相続を「争族」にしないために、家族で今取り組むべきこととは?

コラム
相続を「争族」にしないために、家族で今取り組むべきこととは?
終活を考える上で避けて通れないのが「相続」です。家族葬のファミーユでご葬儀をおこなうお客様でも、お悩み度の高い問題です。そこで、専門家を招いたセミナーを実施し、相続について押さえておくべきポイントを紹介してもらいました。
家族にお金などの資産を少しでも多く残したいのならば、相続について事前の検討が必須です。
全国で年間8,000件以上のご葬儀をお手伝いしている(株)家族葬のファミーユ。「相続」に関するお悩みも常時寄せられています。

「お金」と「死」は、仲のいい親子や家族であっても触れづらい、人生の2大テーマです。この2つに直結している「相続」は、特に子供からは切り出すのが難しい話題。しかし、実際に「そのとき」が来れば、一番困るのは他でもない子供たちです。

そこで、家族葬のファミーユは2019年10月25日(金)に専門家を招いた相続セミナーを開催。「"その日"は突然やってくる!主役は親…でも困るのは子供!子世代がやるべき相続準備はじめの一歩」と題して、「相続」について学ぶ機会を設けました。

セミナーの内容に入る前に、「相続の基本」について押さえておきたいと思います。

親も子も知っておきたい「相続の基本」

相続とは

「相続」とは、故人が生前所有していた財産を、他の特定の人物が受け継ぐことを指します。もともとの財産の所有者(故人)を「被相続人」、新たな所有者(妻子など)を「相続人」と呼びます。

両者(相続人と被相続人)の関係には条件があり、誰もが財産を受け継げるわけではありません。基本的には故人の配偶者、子供、そして親、兄弟姉妹など、法定相続人として定められた親族に限られます。遺言書を作成すれば、それ以外の人物を直接指名することもできます。

また、法定相続では法定相続人の間で遺産を決められた配分で分割します。しかし、遺言書がある場合は原則として書いてある内容の通りにします。

遺産とは

相続人が被相続人から受け継ぐ財産を「遺産」と呼びます。例えば現金や預貯金が代表的な遺産です。この他にも株券などの有価証券・車・家財・貴金属や、著作権などの権利までもが相続の対象です。

また、ここで挙げた"プラス"の財産だけではなく、ローンや債務、未払いの料金など、借金のような"マイナス"の財産も受け継いでしまうことにも注意が必要です。

平成27年の税改正で、相続税が重くなった!?平成30年以降は法改正も。

平成27年には、相続税に関する改正がおこなわれました。大きく変わったのは、「相続税のかかる人が増えたこと」です。この改正では、法人税と所得税が減る計算になり、それを消費税と相続税でまかなう図式になっています。

平成30年には、さらに大きな「相続法」の改正がなされました。夫の亡き後も妻が家に住み続けやすくなる「配偶者居住権」といった新制度も令和2年4月からスタートしています。
時代に合わせて、税額や法改正がおこなわれています。まとめサイトなどでの古い情報には注意が必要です。

子を想う気持ちがアダに!?実はよくある相続争いの実例

それでは、いよいよここからは家族葬のファミーユ、田町葬儀スタンドでおこなわれた実際のセミナーの内容をご紹介します。今回の講師は相続診断士で『家族会議』を主宰する梶井成美さんです。
相続で重要なのは、遺言書です。それがあるかないかで手続きの仕方も変わる、と梶井さんは言います。
よく、「子供たちの好きにさせてあげたい」から、とあえて何もしない親がいたり、「なんだか言い出しにくい…」と遠慮して親に切り出せない子どもがいたりしますが、こうした考え方は改めるべきとも。遺言書がなく、生前の相続準備が不十分だとトラブルに発展しかねないからです。

セミナーでは、遺言書がなくて実際にトラブルに発展したケースが例示されました。
スライドで紹介されたのは、遺産の分配について兄妹で揉めているケースです。共同介護のすえ亡くなった母親から総額5,000万円(換算)の遺産相続が発生しました。詳細は、以下のとおりです。

・母親を兄妹共同で介護し見送った
・遺産の内訳は不動産がおよそ4,000万円、現金が1,000万円
・兄は、「おじいちゃんから受け継いだ家だから、長男のあなたがしっかり守るのよ」と母から伝えられていた
・妹は、「子供たちの養育費のためにも、いざとなったら家を売って分けてもいいわよ」と母から伝えられていた


遺産法定相続通りにすれば、兄妹で2,500万円ずつ受け取ります。ですが、兄と妹がそれぞれ母親から聞いていた相続の意向が異なっていたため、兄妹の間で意見が食い違ってしまいました。
「家を守れ」と母から伝えられていた兄は、故人の気持ちを尊重すべきという想いからも、母が遺した家を売却せず自分が引き継ぎたいと考えています。

一方、生前の母を毎週平日の5日間介護していた妹は、休日にだけ介護をしていた兄が4,000万円の家を相続するのに対して、自分の相続額が1,000万円となることが腑に落ちません。単純に「私の方が少ない」ということではなく、母親から直接「家を売って子育ての足しにして」と言われていたからです。それが亡くなった母の真の思いなのでは?と引っかかってしまうのです。

こうして並べると、母親が息子と娘それぞれに伝えた要望は矛盾しているようにも見えます。しかしそれは、それぞれと個別の場で話しているときに、その子のことを思って出た正直な気持ちだったのではないでしょうか。決して我が子たちのトラブルを望んでいたわけではないと想像されます。こうした「相手を思ったがゆえの言動がアダになる」ケースは、相続ではよく見られることなのだそうです。

これを防ぐためには、親の生前に家族の皆が集まった話し合いの場=『家族会議』が有効です。遺産相続においては、全員の同意を得ておくことが極めて重要なのです。

「お金」と「死」はタブー?いいえ、先送りこそトラブルの元です

家族会議の要点

実際に遺産相続についての『家族会議』はどのように進めればいいのでしょうか。梶井さんのお話から要点をまとめてみました。(※子から親にアプローチする場合)
家族の絆を深めるためにも、相続はしっかり話し合っておきたいテーマです。ただ、家族会議の準備だけは進められても、実際に話し合いの場を作るのは難しいものです。

必読!相続について話すときの5ヶ条

梶井さんはセミナーの最後に、子から親へ相続について切り出すときの5ヶ条を述べられました。「気まずい雰囲気になる」、「急に親が怒り出してしまう」などのトラブルを回避するために必要な要素です。

相続について切り出すときの5ヶ条

  1. まずは親の体や気持ちをいたわる言葉を伝える
  2. 具体的な相続対策は口にしない
  3. 親を問い詰めない
  4. 論点はしぼる
  5. 話し合いには家族全員を呼ぶ
子が親の「お金」と「死」について話すのはタブー視されがちです。親がまだまだ元気であれば、なおさらです。

しかし、相続の話し合いを避けるうちに年月は過ぎてしまいます。本当に考えるべきタイミングが来たときには親が年老いてしまい、話し合うのが難しくなってしまいます。

こうした事態を避けるためにも、早めに相続の話を切り出すのが望ましいと梶井さんは語ります。

首都圏在住 45歳OL、「現在進行形で兄と…」

実際にセミナーに参加していたDさん(45歳・OL)は、相続について家族で話し合うことができないまま「そのとき」を迎えてしまったと言います。
Dさん:「このセミナーには、父が亡くなったことによる相続発生がきっかけで足を運びました。

相続について、現在進行形で兄と揉めてしまっています。今回のセミナー内容を自分の経験と照らし合わせてみて、梶井講師の言う通り良くないケースになっていたんだなと感じました。父が生きている内に相続についてどうするべきかを、家族で話し合うことがまったくできていませんでした」
Dさんは父が亡くなったことがきっかけで、兄妹間で相続トラブルを抱えてしまうことに。本来ならば、家族一丸となって乗り越えるべき父の逝去という悲しみが、相続トラブルでさらに大きなものになってしまったのです。

今回のセミナーに参加して、今後どのように舵を切っていくべきかが見えてきたと語るDさんでしたが、兄妹間で争うなど、できれば回避したい経験のはず。親も子も、家族みんなで相続についての理解と関心を示し、同じ歩幅で話し合いを進めることが非常に大切だと言えるでしょう。

人生の最終楽章も家族円満に。悩んだら「家族葬のファミーユ」に相談を

家族葬のファミーユは、「ご葬儀は、思い出を持ち寄り、感謝の気持ちを分かち合い、ともに生きた証を胸に刻む場」だと考えています。ともに過ごす二度とない時間をゆっくり濃密に過ごしてほしいのです。しかし、今回のセミナーでお伝えしたように、相続の問題は家族の絆に亀裂を入れかねません。
「そろそろ年齢的に相続について考えたい」「分かっていてもどうやって切り出したらいいのか不安」そんな悩みを抱えている方は、ぜひ「家族葬のファミーユ」へご相談ください。お電話、ご来店ともに専門のスタッフが丁寧にお話しをお伺いします。
高齢社会が進む中、人生の最終楽章を考える「終活」に前向きに取り組む方が増えています。人生の幕をどう閉じるか?を考えることは、よりよく生きることと表裏です。ひとりで悩まずに行動してみることをおすすめします。