臨済宗における葬儀のマナーとは。流れも知ってから参列を

お葬式のマナー・基礎知識
臨済宗における葬儀のマナーとは。流れも知ってから参列を
臨済宗とは日本三大禅宗の1つで、葬儀で僧侶が「喝」と叫ぶことで有名な宗派です。葬儀は宗派によってマナーや流れが異なります。自分の宗派以外の葬儀に参列する際は、事前に大まかな内容を確認しておくと安心です。本記事では、臨済宗の歴史や教えといった基本情報とともに、臨済宗の葬儀マナーと特徴、大まかな流れを紹介します。

臨済宗について

臨済宗が日本に広まったのは鎌倉時代から室町時代のことです。まず初めに、臨済宗の歴史や宗派の数、教えの特徴から紹介します。

歴史

臨済宗は、曹洞宗、黄檗宗(おうばくしゅう)と並んで評される、日本三大禅宗のうちのひとつです。禅宗は中国で起こった、座禅を重んじる仏教の一流派で、「だるまさんが転んだ」などの遊びになるほど親しまれている達磨大師が開祖です。

達磨大師から200~300年後の8世紀頃に登場した、臨済義玄(りんざい ぎげん)禅師が臨済宗の宗祖とされています。中国の禅宗五家のひとつとも言われます。

日本には、鎌倉時代に明菴栄西(みょうあん えいさい)禅師が、中国の南宋から持ち帰ったのが臨済宗の一流派の教えとされています。その後、江戸時代に白隠慧鶴(はくいん えかく)禅師が、日本臨済宗として広めたと伝えられています。

宗派の数

鎌倉時代に中国から日本へ伝わった禅は46伝もあったそうです。その後、弟子が受け継ぐなどして流派を確立できたのは24流。現在の臨済宗には、妙心寺(みょうしんじ)派、南禅寺(なんぜんじ)派など14の宗派があります。

教えの特徴

臨済宗などの禅宗では、悟りを開くために座禅が重視されています。浄土宗や浄土真宗は念仏を唱え、自然に身を任せることで誰でも浄土へ仏様が導いてくれる「他力」の考えを持ちますが、臨済宗は座禅をすることで自らに備わっている仏様の力に気づき悟りを得るという「自力」の考えが特徴です。
臨済宗は「看話禅(かんなぜん)」を修行に取り入れています。臨済宗では、師から公案(禅問答とも言われる問題)を出された弟子が座禅をしながら答えを考えることで悟りに向かう、と考えられています。
また、臨済宗に特定の本尊(ほんぞん)はありませんが、「釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)」を祀ることが多いです。

臨済宗における葬儀の特徴

臨済宗の葬儀は、3つの儀式から構成されていることと、僧侶が叫ぶことが大きな特徴です。それぞれ詳しく解説します。

主に3つの儀式から構成される

臨済宗の葬儀は「故人が仏の弟子となって修行の道に入り、自分の仏性(ぶっしょう)に目覚めるための儀式」という意味合いがあります。ここで言う仏性とは、言葉による理解を超えたものを理解できる能力のことです。
葬儀は、授戒(じゅかい)・念誦(ねんじゅ)・引導と、3つの儀式から構成されています。
  • 授戒:故人が仏門に入るために、戒律を授けるための儀式
  • 念誦:僧侶が経典を読み上げる儀式
  • 引導:導師が故人を仏門へ導き入れ、浄土へと旅立たせる儀式
ちなみに、臨済宗の経典は多くのお経を用いるため、特定のものはありません。

葬儀の後半で僧侶が「喝」と叫ぶ

後半におこなわれる引導法語(いんどうほうご)という儀式の中で、お経を読んでいる途中に僧侶が「喝」と叫ぶのも、臨済宗の葬儀における大きな特徴です。これは、故人の現世への未練を断ち切り、正しい道へ進ませるため。つまり僧侶の「喝」には、仏の道へ故人を正しく歩ませる、という意味が込められているのです。

臨済宗の葬儀の流れ

先述したように、臨済宗は14もの宗派があります。宗派によって葬儀の流れには若干の違いがありますので、ここでは一例を紹介します。

1.導師の入場から始まる

葬儀は導師が入場してから始まります。導師とは、葬儀を執りおこなう僧侶のことです。参列者は席に座った状態で導師を迎えます。
導師の入場後におこなわれるのが、剃髪の儀式です。ただし、これは剃刀を当てるだけで実際には剃りません。この儀式の間、導師は剃髪の偈(ていはつのげ)という経文を読んでいます。
次は、懺悔文(さんげもん)と、三帰戒文(さんきかいもん)に進みます。懺悔文は、故人が生前の行動を反省して懺悔することを促す儀式。三帰戒文は、仏様の教えを学び、仏・法・僧に帰依することを誓う儀式です。
剃髪から三帰戒文までの一連の儀式は、故人が仏様の弟子になる準備と言えます。

2.仏様の弟子になったことを証明する

故人を清めるため、洒水灌頂(しゃすいかんじょう)と呼ばれる儀式をおこないます。本来は、水を棺の中に注いでいました。しかし、最近はコップに入れた水の水滴を木の葉や枝を使って故人の身体、もしくは棺の上に飛ばすことが多いようです。
次に、血脈(けちみゃく)授与に進みます。血脈とは、仏様の弟子になった証拠のこと。香を焚き、“血脈”と大きく筆書きされた紙を、故人の霊前にお供えします。ここまでが授戒に該当する内容です。

3.僧侶が複数のお経を唱える

ここからは、血脈授与によって仏様の弟子となった故人を、あの世へと導く意味を持つ儀式が始まります。
ご遺体を棺に納める際の儀式は、大悲呪(だいひしゅう)と、回向文(えこうもん)、2つのお経を読む入龕諷経(にゅうがんふぎん)です。棺を閉める際は、大悲呪と回向文を再度唱えた後、十仏名(じゅうぶつみょう)という短いお経を読む龕前念誦(がんぜんねんじゅ)をおこないます。
出棺のときは、起龕諷経(きがんふぎん)と呼ばれる儀式で、大悲呪と回向文を再度唱えます。次におこなうのは、山頭念誦(さんとうねんじゅ)という儀式。成仏を祈るお経「往生咒(おうじょうしゅ)」を唱え、火葬後に故人が成仏できるように祈ります。ここまでが念誦に該当する内容です。

4.故人の魂を送り出す儀式をおこなう

念誦までが終わったら、故人の魂をあの世に送り出す引導の儀式へ進みます。引導法語では、導師が法語である引導を唱えます。実際の葬儀では、故人の生前の徳を讃美する漢詩を作り、それを唱えることもあるそうです。
引導法語が終わると、葬儀は一区切り。この後は焼香、出棺へと進みます。

臨済宗の葬儀マナー

臨済宗ならではの葬儀マナーや作法が存在しますので、葬儀に参列する前に要点を押さえておくと安心です。こちらでは、焼香・数珠・香典のマナーを紹介します。

焼香の回数

焼香の細かいやり方は宗派によって違いがあります。臨済宗の葬儀での焼香は1回が基本です。
<やり方>
  1. 仏前で合掌礼拝をする
  2. 抹香をつまみ、香炉に入れる
  3. もう1度、合掌礼拝をする
宗派によっては、抹香を額にあげてから焼香をすることもありますが、臨済宗ではしません。臨済宗の葬儀に参列する際は「焼香は1回、額に押しいただくことはない」と覚えておくと良いでしょう。とはいえ、絶対的なマナーではないので、他の参列者のやり方を見て確認すると安心です。

数珠の持ち方

臨済宗の数珠は、他宗派と同じく煩悩の数と同じ108玉から成ります。数珠を持ち歩くときは、左手の手首にかけてください。合掌など、両手を合わせるときは数珠を二重に。左手の親指と人差し指の間に数珠をかける際は、房の部分が下にくるようにして、右手を添えます。一重の略式の数珠を使う場合も、基本は同じ持ち方です。

香典の表書き

臨済宗では、香典の表書きに関するマナーはありません。他の宗派と同じく、四十九日までは「御霊前」と、それ以降は「御仏前」とします。香典袋に表書きなどを書く際は、葬儀では薄墨を、法要では黒墨を使うのが一般的です。

マナーや特徴を知っていれば臨済宗の葬儀でも安心

臨済宗の葬儀は焼香の回数が1回なことと、僧侶が途中で「喝」と叫ぶなどの特徴があります。接触機会の少ない宗派の葬儀に参列する際は、少しの知識であっても当日のマナーへの不安を抑える材料になります。ただし、作法を忘れてしまっても手を合わせて故人をしのぶ気持ちがあれば大丈夫です。