寝台車と霊柩車の違いは?利用方法や費用についても解説

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寝台車と霊柩車の違いは?利用方法や費用についても解説
寝台車とは、病院から自宅や葬儀場などへご遺体を運ぶ車のことです。鉄道の深夜特急車両も同じ字を使いますが、別物です。また、類似したものに霊柩車がありますが、両者は見た目だけでなく使用する目的にも違いがあります。本記事では、寝台車を使用する目的や特徴、霊柩車との違いとともに、寝台車の利用方法と費用を解説します。

ご遺体を搬送する寝台車とは

まずは寝台車とは何か?について、使用する目的や特徴から見ていきましょう。

概要と使用する目的

寝台車とは、ご遺体を乗せて移動する車のこと。故人を病院から自宅、または葬儀場まで運ぶことを目的としています。病院ではご遺体を長く保管できないため、早めに移動させる必要があります。

寝台車には、出し入れできるストレッチャーや担架、同乗者のための座席が車内に備わっています。また、呼び方こそ違うものの、寝台車と搬送車は同じものです。

見た目の特徴

寝台車は病院から自宅へとご遺体を運ぶこともあるので、街並みに溶け込む普通車と同じようなデザインが好まれます。とりわけ落ち着いたデザインが多いのが特徴です。
車体の長さは若干異なりますが、寝台車の見た目は一般車とほぼ同じ。一般車を寝台車として改造したものが多数あります。一見すると寝台車だと分からないデザインが多いのは、故人が自宅に帰ってくるときに大げさにしたくないなど、近隣住民への配慮でもあります。

寝台車と霊柩車の見分け方

落ち着いたデザインの寝台車に対し、霊柩車は一目で「霊柩車だ」と判断できるデザインがあります。こちらでは、寝台車と霊柩車の違いと見分け方を詳しく解説します。

呼び方の違い

ご遺体を乗せて運ぶ車を総じて寝台車と呼ぶため、霊柩車も寝台車の仲間に属します。実際のところは、葬儀社は病院から自宅などにご遺体を運ぶ車を“寝台車”、葬儀場や自宅から火葬場まで柩(ひつぎ)を運ぶ車を“霊柩車”と使い分けています。

目的・乗り方の違い

前述の通り、霊柩車はご遺体が納められた柩を火葬場まで運ぶことを目的としています。同乗できる人数は少ないと2人ほど、多い場合でも5人程度です。故人の位牌や遺影を抱えている人が助手席に乗ることが基本とされます。

見た目の違い

霊柩車は、宮型(輿型)、洋型(リムジンタイプ)、バス一体型など種類が豊富です。霊柩車と聞いて多くの人が連想するのであろう宮型は、車体の上にお神輿(みこし)と同じような「輿(こし)」が乗っていて見た目が派手なので、一目で判別できます。しかし、時代の変化により宮型を利用する人は減っています。
一方、利用者が増加傾向にあるのが洋型の霊柩車です。高級セダンや大型のワゴン車を改造しているため、見た目は一般車と大差はありません。もう1つのバス一体型は、北海道など一部の地域で見られるタイプ。霊柩車とマイクロバスが一体化したもので、ご遺体と会葬者を効率良く運ぶことができます。
寝台車と霊柩車を見分けたいときは、前ドアを確認してみてください。霊柩車には、ドアの下部に「霊柩」あるいは「霊柩限定」と記されています。

無認可の寝台車に注意

寝台車を業務として利用する場合は、国土交通大臣からの認可が必須です。しかし、無認可で営業している搬送会社も存在しています。正しく許可を受けている寝台車のナンバープレートは緑色です。一方、無許可の寝台車は一般車と同じ白ナンバーがほとんど。タクシーやバスはもちろん、トラックや引っ越し屋さんの運送でも、お金をもらって運送、運搬するには認可が必要です。
仮に、白ナンバーの車を使っている葬儀社のスタッフが『当社は無償で搬送します』と言ったとしても鵜呑みにするのは危険です。人件費や車両経費がかかるため、葬儀費用のどこかに搬送費は組み込まれています。また、費用面以上に心理的な不快感が心配です。捉え方によってはグレーですが、ご葬儀後に後悔する人も少なくありません。

寝台車の利用方法と費用

病院で死去した場合はご遺体を安置する場所へ移動させるため、はじめに寝台車の手配が必要です。いざというときのために知っておきたい、寝台車の利用方法と費用を紹介します。

利用方法

葬儀社を事前に決めていた場合は、臨終後に連絡すると寝台車でお迎えにきてくれます。事前に依頼先を決めていなくても、スマホで「葬儀社 お迎え」「遺体 搬送」、「病院 お迎え」などと入力して検索すれば、近隣の葬儀社を調べられます。また、病院と連携している葬儀社に頼むこともできます。

その他、搬送だけを病院連携の葬儀社にお願いして、葬儀は他の葬儀社に依頼することも可能です。

費用の決め方

寝台車の利用には必ず料金が発生しますが、葬儀プランに基本料金として含まれることが多いです。その場合は、搬送費だけの金額は明らかにされないことも。搬送費の料金体系は各会社に任せられていますが、国土交通大臣に「適正である」と認可された運賃料金表に基づいて設定されたものです。

相場と追加料金の一例

寝台車の料金はタクシーのように走行距離に応じて設定されています。走行距離は「寝台車の車庫~お迎えの場所~安置する場所」の総計で決定します。
<相場>
  • ~10㎞:13,000円~20,000円
  • ~20㎞:1,6000円~23,000円
  • ~30㎞:20,000円~27,000円
  • ~40㎞:23,000円~30,000円
  • ~50㎞:26,000円~35,000円
その他、寝台車を利用するときの条件によっては、次のような追加料金がかかることもあります。
<追加料金の一例>
  • 早朝や深夜、悪天候の日に利用した場合
  • 車両を待機させた場合やその際の駐車場利用料金
  • 高速道路や有料道路を利用した場合

知っておきたい寝台車や搬送のこと

大切な人が入院している病院と安置する場所が離れている、自家用車で搬送したい、搬送時に思い出の場所に立ち寄りたいなど、寝台車や搬送に関して気になることが多い人もいるのでは。こちらでは、それぞれの解決方法を解説します。

搬送する距離が長いときは亡くなった地域の葬儀社に依頼する

亡くなった場所と、ご遺体の安置場所、もしくは葬儀をおこなう場所が遠方の場合は、亡くなった場所の葬儀社に搬送のみを依頼するのが賢明です。費用と心理面の両面からその方がいいと言えます。
例えば、亡くなったのが東京都内で、安置場所や葬儀をおこなう場所が熊本県だと仮定します。熊本県の葬儀社にご遺体の搬送を依頼すると、東京⇔熊本の往復料金が発生してしまいます。その他、熊本県から東京に向かう道中の交通事情などによって、病院から伝えられた搬出時間に間に合わないかもしれません。寝台車がいつ到着するのか、余計な気苦労をするのは避けたいところです。

自家用車でご遺体を搬送すること自体は問題ない

法律の観点からすると、遺族が自家用車でご遺体を搬送することは問題ありません。ただし、搬送時に「死亡診断書・死体検案書」を携帯しておく必要はあります。
ご遺体の搬送を「業務」としておこなう場合には法律が関わってきます。ご遺体を運べるのは、「一般貨物自動車運送事業」の許可を国土交通大臣から受けている事業者のみ。つまり、金銭の受け渡しがあると法律違反となります。
また、ご遺体の搬送は、死後硬直、体液の流出や損傷など、気を付けるべきポイントが多々あります。自家用車でご遺体を運ぶのは法律上問題ないとはいえ、専門家に任せた方が確実で安心できるでしょう。

寝台車で思い出の場所へ立ち寄ることもできる

病院から自宅、あるいは葬儀場へご遺体を寝台車で搬送するとき、故人と家族の思い出の場所へ立ち寄ることもできます。生前に「また一緒に行きたいね」と話していた海や公園などに寄ってみてはいかがでしょうか。故人との約束を果たせたと感じ、心が少し軽くなるかもしれません。
また、ご遺体を自宅以外に搬送する場合には、故人と一緒に自宅に一度戻ることも可能です。つかの間のひとときを自宅で過ごすことで、「我が家に帰りたい」という故人の願いを叶えられます。いずれの場合も、葬儀社のスタッフに相談して実現させてくださいね。

寝台車と霊柩車には、大切な人と想いが乗せられる

ご遺体を病院から自宅や葬儀場まで運ぶ寝台車と、柩を火葬場まで運ぶ霊柩車。使用する目的は違うものの、どちらも大切な人を乗せる車であることに変わりはありません。もしものときに後悔しないためにも、適切な手配をしてください。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。