合掌は成仏を願う気持ちを表す作法。由来や正しいマナーとは

お葬式のマナー・基礎知識
合掌は成仏を願う気持ちを表す作法。由来や正しいマナーとは
合掌は、仏を拝む際に胸の前で両手を合わせる所作のことです。葬儀や墓参りはもちろんのこと、食事の前後や相手への気持ちを表すときなど、日常生活でも合掌をする機会はたくさんあります。本記事では合掌の由来や意味、正しい作法などを紹介。思いを込めて合掌をするための参考にしてください。

合掌の由来や意味とは

合掌とは、顔や胸の前で両手を合わせて拝む礼法です。最初に、合掌の由来や意味について紹介します。

インド発祥の礼拝の作法で、仏教とともに伝来

合掌は、仏教が誕生したインド古来の礼法で、仏や菩薩を拝むことを意味します。本来は相手を敬うためにおこなう所作でしたが、仏を拝む際の作法として常態化。その後、仏教を通じて日本に伝わりました。

左右の手を合わせて成仏の世界を表現

インドでは、右手が「穢れのないもの」左手が「穢れたもの」とされ、仏教においては、右手が極楽、左手がこの世(命あるものの世界)を表しています。両方の手を合わせることですべてが1つになり、成仏を願うことができます。合掌は相手を敬う気持ちを示すことにもつながっています。

日本で合掌をするシーン

合掌は、亡くなった人の安らかな眠りを願うときや仏を拝むとき以外にも、さまざまなシーンで使われます。ここでは、日本独自の合掌の意味を紹介します

お通夜や葬儀・告別式

お通夜や葬儀・告別式は、亡くなった人をあの世でも幸せになれるようにと送り出し、この世の人たちとお別れをするためにおこなわれる儀式です。特に仏教形式の仏式葬儀では、故人を見送る人たちが合掌をすることで、人と仏が1つになって「亡くなった人が無事に浄土へ辿り着けるように」と拝みます。

仏壇やお墓に拝むとき

日本には、墓や仏壇に合掌し、亡くなった人に思いを馳せる礼法があります。なかには、合掌をしながら墓や仏壇に語りかける人もいますね。亡くなった人の面影を墓や仏壇(位牌)に重ね、あたかもそこにいるように話しかけることで、その場所やものを大切にする思いを持ち、喪失の悲しみを癒すことにもつながると考えられます。

日常生活

誰かに何かを頼むときや謝罪するとき、また、食前や食後の挨拶など、日常生活の場面で合掌することがあります。これは、相手への経緯や食べ物に対する感謝の気持ちを込めた作法です。

仏教が広まったアジア各国でも、人と顔を合わせたり、別れたりするタイミングで手のひらを合わせる習慣があり「あなたを大切に思っています」「敬いの気持ちがあります」との意味があるとされています。

仏事における合掌と焼香の正しい作法

仏壇を拝むときや墓参り、葬儀などの仏事では、合掌をするシーンが多くあります。いざというときに困らないよう、正しい合掌の仕方を覚えておくと安心。そこで、ここでは合掌の作法について紹介します。

心を込めて落ち着いた所作で合掌をおこなう

合掌で大切なのは、心を込めて丁寧におこなうこと。まずは、隙間ができないように各指をきちんと閉じ、左右の手のひらを胸の前辺りで合わせます。この時の腕の角度は体を軸に45度。手のひらは、少し体から離します。この体制で目を閉じて、頭をさげて軽くお辞儀をします。数秒後、体制を戻し、合わせた手をおろします。
以上が基本姿勢ですが、手やお辞儀の角度や目をつぶる、つぶらないなど、合掌のスタイルは宗派によって違いがあります。

焼香の際は、最後に合掌をする

通夜・葬式でおこなわれる焼香は、故人や仏を拝む行為です。仏教には、焼香の香りは仏の食物であるという考えがあります。
自分の焼香の番が来たら、香炉台の前で遺族と僧侶に1度頭を下げた後、香炉の方を向いて再び1度だけ頭を下げます。数珠は左手にかけ、右手の親指・人差し指・中指で抹香を少量つまみ、眉と眉の間に近づけた状態で黙祷します。まぶたを開き、抹香を擦るように炉にくべ、この後、合掌します。ちなみに、1回~3回に分けて抹香を炉にくべる宗派もあります。

【宗派別】合掌と礼拝

仏教では読経の際に合掌をしますが、宗派によって礼拝のタイミングと数珠のかけ方には違いがあります。ここでは、代表的な宗派の合掌と礼拝、数珠の持ち方について紹介します。ただし、宗派が同じでもお寺や僧侶の考え方によって違う作法の場合もありますのでご注意ください。

浄土真宗

浄土真宗本願寺派も真宗大谷派も数珠をくぐらすように両手にかけ合掌のかたちを作り、数珠は親指で押さえます。この時、房は下に垂らしたままです。

本願寺派は、本尊の前で「南無阿弥陀仏」と唱えた後、手を合わせた状態で体を45度くらい傾け、一礼。傾けた体を元に戻し、合掌を終えます。

大谷派は、手を合わせている間の礼はおこないません。合掌をする前と終えてから、軽く頭を下げます(頭礼)。

浄土宗

浄土宗は、指を閉じて合わせた手を胸の前で45度ほど倒すのが、合掌の基本。数珠は、珠の輪を2連で組み合わせたもので、人差し指と親指の間に挟みます。手を合わせたまま、腰から上を45度ほど傾けて礼をおこない、元に戻します。

日蓮宗

日蓮宗で合掌をするときは、十指すべてついた状態にします。膨らんだり、親指を立てては美しい形とは言えません。数珠は二重にし、房を下にした状態で左手にかけます。
日蓮宗には僧侶用の装束(しょうぞく)数珠と、一般用の勤行(ごんぎょう)数珠があります。勤行数珠は菊房・玉房と呼ばれる、丸い形をした房が付いています。短房・中房・長房と3種類の長さがありますが、長いのは僧侶用なので、一般の人は短房を使います。

真言宗

真言宗で読経をするときには、合掌したまま3度礼をしてから数珠を優しく擦り、左腕にかけます。読経を終えたら数珠を両手にかけて手を合わせ、仏に祈ります。最後に再び3度礼をして、終了です。
真言宗の数珠は、108の主玉に加えて、2つの親玉と4つの四天玉がつながった一連形で、梵天房がついています。

天台宗

天台宗でも読経時に合掌をします。その際には胸の前に両手を上げ、自然に合わせます。ただし、必ず合掌するものではないようです。
読経前に2回、読経が終わる毎に1回、すべての読経を終えたら3回、鈴(りん)の音を響かせるのが特徴で、数珠は108の主玉に1つの親玉、4つの四天玉を使ったものを用います。

曹洞宗・臨済宗

日本三大禅宗に数えられる曹洞宗と臨済宗。座禅によって悟りを得ることで、死後の浄土へつながると考えられています。両派では、合掌した状態で立つ立拝、座った状態で合掌する座拝をおこないます。108の主玉を備えた数珠を2重にし、左手の人差し指と親指の間に挟んで合掌します。

仏教以外の宗教でも合掌をする?

合掌は仏教の言葉ですが、他の宗教でも礼拝やお祈りを捧げる際に手を合わせることがあります。ここでは、神道とキリスト教の手の合わせ方や意味を紹介します。

神道は拍手で手を合わせる

神道では、拍手(かしわで)という手を合わせる行為があります。神社では二礼二拍手一礼にての参拝が一般的です。両手を合わせる拍手は神への感謝をあらわすために打つとされます。

また、神道のお葬式「神葬祭」でも手を合わせる行為があります。玉串奉奠(たまぐしほうてん)という作法で、お辞儀をした後に紙垂(しだ)がついた榊の枝(玉串)を捧げ、二礼二拍手一礼をおこないます。仏式葬儀の焼香にあたる作法と言われ、この時の拍手は音を立てない「しのび手」になります。

キリスト教では胸の前で両手を合わせる

胸の前で手を合わせ、神に祈るのがキリスト教の作法です。まぶたを閉じて祈る間、神と会話することを重要視しています。手を合わせる方法に厳格な定めはありませんが、左右の指を交差させたり、親指で十字を作ったりして手を握るのが一般的。軽く握った手のひらの間に空洞ができ、そこに神が宿ると言われています。

正しい意味や作法を知り、心を込めた合掌をしよう

インドから仏教とともに伝わった合掌は、日本人の生活に深く根ざした作法です。仏式の通夜や葬儀・告別式では、亡くなった人の安らかな眠りを仏に願い、手を合わせます。正しい所作や意味を知ることで、故人への気持ちをさらに深められるのではないでしょうか。また、日常生活でも感謝や敬意を表すために合掌することがよくあります。どのようなときも心を込めた合掌で、思いを伝えてください。

この記事の監修者

瀬戸隆史 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユをはじめとするきずなホールディングスグループで、新入社員にお葬式のマナー、業界知識などをレクチャーする葬祭基礎研修などを担当。