縁起のいい「大安」にお葬式や法事はおこなっても問題ないのか

お葬式のマナー・基礎知識
縁起のいい「大安」にお葬式や法事はおこなっても問題ないのか
大安とは中国から伝わる、日の吉凶を占う六曜(ろくよう)の1つで、縁起が良いとされている日です。日本でも冠婚葬祭の際に六曜を意識する人は多くいますが、大安にお葬式や法事を執りおこなって問題ありません。なんとなく避けられがちな大安と弔事の関係性をお伝えします。

大安の基本情報

カレンダーを見たときに「大安」や「仏滅」といった言葉が気になる人も多いのではないでしょうか。これらは、六曜(ろくよう)と呼ばれる暦の要素の1つ。日本でも古くから大切にされてきたものです。お葬式との関係性の前に、まずは大安の読み方や由来といった基本情報から紹介します。

大安の読み方と由来

まず、「大安」は「たいあん」または「だいあん」と読むのが一般的です。「やすらか・おだやか・落ち着いている」といった意味が込められた「泰安(たいあん)」が使用されるようになった後、何事も順調に進む「大いに安し」を意味する「大安」が使われるようになりました。

大安は六曜の1つ

そもそも大安とは、暦の注意書きである暦注(れきちゅう)として、その日の吉凶を占う六曜(ろくよう)の1つです。中国で誕生した後、14世紀ごろ日本に伝わったとされています。六曜は、その名前の通り6種類あります。その中で最も良い「吉の日」とされているのが大安です。

縁起が悪い日と伝えられているのは「仏滅(ぶつめつ)」と「赤口(しゃっこう)」です。大凶日で万事に凶とされる仏滅は、以前はすべてが虚しいという意味の「物滅」と表記されていました。

赤口は、時間帯で見ると正午の前後以外は1日のほとんどが凶。「赤」が血や火を連想させるので、火の元や刃物に気を付けるべきと考えられています。

「先んずればすなわち勝つ」といった意味が込められた「先勝(せんしょう)」は、急な用事や訴訟には吉日と伝えられています。反対に、「先負(せんぶ・せんまけ)は、「先んずればすなわち負ける」という意味で、普段よりも平静を守ると良いそうです。

6つ目の「友引(ともびき)」は、勝敗がつかない「共引き」という意味です。本来は良くも悪くもない日を指していましたが、陰陽道などの影響で友引と表記するようになった、と考えられています。ご葬儀では『友引』を避ける地域もあります。詳しくは、下記のリンク先をご確認下さい。

大安は縁起が良い日

「大いに安し」という意味がある大安は、どんなことも平穏に、また安泰に進む縁起の良い日と言われています。結婚式はもちろん、家の建前や引き渡しなど、新しい物事を始める日に適しているそうです。また、「安全に長く乗れますように」といった願いを込めて、車の納車日を大安に合わせる人も見受けられます。

大安・仏滅とお葬式の関係性

結婚式や法事といった冠婚葬祭の日取りを、六曜を基準に決める人も多いことでしょう。縁起が良い日とされている大安と万事に凶とされる仏滅に、弔事であるお葬式やお通夜を執りおこなっても問題はないのでしょうか?続いては、大安や仏滅とお葬式の関係を解説します。

大安にお葬式をおこなう人は少ない

結納や結婚式など慶事の印象が強い大安に、お葬式をおこなうことを不安に思う人も多いのではないでしょうか。お葬式やお通夜は、亡くなった人を悼む大切なセレモニーです。おめでたい印象がある日を選ぶことをマナー違反や不謹慎と感じる人もいます。トラブルを避けるために大安にお葬式をおこなう人は少ないのです。

大安に弔事・お葬式をしてもいい

本来、六曜は仏教とは関係がなく、方角や時刻などに絡めたその日の運勢や吉凶を意味します。「大いに安し」という意味を持つ大安は、やってはいけないことが何もない日のことです。そのため、大安の日にお葬式やお通夜といった弔事を執りおこなっても問題はないとされています。

ただし、地域や故人の考え方によって、大安の日にお葬式やお通夜を執りおこなうことに対し、疑問を抱く人がいるかもしれません。お葬式などの日程に関して不安に思うときは、まず最も良識のありそうな親族に地域の風習を確認し、なお不明な場合やセカンドオピニオンを求めたい場合は近隣住民や葬儀社などに確認を取れば安心です。

吉凶の日取りでお葬式を繰り延べることは構いませんが、暑い時期であれば遺体の損傷が気になります。首都圏では、死亡者数が増えて火葬場の予約を取ることも年々大変になっています。このような事情を鑑みても、迷信と信心は分けて考えられればその方が良さそうです。

仏滅のお葬式も問題ない

仏滅は、結納や結婚式のようなお祝い事は避けられる傾向にあります。お通夜や葬儀・告別式はお祝い事ではないので、仏滅におこなっても構わないでしょう。また、本来六曜と仏教には関連性がないため、仏式のお葬式をいつ執りおこなっても問題はありません。仏滅のお葬式については、下記のページを参照ください。

大安と法事の関係性

お葬式だけでなく、四十九日や一周忌などの法事でも、六曜を気にする人が多いようです。お葬式は大安でも問題ないですが、法事はどうなのでしょうか。続いては、大安と法事の関係性を解説します。

大安と法事は関係ない

仏教では、亡くなった人の冥福を祈るため、法要と呼ばれる供養の儀式をおこないます。これに食事などを含めた一連の行事を法事と言います。

宗派によって若干の違いはありますが、逝去してから49日目を忌明け(きあけ)とし、喪に服す期間を終えます。それまで、日単位(7日ごと)の忌日法要(きじつほうよう)があり、読経などをして故人の死を悼みます。特に重要視されているのが最初の7日目の「初七日(しょなのか)」です。最近では葬儀当日に参列者と一緒に初七日法要をするケースも増えています。その後は、四十九日の法要時に納骨をします。

忌明けを迎え納骨を済ませた後は、年単位での年忌法要(ねんきほうよう)をおこないます。一周忌、三回忌、七回忌、十三回忌と続き、三十三回忌または五十回忌で弔い上げ(法要を終えること)とするのが一般的です。

法事・法要は、おめでたい印象がある大安を避けた方が良いと考える人も多いかもしれません。しかし、大安と仏教行事の法事は関係がありません。そのため、忌日法要や年忌法要を始めとするすべての法要は、大安でも問題なく執りおこなえるのです。

法事は人が多く集まる日に

一周忌や三回忌といった年忌法要は、基本的に故人の命日におこないます。しかし、最近では多くの人に参列してもらえるように、命日に近い土曜日や日曜日、祝日におこなうことも増えてきています。

休日に法要や法事をおこなうときは、命日より早い日程を設定するようにしてください。休日は予約を取りづらい恐れがあるため、希望する日程をお寺に早めに相談しましょう。

このように、法事の日取りは、六曜の1つである大安かどうかを意識するよりも、人が多く集まれる日に設定すると良いのではないでしょうか。ただし、お住まいの地域や親類縁者の考え方によっては、大安の日を気にする人もいます。そのため、参列する親族の意向を確認することも大切です。

大安のお葬式の前に大切なこと

日本人の暮らしの中に広く浸透している六曜ですが、宗教性はなく、お葬式や法事のルールとは無関係です。そのため、大安に、お葬式や法事をおこなっても問題ありません。大切なのは、日の吉凶よりも故人を想う気持ちと参列者への配慮です。親族や参列者の集まりやすさを考えて、お葬式や法事の日程を決めてくださいね。