【終活】人生会議とは。もしもについて大切な人と話そう

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【終活】人生会議とは。もしもについて大切な人と話そう
人生会議とは、人生の最終段階において自分の望む医療・ケアを受けられるよう話し合い、共有し、決定していく場です。本人の意思を軸に家族・医療チームと会議のように繰り返し話し合います。この記事では、人生会議の内容や進め方とともに、満足のいく終活をするポイントを紹介します。

人生会議とは何か

人は誰しも、どんなときでも、命にかかわる怪我や病気をする可能性があります。万が一のときのため、終活の一環として話し合う人生会議に取り組む人が徐々に増加しています。まずは、人生会議の概要や必要性、メリットから紹介します。

人生会議の概要

ACP(Advance Care Planning/アドバンス・ケア・ プランニング)という言葉(概念)があります。ACPとは、終末医療など人生の最終段階における治療やケアの内容・方針を信頼する人と繰り返し話し合い、決めていく取り組みを意味します。人生会議とはこのACPの愛称です。

厚生労働省が「人生の最終段階における医療の決定プロセス」としてACP(アドバンス・ケア・プランニング)を以前から推奨していました。しかし認知度が低かったため2018年に国民になじみやすい名前を求めてACPの愛称を公募。その結果、人生会議と名付けられました。同時に「いい看取り・看取られ」の語呂合わせになる11月30日を、人生会議の日と定めています。

人生会議の必要性

命にかかわる怪我や病気をしたとき、自分が望む生活や医療・ケアを叶えるには、自分の希望や価値観が重要な役割を担います。しかし、厚生労働省は、命の危険が迫った状態に陥ったうちの約7割の人は、自分の希望を考えられなくなる、または周囲に伝えられなくなるのが現実だと示しています。そうなってしまったときでも、自分の望む生活や医療を受けられるように、あらかじめ人生会議をして備えておくことが大切なのです。

人生会議をするメリット

自分が命にかかわる状態になったとき、今後のケアや治療方針を医療従事者などと話し合うのは、家族などの身近な人です。元気なうちに人生会議をおこない、自分の希望をあらかじめ伝えておけば、万が一のときに身近な人にかかる負担を軽減できる上、ケアや治療、生活の方針に、自分の希望が反映される可能性が高まります。

その他、人生会議は自分の希望や大切にしたい事柄を話し合うため、家族やパートナーがあなたの価値観に触れる良い機会になるかもしれません。

人生会議で考えておきたい2つの項目

人生会議では、主に「生活に関わること」と「治療・ケアに関わること」の2つの項目を軸に考えていくと良いとされます。それぞれの代表例を紹介するので、大切なことは何か考え、どれに該当するか確認してみてください。

1.生活に関わること

まず考えてほしいのが生活環境です。自分が怪我や病気をして、思うような生活を送れなくなった状況を想像してみましょう。そのとき、あなたは誰と過ごしたいと思うでしょうか。家族や大切な友人のそばにいることを望むのか、はたまた1人で過ごす時間を大切にしたいのか。きっと、自分が大切にしたい人や環境が浮かんでくるはずです。

最優先で維持したい活動方針も考えます。自分の身の回りのことはできる限り自分でしたい、仕事などの社会的な役割は続けたい、家族に負担をかけないように介助サービスを利用したいなど、人によって望むものは異なるでしょう。

また、忘れてはいけないのが金銭面です。仕事ができなくなった時に経済的に困らないためにはどうすればいいのか、また、家族に金銭面の負担をかけないために利用できる公共サービスはあるかなど、自分の希望する生活内容とお金について併せて考えてみてください。

2.治療・ケアに関わること

命にかかわる病気や怪我では、治療やケアを伴うことが想定されます。生活に関わることと同じく、自分が希望する医療とは何か、受けたい介護とは何かをイメージしてみてください。

例えば「少しでも長生きするため、できる範囲の治療を受けて病と闘いたい」と思う人もいれば、反対に「ただ延命するだけの治療は望まない」と感じる人もいるかもしれません。また、「痛みや苦しみがない治療・ケアをしたい」、「生活の質(QOL)を優先したい」といった希望もあることでしょう。

理想の医療方針などに加えて、終末期の治療やケアを受ける具体的な場所も検討しておくと良いです。最先端の医療を受けられる病院、家族と過ごせる自宅、身近な人の負担を軽減できるケア施設など、「誰と過ごしたいのか」「何を優先したいのか」を踏まえて考えてみてくださいね。

人生会議の進め方4ステップ

人生会議の進め方に決まりはありません。大切なのは、自分の素直な気持ちに向き合い、希望や願いを信頼できる人に伝え、話し合うことです。ここでは、厚生労働省が例として提示している進め方を紹介します。

1.自分の希望、大切にしていることを考える

先述した「生活に関わること」と「治療・ケアに関わること」を考え、希望を紙に書きだしてみることが人生会議の第一歩。自分の考えているものを可視化することで、内容が整理できるはずです。それと同時に「希望しない、嫌なこと」「自分にしてほしくないこと」も考えます。

2.信頼できる人は誰なのか考えてみる

希望を整理できたら「自分にとって、信頼できる人は誰なのか」と考えてみてください。ここの「信頼できる人」とは、自分の代わりに医療従事者などと話し合ってくれる人のことです。

もちろん「信頼できる人」に法的な制限はなく、財産分与などにも関係ありません。人によっては、友人や普段からお世話になっているケアマネジャー、施設の職員ということもあるでしょう。

また、「信頼できる人」は1人に絞る必要もありません。例えば「夫と長女で話し合って決めてほしい」と希望しても問題ないのです。

3.医師や信頼できる人と話し合う

「自分の希望・大切にしていること」と「信頼できる人」を考えたら、内容を正確に把握してもらうため、医師などの医療ケアチームや「信頼できる人」に希望を伝え、話し合いをします。
人の意見を聞くことで、自分の希望を実現する方法や内容に、修正が必要だと気づくこともあるかもしれません。希望を実現するために、病気のことや必要になるであろう治療内容を、かかりつけ医に質問してみるのもおすすめです。
また、話し合いの内容は紙にまとめておくと、いつでも見返せて便利です。

4.話し合いの内容を共有する

医療ケアチームの人と自分だけで話をした場合は、医師への質問も含めた内容を「信頼できる人」や家族に共有します。また、人の気持ちはその時々、状況で変わりますので、人生会議は何度も繰り返すことが大切です。いつも最新の希望を反映させてください。

人生会議をする上で知っておきたいこと

興味はあるものの、心の葛藤があって今すぐ人生会議を始められない人は、無理に始める必要はありません。ここでは、人生会議をする上で知っておきたいポイントを3つ紹介します。

1.無理をしてはいけないこと

人生会議は自分の望むケアや治療を受けるために役立つとはいえ、無理をしてはいけません。あくまでも、個人の主体性に任されたものですので、自分がやりたいと思ったときに考え、進めていけば大丈夫です。

また、自分が人生会議の話を聞く立場である場合も「今はまだ考えられない」という人に無理強いをしないように注意してくださいね。

2.エンディングノートを活用すること

終活の一環として人生会議を考えている人は、家族に自分の希望や想いを伝えられる、エンディングノートの活用も検討してみてはいかがでしょうか。
<記入する内容の例>
  • 終末期医療の方針、介護に関する希望
  • 葬儀やお墓に関する希望
  • 保険や年金などの番号
  • 財産や負債に関すること
  • 家族へのメッセージ
エンディングノートは書店などで販売されているほか、自治体が無料で配布していることもあります。また、形式に決まりはなく、自分に合うやり方で気軽に始められます。

3.リビング・ウィルを作成して医療に関する希望を残すこと

人生会議で話し合った内容のうち、終末期医療に関することは、「生前の遺言」と訳されるリビング・ウィルを活用する方法もあります。リビング・ウィルとは、終末期医療に関して、自分自身が「受けたい」「受けたくない」と感じること、治療の方針などに関する希望を、判断能力のあるうちに用紙へ記入し、意思を残しておくことです。

人生会議で意思を大切な人と共有して

人生会議と聞くと大げさに感じるかもしれませんが、そんなことはありません。もしものときにどんな治療やケアを受け、最後は誰と過ごしたいのか。それらを繰り返し考え、身近な人と会話し、共有することは大切なことです。人生会議などをおこなうことで、今この瞬間をもっと大事にしようと思うかもしれません。終活にはほかにもいろいろな方法があるので、下記の記事なども参考にしてみてください。