お経が葬儀で読まれる理由。お経の種類や合掌の意味も

お葬式のマナー・基礎知識
お経が葬儀で読まれる理由。お経の種類や合掌の意味も
葬儀でよく聞く「お経」。お経とは、お釈迦様の大切な教えがまとめられている文書(聖典)のことです。元々は、故人に向けたものではなく、生きている人に向けて作られました。本記事では「お経」の種類や起源、お経を聞く時におこなう動作の意味などを紹介します。

お経の意味と役割

まずはお経の意味と役割について見ていきましょう。お経に書かれている内容や、本来の役割について紹介します。さらには、葬儀などで読まれている理由についても解説します。

お経の内容

お経は、お釈迦様から伝えられた教えを弟子たちが再編したものです。「経典」や「仏典」とも言われます。はじめは口頭で伝えられ、後に文書化されました。種類は大きく、経蔵、律蔵、論蔵の3つに分けられます。これをまとめて、「三蔵」と呼びます。三蔵に詳しいお坊さんを「三蔵法師」と呼びますが、西遊記で有名ですね。

それぞれの内容を見ていくと、「経蔵」は、お釈迦様の教えをまとめたものです。「律蔵」は、弟子として守るべき規則をまとめたもので、道徳、生活のことなどが書かれています。そして「論蔵」は、経蔵と律蔵の2つを分析し、注釈や解釈がつづられたものです。

お経本来の役割

お経は、この世を生きている人が幸せな道を歩めるように、と作られました。

心の苦しみと向き合い続けたお釈迦様が、人々に伝えたアドバイスのようなもの、と考えればわかりやすいかもしれません。

葬儀などで読まれるお経の役割

葬儀で読まれるお経には、故人をあの世へ導いたり、やすらかに眠るように伝えたりする役割があります。また、大切な人を亡くして心を傷めている遺族や参列者を癒す役割も果たしています。

お経の起源と歴史

お経の基となる教えを説いたお釈迦様はどのような人物だったかご存知でしょうか?ここからは、お釈迦様のことを中心に、お経の起源と歴史、日本に伝わった時期などを紹介します。

お釈迦様(ゴータマ・シッダールタ)の人生

お釈迦様の本名は「ゴータマ・シッダールタ」です。紀元前5~6世紀に、インドの王家で生まれました。お釈迦様は悶え苦しむ人間の生き方について考えるようになり、人々が苦しみから救われる道を探すべく、周囲の反対を押し切って29歳で出家します。

お釈迦様は出家して、山林で断食などの苦行に徹します。6年が経っても悟りを開くことができずに苦行をやめ、今度はブッダガヤーの菩提樹(ぼだいじゅ)のもとで座禅を組みます。あらゆる欲望を避けて瞑想にふけるうちに、お釈迦様は宇宙の真理に目覚めます。この時、35歳になっていました。そして悟りを開いた彼は、あらゆる所へ足を運び、多くの人に自らの教えを説いて回ったと言われています。

45年もの間、自身の悟った教えの布教を続け、多くの弟子と信者を得ました。そして80歳のとき、弟子の阿難(あなん、アーナンダ)を伴い、故郷に帰る途中で病に倒れます。弟子から手にした水を一口飲み、沙羅双樹(さらそうじゅ)の白い花を咲かせて、その生涯を終えました。

お経を作ったのはお釈迦様の弟子たち

お経は、教えを説いてもらったお釈迦様の弟子たちにより誕生しました。お釈迦様が亡くなったのは諸説ありますが紀元前5世紀頃と言われており、この頃にお経の原型も生まれたと考えられています。

弟子たちは各地から集まり、それぞれが覚えている限りの教えをその場で共有しました。なかでもお釈迦様の従者であった阿難は、お釈迦様から最も多く教えを聞き、それを記憶していたとされています。しかも、今でいうイケメン(美男子)だったそうです。

日本に伝わったのは500年代

お経はインドから中国、朝鮮へ渡ったのち日本へと伝わりました。漢字で記されているものが多いのは、中国で漢訳されたものが多いからです。日本に伝わったのは奈良時代(500年代)であるとされています。これも諸説あり、朝鮮からの渡来人が既に伝えていたという話もあります。

現代の主なお経の種類

お経にはさまざまな種類があり、「八万四千」と表現されるくらい豊富です。代表的なお経と、それを読む宗派について紹介します。

般若心経(はんにゃしんぎょう)

「般若心経」はとくに広く知られているお経です。般若心経を読む主な宗派には、真言宗、天台宗、曹洞宗、浄土宗などがあります。

般若心経の正式名称は、「摩訶般若波羅蜜多心経(まかはんにゃはらみたしんぎょう)」、または、「般若波羅蜜多心経(はんにゃはらみたしんぎょう)」です。「般若」は智慧を、「波羅蜜多」は悟りを開くということを意味します。

法華経

般若心経と並ぶ有名な経典の1つに、「法華経(ほけきょう)」があります。法華経を読む主な宗派は、天台宗、日蓮宗です。正式名称は、「妙法蓮華経(みょうほうれんげきょう)」といいます。

法華経は、人だけでなく、動植物や大地などすべての生きとし生けるものに「仏の心」があるとしいるのが特徴です。

華厳経

続いては、「華厳経(けごんきょう)」です。華厳宗の根本経典になっています。華厳とは、仏になる修行を華にたとえ、徳を積んで仏になることを示した言葉です。太陽のように光を放っている仏様『毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)』について書かれた経典で、この光によって、迷っている人々を浄土である華厳世界に導きます。

ちなみに、奈良の大仏(東大寺の大仏)は、この毘盧遮那仏です。

阿弥陀経(浄土三部経)

浄土宗、浄土真宗、時宗では「阿弥陀経」が主流です。とても簡単で短いお経です。「小無量寿経(しょうむりょうじゅきょう)」や、「小経」とも呼ばれています。

阿弥陀経には、素晴らしいあの世「極楽浄土」の様子や、往生する(死んで仏になる)ための方法が説かれています。

お経の読まれる場でおこなう動作の意味

仏式葬儀などお経が読まれる場面で、当たり前のようにおこなっている「合掌」、「礼拝(らいはい)」、「読経」ですが、これらの動作にもきちんとした意味があります。

合掌(がっしょう)

顔や胸の前で、左右の手のひらを合わせる動作が「合掌」です。合掌は仏様を信じていることを表する動作の1つです。

右手は仏様そのものであったり、悟りの世界であったりします。そして左手は「自分」です。通夜や葬儀の場では、仏様と自分(衆生という)が一体となって、故人の成仏を願い、仏さまに故人の今後を託す気持ちを表現しています。キリスト教などでも似た動作はありますが、意味や細かな点が異なり、合掌は仏教特有のものといえます。

礼拝(らいはい)

「礼拝(らいはい)」は、合掌の姿勢で上体を45度くらい前方に傾けて、礼をして、ゆっくりと上体を起こす動作です。

礼拝には、お礼をするといった意味や感謝するなどの意味があり、祈ることではありません。また礼拝は、挨拶にも使われます。

読経(どきょう)

「読経」とは、お経を声に出して読むことです。記されている内容を覚えるため、もしくは人に教えを説くための行為です。

通夜や葬儀のときに亡くなった人の仏前で読経しますが、これは参列している親族や近しい人に説法するという意味もあります。

お経はお釈迦様からの贈り物

仏式の通夜や葬儀のときに読まれるお経。インドで生まれて2500年もの時が経っています。これほど長い間人々が信じ伝えてきたということは、多くの人がこの教えに助けられてきた証ともいえます。通夜や葬儀の場でも、お経にしっかりと耳を傾けたいですね。