ドライアイスをご遺体に使う意味とは?取り扱いの注意点も

ご家族の通夜・葬式準備
ドライアイスをご遺体に使う意味とは?取り扱いの注意点も
ご遺体の保管には保冷が必要です。ドライアイスは生鮮食品の低温保管や冷凍食品の輸送などに使われますが、ご遺体の保冷材としても欠かせません。この記事では、ご遺体になぜドライアイスが使われるのか、その使い方と注意点について説明します。また、費用相場やご遺体の保管「安置方法」も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

ご遺体に使うドライアイスの基礎知識

死亡してからお葬式が始まるまでの間、ご遺体はどこかに安置されます。安置をするときは、保冷が必要です。その際に、多く使われるのがドライアイスです。

ご遺体にドライアイスを使う意味

生き物は死亡すると傷み始めるので、人も亡くなってから4時間以内にご遺体の冷却を開始しなければならないと言われています。ご遺体の状態を生前に近く保つには、死亡直後から冷却をすることが大事。特に、故人の体が大きい・体温が高い・感染症の場合は急速な冷却が必要です。

そこで、ご遺体を冷却するために氷よりも低温のドライアイスが使用されます。
日本では、亡くなった後24時間は火葬してはいけない法律があります。病院で亡くなったあと、ご遺体は院内に数時間しか保管できませんので、葬儀までの間は自宅や斎場などへの保管(=安置)をする必要があります。

ご遺体の安置期間は短くても1日、人口の多い首都圏などでは2〜3日が一般的です。友引などで火葬場が休みの間や混み状況によっては、3日以上安置することもあります。そのようなケースにおいても、ドライアイスでご遺体を常に冷却し、傷むのをなるべく防ぎます。

ドライアイスの準備について

ドライアイスとは二酸化炭素を固体にしたもので、マイナス78.5℃のきわめて低温の物質。固体から気体に変わると、二酸化炭素に戻るのが特徴です。

ドライアイスはご遺体の安置と通夜で、最低でも2回分は必要になります。通常は1回あたり10キロを使用しますが、ご遺体が傷みやすい夏は最低4回分が必要です。使用量は、冬場は最低20キロ、夏場は最低40キロが目安となります。

また、ドライアイスがご遺体の近くにあればどこに置いてもいいというものではありません。冷気は下に伝わるのでご遺体の腹部など体の上部にあてるべきです。また、死因や状態によってはそれが正解ではなく、たとえば、鼻からの出血を防ぐために首回りにあてるなど、冷やすべき部位が異なります。

専門知識がいるので準備を不安に思う人もいるかもしれませんが、ドライアイスは葬儀社が用意するので心配はいりません。自宅でご遺体を安置するときも、葬儀社のスタッフが交換に来てくれるのが一般的です。

安置場所とドライアイスの費用相場

葬儀までの間ご遺体を安置する場所は、斎場・葬儀社・安置施設など、自宅以外にも複数の選択肢があります。こちらでは、それぞれの特徴と費用相場を紹介します。

自宅で安置

自宅での安置は、故人を住み慣れた我が家に連れて帰ることができ、最後のときを家族とゆっくり過ごせるのがメリットと言えます。その際に必要なドライアイスの費用は、季節や使用量によっても異なりますが、1日につき8,000~10,000円が相場です。

自宅での葬儀と費用がセットになったプランもありますが、最低限のドライアイスしか付いていないことがほとんどです。長時間ご遺体を安置する場合は、追加でドライアイスが必要になることも考えておきます。

斎場・葬儀社や安置施設に安置

近年は自宅での安置が減り、斎場や葬儀社、専門の安置施設の利用が一般的となっています。斎場や葬儀社はご遺体の温度管理などを任せられることがメリットですが、面会時間に制限がある、または付き添いでの宿泊が許可されないことも。一方、専門の安置施設では24時間面会ができるところが多いものの、宿泊はできないこともあります。

安置専門の施設とは、ご遺体専用の冷蔵庫のようなものです。冷蔵庫の温度を下げることでご遺体の傷みの進行を遅らせることが可能です。さらに、ドライアイスと併用することで保全能力も高まります。費用相場は、1日8,000〜10,000円です。
自宅安置、斎場・葬儀社に安置のどちらの場合も季節や安置日数によって使用するドライアイスの量が変わります。しつこいようですが、プランやセットに記されているものは最低限なので、追加で費用が発生することがあります。気になる点は葬儀社や施設に確認すると安心です。

ドライアイスのご遺体への使い方

ドライアイスを使ったご遺体の保冷は葬儀社のスタッフがおこないますが、大切な家族への処置がどうされるのかは理解しておきたいもの。こちらではドライアイスの使い方を説明します。

脱脂綿などに包んで使う

一般的にドライアイスは4個で1セットになっています。ご遺体を保冷する際は、4個のブロックをそれぞれ脱脂綿などで包み、直接肌に当てないように注意します。これは、直接当てるとご遺体の肌が凍傷になってしまう恐れがあるからです。

腹部を中心に直下に置く

暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降するのと同様に、ドライアイスの冷気も下へ行きます。置いた直下のみに効果があるため、ご遺体の腹部を中心に乗せるのが基本です。

まずはお腹の辺りに2個のブロックを置き、残り2個のブロックは顔の横に置きます。横に置くと効果は半減しますが、外気にさらされるよりは良い状態を保てます。頭部を冷やすために首の下に置くなど、葬儀社のスタッフが状況に合わせて対処をしますので安心してください。

関節は冷やさない

関節はドライアイスが当たって冷えると固まります。故人の着替えや納棺時に支障が出ることもあるため、関節は冷やさないことが重要。ドライアイスは腹部近くで組んだ手の近くに置くので、手首の関節をタオルや脱脂綿などで保護します。

使うときの注意点

葬儀において、遺族がドライアイスを取り扱うことはほとんどありません。しかし自宅でご遺体を安置する場合は、注意点を知っておいた方が安心です。こちらでは、ドライアイスを使う際に気を付けることを見ていきます。

ドライアイスを絶やさない

自宅安置での留意点は、ドライアイスを常に絶やさないこと。夏は冷房の効く部屋でカーテンを閉め、冬は暖房を切って室温を下げます。他に、ドライアイスがきちんとご遺体に当たっているか確認することも大事です。

二酸化炭素中毒に注意する

ドライアイスが気化して二酸化炭素になると、空気より重いため低い位置に溜まります。それに気づかず横たわると、二酸化炭素中毒になってしまう恐れがあります。ご遺体のある部屋では眠らないようにしてください。

また、換気が不十分な状況でドライアイスが気化すると、酸素が足りなくなり意識障害を起こしてしまう恐れも。たまに窓を開けるなどして、十分な換気をすることが大切です。

ドライアイスを直接触らない

マイナス78.5℃のドライアイスは、じかに触ると凍傷を起こしてしまいます。必ず軍手などをして直接手で触らないように注意してください。

ドライアイスを適切に使用して、故人との時間を過ごす

大切な家族が亡くなったとき、葬儀は残された遺族にとって重要な儀式です。最後のお別れまで、故人にはできるだけ綺麗な状態でいてほしい……。そのための保冷にドライアイスが使用されています。葬儀場や安置施設でも使用されますが、特に自宅で安置をしたい場合は、ドライアイスに関する知識があれば、慌てずに対処できるのではないでしょうか。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。