別れ花とは棺に花を手向ける儀式。手順や花の種類を解説

ご家族の通夜・葬式準備
別れ花とは棺に花を手向ける儀式。手順や花の種類を解説
別れ花とは、故人の眠る棺の中に参列者が1輪ずつ花を供える告別式の終わりの儀式です。故人と最後のお別れをするための大切な時間でもあります。この記事では、別れ花の基本的な意味や手順、使用する花の種類、値段の相場まで詳しく紹介します。落ち着いて儀式を迎えるための参考にしてください。

別れ花の基本情報

出棺前の儀式として知られる別れ花は、故人と向き合える最後のときでもあります。ここでは、概要や儀式の持つ意味について紹介します。心残りのないお別れのために役立ててください。

概要

別れ花は、亡くなった人を納めた棺に参列者が花を捧げ、別れを告げる儀式です。棺に入れる花そのものを別れ花と呼ぶこともあります。
儀式は家族や親戚、友人など、故人と深い縁のあった人を中心として出棺前におこなわれるのが基本。ただし、遺族が希望すれば一般の参列者も別れ花を捧げる場合があります。花は、通夜・葬儀の祭壇にある供花(きょうか・くげ)を用いるのが一般的です。

儀式をする意味

儀式の後には棺の蓋が閉じられるため、別れ花は故人の姿を見られる最後の時間となります。別れ花は故人への想いを込めて「さようなら」を言える、重要な意味を持ったひとときです。

お別れの儀の手順

ここでは、別れ花の儀式の一般的な流れを紹介します。そのときが訪れても慌てずに故人と向き合い、お別れができるようにしてください。

1.参加する人だけが残る

別れ花は、故人の顔が見られる最後の時間です。儀式に参加する人のみが残り、ゆっくりと別れを告げられるようにします。故人への想いを残らず伝えられるよう、心穏やかにその時を過ごしましょう。

2.別れ花を受け取る

お経や焼香といった葬儀・告別のひと通りの儀を終えたら、参列者には少し息をつく時間があります。この間、葬儀社のスタッフは棺を祭壇の前方へと移し、祭壇にある生花を棺に納めるサイズに切り分けてお盆に乗せます。花が回ってきたら、1人1輪受け取ります。

3.別れ花を棺に入れる

葬儀担当者に促されたら、1人ずつ棺へ花を捧げます。喪主、喪主の妻や夫、親や兄弟、子どもといった順が一般的です。花を捧げる際は、顔周りから体を覆うように入れます。
全員が終わった後に花が残っていたら、順番や縁は問わず何本か受け取り、すべての花を棺に入れます。出棺の時間が迫っているときや遺族が高齢などで手に余るときには、葬儀社のスタッフが花入れをサポートします。
花を捧げるときは声をかけても構いません。亡くなった人へ触れられるのもこのときが最後です。葬儀社のスタッフに確認してから、顔や体に触れても良いでしょう。故人へ手の温もりを伝えることができます。思い思いのやり方で、大切な人との最後の別れを悔いのない時間にすることが大切です。

4.愛用品も一緒に入れる

棺には、花だけでなく故人が好んで使っていたものや、思い出の品、大事にしていたものを一緒に入れられます。これを「副葬品(ふくそうひん)」と呼びます。家族や知人による手紙や寄せ書き、思い出の写真、生前好きだったお菓子やタバコ、衣類などを入れてはいかがでしょうか。
ただし、火葬場の炉が故障する原因となる金属やガラスを使ったものや、燃焼しきれないものなど、入れるのを避けるべきものがあります。あらかじめ葬儀社に相談し、間違いがないようにしてください。

別れ花に使われる花の種類

多くの場合は通夜や葬儀で祭壇に飾られた供花を捧げるので、別れ花は葬儀社のスタッフによって準備されます。希望があれば別の花を依頼、または用意します。白などの控えめな色味の花が一般的ですが、最近は淡いピンクや紫なども使われます。ここでは、使われることが多い花の種類を紹介します。

「格調が高い」「香りがお香に近い」など、さまざまな理由により、菊の花はよく祭壇に用いられます。長い期間飾れる花持ちの良さも、菊を取り入れる理由の1つです。
また、菊の花言葉は「誠実」や「真実」などで、故人を飾るのにふさわしい言葉とされています。菊にはさまざまな種類がありますが、落ち着いた印象の白を基調とした色を選ぶことが多いです。

ユリ

ユリは、菊と並んで祭壇に飾られることの多い花です。聖母マリアを象徴する花とされるため、キリスト教式の葬儀で頻繁に用いられます。ユリの花粉は付着すると取りにくいので、事前に花粉を取り除いてもらえるか葬儀社へ相談するのがおすすめです。
ちなみに、ユリの花言葉は「純粋」。特に葬儀に使われる頻度の高い白ユリは、ほかに「純潔」や「高貴」といった花言葉があります。

カーネーション

母の日に贈る印象が強いカーネーションですが、故人との別れに使われることもあります。葬儀に取り入れる場合は、赤ではなく白を選ぶのが基本です。「純粋な愛」や「尊敬」などが、白いカーネーションの花言葉。あの世へ旅立った大切な人へ、気持ちを込めて贈るのに適した花として知られています。最愛の人への別れ花に選んでみてはいかがでしょうか。

別れ花を選ぶときに注意すること

ここからは、葬儀にふさわしい別れ花を選ぶための注意点を紹介します。注意するポイントは、花の色や毒、香りです。知らないうちにマナー違反をしないよう、あらかじめ確認してください。

色や毒、香りに注意する

基本的に、別れ花として使用できない花の種類や色はありませんが、葬儀の場にふさわしい選び方を意識することが大切です。例えば、赤い花は血を思わせるため、避けた方が良いと言われています。また、トゲや毒のある花、香りがきつい花なども、故人と最後に対面する場に適していません。
ただし、亡くなった人が好んでいたのが赤い花だったり、亡くなる前に「使ってほしい」と依頼されたりした場合は、使っても差し支えはありません。季節柄などで叶えられないこともありますが、できる限り故人の気持ちを尊重したいものです。

自分で用意する前に葬儀社に相談する

自分で花を用意する場合は、斎場・葬儀社に相談してください。式場の都合や安全面などで外部の花屋で購入したものを使用できないときや、許可があれば持ち込み可能など、斎場・葬儀社によって決まりはさまざまです。故人を想って準備した花が使えずに悲しい思いを重ねることのないよう、あらかじめ確認することをおすすめします。

別れ花の手配と相場

別れ花の用意の仕方や相場について紹介します。手配をする際の基本的な知識として、活用してください。

手配方法

ここまでで触れたように、別れ花は祭壇で使われた供花を用いることがほとんどです。また、通夜などをせず、直葬や火葬式のような形で葬儀をする場合や、花を使った祭壇を設けない場合でも、花を手向ける別れの時間を作れます。どのような葬儀を選んでも、別れ花を取り入れたいときは事前に葬儀社へ相談してください。

相場

別れ花は基本的に祭壇の花や供花から使用するので、祭壇がない場合や特別なものを用意しない限り、別料金はかかりません。

ちなみに、祭壇に飾る供花の相場は、7,500円から15,000円程度。対にすると倍の金額になるほか、数量や花の種類で費用の相場は変わります。顔周りのみお供えするときは20,000円ほど、顔だけでなく全体にお供えするときは60,000円ほどが目安です。

別れ花で彩った棺でお別れを

別れ花には、故人に感謝を伝え、きれいなお花に囲まれた姿で見送りたいという遺族の想いが込められています。基本的には通夜や葬儀の祭壇や供花の花を使いますが、それとは別に準備できる場合もあります。故人への気持ちを別れ花に添えて、最後のお別れをしてくださいね。

この記事の監修者

政田礼美 1級葬祭ディレクター(厚生労働省認定・葬祭ディレクター技能審査制度)
家族葬のファミーユ初の女性葬祭ディレクター。葬儀スタッフ歴は10年以上。オンライン葬儀相談セミナーなどを担当。