるべく元気な姿の故人を送りたい、という遺族の想いを汲み取ることが納棺師にとって大切なことです。

納棺

故人を遺族や親族で支え、棺へ納めることを納棺と呼びます。近年は高齢者な遺族だけでのお見送りも多く、納棺師が棺桶に納める役割を担い、遺族は手をそえるのみということも珍しくありません。どのような形で納棺をおこなうかは遺族と相談した上で決めます。

納棺師が故人の身の回りを整え終えたら、副葬品を納めます。地域のしきたりや宗教的な儀礼、火葬場の対応状況により副葬品の種類が変わります。故人が愛用していたものを納める場合もあります。副葬品の種類は限定されるため、何を入れても大丈夫な訳ではありません。納棺の儀式については下記の記事も参考にしてみてください。

納棺師を題材にした作品

納棺師を題材にした作品を見れば、納棺師の仕事に対する理解が深められます。どんなことをするのかはもちろん、どのような想いで納棺師という仕事をしているのか、作品を通して学んでみてはいかがでしょうか。納棺師について知りたいときにおすすめの作品を紹介します。

映画『おくりびと』

本木雅弘さん主演の映画『おくりびと』は、2008年9月に公開されました。プロのチェリストだった主人公が楽団の解散を機に夢を諦め、故郷の山形に帰るところから物語は始まります。職探しをしていた主人公が旅行代理店と勘違いして応募した仕事が納棺師でした。主人公が新米の納棺師としてさまざまな旅立ちの場に向き合う姿を描いた感動作です。日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞したほか、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したことでも大きな話題となりました。東北の風習が色濃くでていますが、納棺師の仕事について大枠をとらえています。また、日本人の美意識や、日本の様式美・映像美が楽しめる作品です。
令和2年現在、映画『おくりびと』はDVDパッケージとオンデマンドの両方で楽しめます。

映画『おくりびと』の原点となったのは、青木新門著『納棺夫日記』です。この本を読んで感銘を受けた本木雅弘さんが作者と直接交渉し、映画化が実現しました。映画だけでなく、『納棺夫日記』も納棺と納棺師に対する理解を深めるのに最適な本と言えます。
『納棺夫日記』青木新門著 文春文庫

書籍『今日のご遺体 女納棺師という仕事』

納棺師の永井 結子さんのブログ『今日のご遺体』を書籍化したエッセイです。祥伝社から文庫が出ています。2018年3月には、この書籍を原案とする映画『おみおくり』が高島礼子さん主演で公開されました。納棺師の目を通して、大切な存在を亡くした人たちの姿が語られます。
『今日のご遺体―女納棺師という仕事』永井結子著(祥伝社黄金文庫)

納棺師になるには

納棺師は特別な資格や学歴を必要とする仕事ではありませんが、故人をケアする作法や作業の流れなど、専門的な技術・知識を身につける必要があります。大切な人を亡くした遺族への細やかな心配りも納棺師に欠かせない要素です。そのような技術や知識を学ぶための方法を紹介します。

専門学校に進学する

葬儀に関連したコースがある専門学校に進学し、基礎的な知識を学ぶことで納棺師を目指せます。納棺や湯灌に絞った専門的な学習だけでなく、葬儀全般に関する広い知識を得られるのが魅力です。専門学校には就職先へのパイプがあるため、有利な状況で就職活動ができます。ただし、専門学校で学ぶには費用や時間がかかるので、進学の際は将来の人生計画をきちんと立てておく必要があります。

葬儀社に入社する

葬儀全般を執りおこなう会社に入社し、納棺師として働く方法もあります。一般企業と同じように葬儀社も求人をおこなっているのでチェックしてみてください。実際の業務を通して納棺師について学べます。ただし、葬儀社の仕事は多岐にわたります。納棺師になれることが決まっているわけではないので、その点には注意しましょう。

納棺・湯灌の専門業者に就職する

納棺や湯灌を専門としている業者に就職することで、納棺師の知識・技術を習得できます。こうした業者は特殊な部類に入るため求人が出にくく、就職活動が困難になることもあるので気を付けてください。限定しすぎず、臨機応変になって納棺師になるための就職先を探してみると良いのではないでしょうか。

納棺師は故人の旅立ちを見送るプロ

納棺師は、遺族が快く故人を見送るための仕事をおこなう職業です。遺族の気持ちに寄りそいながらも、感情移入しすぎずプロとしての的確な仕事が求められます。死と向き合う特殊な職業ではありますが、葬儀に欠かせない存在です。知識や理解を深めて、納棺師のいる最後の時に想いをはせてみてはいかがですか。