ご遺体を乗せる霊柩車。利用料金、寝台車との明確な違いも

ご家族の通夜・葬式準備
ご遺体を乗せる霊柩車。利用料金、寝台車との明確な違いも
霊柩車(れいきゅうしゃ)とは、葬儀場や自宅から火葬場まで、ご遺体を納めた棺を運ぶ車のことです。時代の変化とともに葬儀のカタチが多様化しているように、霊柩車の種類などにも変化が表れています。この記事では、霊柩車の種類や言い伝え、寝台車との違い、利用料金や昨今の霊柩車事情を解説します。

霊柩車について

霊柩車の基本情報と、霊柩車にまつわる言い伝えや習わしを紹介します。霊柩車と同じご遺体を運ぶ寝台車についても言及します。

霊柩車とは

葬儀関連でよく見聞きする霊柩車は、葬儀場から火葬場まで、ご遺体が納められた棺を運ぶ車を指します。自宅で通夜や葬儀・告別式がおこなわれるケースが多かった時代は、遺族が霊柩車まで棺を運ぶこともありましたが、現在は葬儀社のスタッフが運ぶことがほとんどです。

霊柩車の1番の目的は「棺を乗せて運ぶこと」なので、2~5人程度しか乗れません。助手席には位牌や遺影を抱えている人が乗るのが通例です。その他は、故人ときわめて近しい人だけが乗車します。

特徴

葬儀社が保有する霊柩車は、前のドア下部に「霊柩限定」または「霊柩」と記されています。ナンバープレートは緑色で、分類番号は800番台です。葬儀社は車を霊柩車として使用するために、一般貨物自動車運送事業(霊柩限定)の許可を得ています。

霊柩車に関する言い伝え

日本には霊柩車にまつわる数々の言い伝えや習わしがあります。有名なのは「霊柩車を見たら親指を隠せ」というもの。これは「死者は穢れ(けがれ)ていて、周囲に災いをもたらす」と考えられていたことが由来です。

指を大切な家族に見立て、親を象徴する親指を隠す(守る)ことで、「親を亡くす(失う)」のを避ける、という意味で地域に根付いていったと考えられます。「友を引く(連れていく)」の友引など「六曜」の考え方と少し似ているかもしれません。

他にも「霊柩車は行きと帰りは必ず違う道を通る」といった習わしがあります。昔の日本は火葬ではなく土葬が主流でした。葬列を組んで墓地まで向かい、墓穴を掘り埋葬していたのです。この埋葬方法は野辺送り(のべおくり)と呼ばれ、「野辺」は埋葬を指しています。

野辺送りの後は、来た道とは順路を変えて帰宅するのが習わしでした。「故人には仏門に専念してほしい」との考えで、敢えて道を変えて迷わせる意味や、穢れを自宅に持ち帰らないように順路を変えるなど、地域によってさまざまな考え方があります。

火葬場まで霊柩車・寺院車輛・遺族車輛・親族車輛・マイクロバスなどが葬列をなして向かう現在の姿は、昔の野辺送りを表現しています。ちなみに、火葬場から自宅や葬儀場へ戻る時には霊柩車はほぼ使いません。骨壺を持った喪主の方なども帰りは遺族車両やマイクロバスなどに乗ります。

寝台車との違い

ご遺体を乗せて移動させる車を寝台車と呼びます。主な目的は、お亡くなりになった方を病院から自宅、もしくは葬儀場まで運ぶことです。霊柩車も寝台車の仲間に属しますが、葬儀社は、病院などへお迎えにあがるのは「寝台車」、火葬場までお送りするのは「霊柩車」と呼び分けています。

金色などの派手な装飾が施されているものが多い霊柩車に対して、寝台車は落ち着いたデザインがほとんどです。長さこそ違うものの、寝台車の見た目は一般車とほぼ同じです。

霊柩車の種類

宮型・洋型・バス型・バン型など霊柩車の種類はさまざまで、時代の変化とともに選ばれるタイプに変化が表れています。こちらでは、それぞれの特徴を紹介します。

宮型(輿型)

黒塗りの車体の上に「輿(こし)」と呼ばれる祭壇が乗っているタイプが宮型霊柩車です。輿が乗っている姿から「輿型」と呼ばれることもある他、デザインに特徴がある地方も存在します。

一般車で言うところの後部座席に棺が乗せられ、助手席に1人(喪主)だけ乗るのが一般的です。「霊柩車」と聞いて多くの人がイメージするのは宮型ですが、平成以降は減少傾向にあります。

その理由には、増加傾向にある家族葬で宮型が避けられるケースが多いことも深く関係しています。他にも、近隣住民に配慮して、宮型を禁止している火葬場が増加中なのも理由の1つ。宮型が減少していることで、「最近は霊柩車を見なくなった」と感じる人が増えているようです。

洋型(リムジンタイプ)

宮型の減少と反比例して増加中なのが、リムジンタイプの洋型霊柩車です。洋型は、ベンツやクラウンといった高級セダン、大型のワゴン車を改造しています。宮型よりもシンプルなデザインで、一見すると霊柩車と分からないところが洋型の特長。プリウスを改造したものは、環境に優しいだけでなく住宅街になじむと評判です。運転手と助手席に座る人(喪主)の他、2人ほど乗れる車がほとんどですが、大きいものなら4人乗れるケースもあります。

バス型

マイクロバスを改造して、後部座席に棺を乗せられるものがバス型霊柩車です。車体が大きい分、宮型や洋型よりもたくさんの人が乗車できます。乗車できる人数はサイズによりますが、14~20人ほどが目安です。

バス型は火葬場までの距離が遠い地域や、移動が困難な雪国で多く使用されるタイプ。ただし、雪国であってもバス型を保有していない、もしくは手配できない葬儀社もあるので、利用したいときは事前に確認してください。

バン型

ストレッチャーを装備できるよう、ミニバンやステーションワゴンを改造したものがバン型霊柩車です。使用するシーンによって霊柩車と寝台車を使い分けられる上に、洋型よりも価格が安いので、多くの葬儀社が保有しています。一般車と見た目がほとんど変わらないので、自宅や病院付近に停まっていても不自然ではありません。

霊柩車の利用方法と利用料金

霊柩車の利用料金は一律ではなく、走行距離などによって異なります。こちらでは利用方法と利用料金について解説します。

利用方法

基本的に、霊柩車は葬儀社が手配します。依頼する葬儀社が洋型やバン型など複数の霊柩車を保有していたり、保有していなくても手配が可能であったりする場合には、希望するタイプをスタッフに伝えるとスムーズです。

自社で保有していない葬儀社は、遺族の希望をヒアリングした上で専門業者に依頼します。葬儀社によっては遺族が自分たちで手配することも可能ですので、希望するときは確認してください。

利用料金

霊柩車の利用料金に関するルールは、国土交通省によって定められています。利用料金を無料にするのは違法であるなど、葬儀社や専門業者は料金を自由に設定することができません。そのため、霊柩車代は葬儀プランに含まれているのが一般的です。

利用料金は霊柩車の種類や、走行距離などによって決まります。宮型と洋型は特別車、バン型とバス型は普通車に分類されます。

基本料金は走行距離が0~10㎞で13,000円~20,000円ほど。利用料金がかかる範囲は、霊柩運送事業者の車庫→葬儀場または自宅→火葬場までです。早朝・夜間・深夜に待機させる、依頼人側の都合で30分以上待機させる、有料道路を走行したケースなどは、プラスアルファで料金がかかります。

時代とともに変化する霊柩車

宮型の減少以外にも、時代の流れとともに霊柩車の置かれている環境は変化しています。こちらでは、昨今の霊柩車事情を紹介します。

黒以外の霊柩車が登場している

古くから霊柩車と言えば黒色でしたが、時代の変化とともにピンクや白、赤といった明るい色の車が登場しています。なかにはキャラクターのペイントが施されたものも。ピンク色の霊柩車は、故人がピンクを好んでいた場合に選ばれることが多いようです。ただし、黒以外を快く思わない人も多いため、利用の際は家族でよく話し合ってください。

クラクションを控えることが増えた

これまでの日本では、葬儀場や自宅前で棺を霊柩車に乗せ、出発するときにクラクションを鳴らすのが通例でした。このクラクションは、葬儀に参列してくれた人への感謝の気持ちと、故人へのさようならの気持ちを表現したものです。

しかし、最近はクラクションの音がうるさいと問題になることがあり、控える人が増えています。クラクションを鳴らすか鳴らさないかの決定権は、基本的に遺族にあります。周囲の環境などに配慮しつつ、クラクションの有無を決定したいところです。

霊柩車は故人の最後の乗り物

時代とともに変化する霊柩車。種類や見た目は変わっても、「火葬場まで故人を送る」という役割に変わりはありません。霊柩車に乗せられる棺の中には、ご遺体だけでなく、故人や家族の想いが詰まった副葬品も納められています。霊柩車は故人が最後に乗る乗り物なので、よく考えて故人や家族の希望を葬儀社に伝えてください。