落雁をお供え後に美味しく食べるには?贈答向きの品も紹介

お葬式のマナー・基礎知識
落雁をお供え後に美味しく食べるには?贈答向きの品も紹介
落雁(らくがん)は、仏前へのお供え物や茶席菓子として知られる干菓子です。お盆やお彼岸に供えた後には固くなってしまい、そのままでは食べにくいと感じる人もいると思います。この記事ではお供え後の落雁を美味しく食べるアレンジアイデアや、贈答用にもおすすめの落雁を紹介します。

伝統的な和菓子「落雁」とは

落雁は、微塵粉(みじんこ)と呼ばれるもち米の粉をはじめとする穀粉(こくふん)と砂糖、水飴で作られた和菓子です。材料を木型に入れた後に固めて打ち出す製法のため、「打ちもの」「打ち菓子」とも呼ばれます。落雁と似たお菓子として知られる和三盆(わさんぼん)も同じ打ちものです。ただし、和三盆には粉や水飴は使われないため、落雁とは違うお菓子とされています。ここでは、落雁の歴史やその名前の由来、お供え物としての起源などを紹介します。

落雁の歴史

落雁は西アジアから中央アジアで生まれ、室町時代(14世紀〜16世紀)に日明貿易を通じて日本に伝わりました。室町時代は茶の湯(茶道)が誕生した時代です。茶の湯文化は権力者たちに浸透していき、茶菓子として出された落雁も広く愛されました。

また、江戸時代に中国から長崎に再上陸した新たな落雁「口砂香(こうさこ)」も茶の湯文化の定番として親しまれています。落雁は茶の湯文化に欠かせない存在として、多くの人を楽しませた和菓子と言えるのではないでしょうか。

名前の由来

落雁の名前には、由来となる説がいくつかあります。一つは、中国の明時代(14世紀〜17世紀)に、日本に伝わった「軟落甘(なんらくかん)」というお菓子が基になっているという説です。軟落甘は、もち米の微塵粉に砂糖や水飴を加え、型に入れて作るお菓子のこと。製法が似ているため、落雁のルーツとされています。この「軟落甘」が「落甘(らくかん)」と呼ばれるようになり、次第に「落雁」になったと言われています。

もう一説には、近江八景の「堅田落雁(かたたのらくがん)」の情景にちなみ「落雁」と名付けられたというものもあります。空から降りてくる鴈(がん)を「落雁」と言いますが、当時の干菓子がこの形に似ていたことから、名所の名前をとったとも伝えられています。

落雁がお供え物になった理由

もともとは茶の湯文化で親しまれていた落雁がお供え物となった理由には、諸説あります。落雁の原料である砂糖、特に白い砂糖は高級品として知られていました。また、白は仏教の葬儀で死装束に使われる色です。「故人に高級品をお供えしたい」「俗世に染まらない白装束を想起させる」との理由から白の落雁が選ばれた説があります。

他に、目連(もくれん)僧侶の「百味飲食(ひゃくみのおんじき)」を起源とする説も存在します。かつて、目連僧侶は餓鬼道(がきどう)に堕ちた母を救うために、沢山の僧に食べ物を施す「百味飲食」の行をおこないました。百味飲食には美味しい食べもの、特に甘いものが良いとされていたので落雁をお供えしたとされています。

不幸が続かないという願掛けにも

落雁は干菓子なので、ある程度の時間が過ぎたら食べる消耗品です。食べたら消えることから、「不幸も消える」と願掛けの意味が込められています。このように落雁の歴史や供物とされてきた理由がわかると、落雁をお供えすることの大切さが理解しやすいのではないでしょうか。

落雁の簡単アレンジ

お供えした落雁は固くなり、あまり美味しくありません。そこで、お供え後の落雁をおいしく食べる簡単なアレンジを集めました。落雁の主な原料は砂糖なので、おろし金などを使って粉状にしてアレンジするのがポイントです。落雁の良さを引き出して、食べて供養をしましょう。

①飲みものに

おろし金やフードプロセッサー、ミルなどを使って粉末にした落雁は、砂糖のように使用できます。コーヒーや紅茶などの飲みものに入れて使うのがおすすめです。上品な甘みが加わり、美味しく味わえます。
また落雁には澱粉が含まれているため、飲みものに入れると、とろみが出ます。その特徴を活かして、甘酒や生姜湯を作っても美味しいです。柔らかなとろみがつくことで、口当たりが良くなります。

②ヨーグルトに

プレーンヨーグルトに粉末にした落雁を入れる方法もあります。白いヨーグルトに色つきの落雁の粉末を混ぜると、見た目にもきれいな仕上がりになり、写真映えのするデザートとして食べられます。落雁だけでなく、フルーツを乗せるなどの工夫をすれば、さらに豪華な一品になるでしょう。お好みに合わせてトッピングをしてください。

③焼き菓子に

粉状にした落雁をクッキーやホットケーキ、パウンドケーキを作る際の砂糖代わりとして使うのもおすすめです。固くなった落雁をそのまま食べるよりも、他のお菓子に生まれ変わらせれば食べやすくなります。

④シュガートーストに

朝食にもぴったりなアレンジが、シュガートーストです。まずは、トースターで焼いた食パンにバターかマーガリンを塗り、溶けかけたところで粉末にした落雁を振りかけてください。余熱で全体に溶かしたら出来上がりです。バターやマーガリンの風味と落雁の甘みが合わさった美味しいトーストが楽しめます。

おしゃれで贈答用にもおすすめの落雁

長い歴史を持つ落雁は、日本各地で愛されてきました。日本三大銘菓に選ばれることがあるほど、落雁は日本人に馴染みのあるお菓子と言えます。ここでは、贈答用にもなるおしゃれな落雁を紹介します。贈る相手が喜ぶ、見た目も華やかな落雁をぜひ取り入れてみてください。

花うさぎ

石川県金沢は、江戸時代に菓子製造を推奨していた加賀藩と縁が深い土地です。嘉永2年(1849年)、金沢に創業した老舗和菓子屋「諸江屋」はさまざまな落雁の製造販売で知られています。特に「花うさぎ」は、花の形の落雁を和紙で包んだ姿がうさぎに似て可愛く、糒(ほしいい)と和三盆糖を使用した上品な味わいが魅力です。

朧落雁

「朧落雁(おぼろらきがん)」は、奈良県天理市の御菓子司「丹波屋善康」の新作落雁です。きなこやラムネ、紅茶、フルーツなどの他とは違ったユニークな味わいの落雁がそろいます。見た目はシンプルで、おしゃれな印象を与えられるのも特徴です。家紋や仏教系、神道系といった宗教に関連する紋入りの落雁もあります。

花落雁 華やぎ

創作和菓子を手掛ける「和菓子屋 悠(ゆう)」の「花落雁 華やぎ」もおすすめの落雁です。10種類の美しい花をかたどった落雁が桐箱に入っています。華やかで高級な雰囲気があり、贈答用にふさわしい印象を与えられます。

ハーブのらくがん

2人の和菓子職人が手掛けた、愛らしい和菓子が注目を集める「wagashi asobi」の落雁です。「ハーブのらくがん」は、ローズマリーやハイビスカス、カモミールを素材にしているのが特徴。ハーブの他に、柚子や苺などフルーツを素材にした落雁もあります。ローズマリーの清涼感や苺の甘酸っぱさなど、素材ごとの美味しさを堪能できます。

ochobo

「今」の和菓子を作ることをコンセプトとした「UCHU wagashi」の落雁も見逃せません。ひと口サイズの落雁「ochobo」は抹茶、ほうじ茶、ジャスミン茶といったティーフレーバーがそろいます。お茶の香りを損なわないように柔らかな和紙を使い、手作業で丁寧に包んでいます。また8種類の動物をかたどったココアとバニラ味の落雁「animal」もおすすめ。愛らしい見た目で、ほっこりとした気分になれそうです。

お供え後の落雁を美味しく食べよう

古くから多くの人々に愛され続けてきた落雁は、お供え後もアレンジ次第で美味しく食べられます。飲みものに入れたり、手作りお菓子に使ったり、好みのアレンジを取り入れてはいかがでしょうか。「落雁のぼそぼそとした食感が苦手」という人もいますが、近年はおしゃれで食べやすい落雁も続々と登場しています。贈答用としてもおすすめなので、ぜひお気に入りの落雁を見つけてください。