「祈祷」の流れとマナー。願いを神様に正しく伝える方法

お葬式のマナー・基礎知識
「祈祷」の流れとマナー。願いを神様に正しく伝える方法

この記事はこんな方にオススメです

神社で祈祷をしてみたい
祈祷と祈願の違いを知りたい
祈祷とは、願い事を神仏へ伝えるために祈ること。寺社での祈祷を受ける時には家内安全や交通安全など、自分や家族の幸せを願います。流れや作法は神社やお寺によって若干異なるものの、基本的なものは共通しているので、事前に把握しておくと安心です。本記事では祈祷の意味や種類を始め、祈祷を受ける際の流れやマナーなどを紹介します。

神様へ願い事を伝える「祈祷」について

神社やお寺などで受けられる祈祷。かしこまった儀式のように感じられるかもしれませんが、祈願する内容は身近なものがほとんどです。まずは祈祷の意味や祈願との違い、祈祷の主な種類から紹介します。

祈祷の意味

「商売がうまくいくように」「家族が仲良く、そして健康に暮らせますように」など、叶えたい願いを神様に伝えるために祈るのが祈祷です。神社をイメージする人が多いかもしれませんが、実はお寺でも祈祷はおこなわれています。神社とお寺では、祈る人と祈りを捧げる対象が異なります。
<神社とお寺の違い>
  • 神社:神主が神様に対して祈りを捧げる
  • お寺:僧侶が仏様に対して祈りを捧げる
なお、浄土真宗には祈祷という考え方がありません。なぜならば、祈祷をしないことがお釈迦様の教えに従っていると考えられているためです。

祈願との違い

漢字や言葉の響きが祈祷と似ているものとして“祈願”があります。祈祷と祈願の違いは使われている言葉にあるように、祈ることと願うことです。同様の意味で捉える寺社もあれば、自ら頑張る自力と神仏にすがる他力のように明確に使い分けている寺社もあります。また祈祷には儀式的な意味合いが含まれていることが多いです。

祈祷・祈願の主な種類

個人が受けられる祈祷の主な種類は次の通りです。
家内安全 家族が健康に、そして幸せに過ごせることを願う
商売繁盛 商いが成功すること、お店などが繁盛、繁栄することを願う
安産祈願 子どもが母子とも無事に生まれてくることを出産前に願う
交通安全 自動車、自転車など乗り物の運転中に事故や故障に遭わないことを願う
車の買い替え時に新車のお祓いを受ける
合格祈願 受験や資格、就職試験などの合格を願う
学業成就 学んでいることの目標達成を願う
無病息災 病気をせず、健康で過ごせるように願う
この他にも、厄除け・厄払い、良縁祈願、病気平癒、渡航安全などもあるので、祈祷を受ける前に確認してみてはいかがでしょうか。なお、祈祷は個人だけでなく、会社や団体で受けることも可能です。上記にある商売繁盛のほか、五穀豊穣、企業隆昌、工事安全といったものがあります。また、世界平和のようにスケールの大きいもの、願いがかなったことを報告する神恩感謝(しんおんかんしゃ)も寺社によっては祈祷可能です。

神社で受ける「祈祷」の流れとマナー

祈祷を受ける際は、あらかじめ全体の流れを把握しておくと安心です。ここでは、神社でおこなう祈祷の一般的な流れを紹介します。実際の流れや作法は神社によって異なることもあるので、祈祷を受ける前に確認すると良いかもしれません。

①申し込みをする

まずは祈祷の申し込みをします。神社に社務所がある場合は、そこで申し込むのが一般的です。申し込み用紙に住所や氏名、祈願する内容、祈祷料(初穂料)の金額などを記入し、祈祷料とともに提出します。祈祷料は決まっていることが多く、相場は5,000円程度です。ただし、金額は祈祷の内容や規模、神社の格式などによって異なるので、事前に確認しておくことをおすすめします。
なお、人気の神社だと当日の受付が難しいことがあるようです。事前に予約が可能かどうか確かめ、できれば予約しておくことで「神社に行ったのに祈祷を受けられなかった」という事態を防げます。

②手水舎で身体を清める

申し込みが済んだら、祈祷を受ける前に身体を清めます。境内にある手水舎(ちょうずや・てみずや)で両手を洗い、口元を清めてください。ただし、現在は感染症の流行や予防のため、手水舎の柄杓が撤廃されている神社が多く見られます。その場合は、流水で両手と口を清めれば問題ありません。
手水舎での作法など、詳しくは以下の記事で紹介しています。

③祈祷が始まる

次は、いよいよ祈祷が始まります。自分の前に祈祷を受けている人がいたら、終わるまで待機してください。自分の番になったら、巫女や神職が社殿内の席へ案内してくれます。なお、社殿に入る際は靴を脱ぐことをお忘れなく。
準備が整ったら、太鼓の音とともに祈祷が始まります。祈祷では、参拝者をお祓いする修祓(しゅばつ)がおこなわれます。修祓は神職が祓詞(はらいことば)と呼ばれる短い祝詞(のりと)を読み、祭具でお祓いする儀式です。修祓中は、頭を下げた姿勢でお祓いを受けるのがマナーとされます。

④神職が神様へお願い事を伝える

修祓が終わったら、神様へお願い事を伝えるために祝詞を唱える祝詞奏上(のりとそうじょう)がおこなわれます。このときも、頭を下げた姿勢をするのがマナーです。祝詞奏上が終わったら、神様へ感謝の気持ちを伝えるために巫女が神楽を舞うこともあります。

⑤玉串奉奠をおこなう

次は、参加者が玉串奉奠(たまぐしほうてん)をおこなう番です。玉串奉奠とは、仏式の焼香のようなもの。玉串を神前に捧げて礼拝する儀式で、榊(さかき)の枝に紙をつけた玉串を神様に捧げます。
なお、感染症予防のため、玉串は用いずに拝礼のみになっている場合もあります。

⑥お札など(授与品)を受け取る

一連の儀式が終わったら神職が挨拶をし、神酒を参加者へ配ります。神酒は神様の力が込められた日本酒ですが、感染症予防のため代わりに飴が配られることもあります。
最後に、お札やお守りなどの撤下品(てっかひん)を受け取り、これで祈祷は終了です。授かったお札は神棚または目線より高い位置に飾り、小さなお守りはお財布などに入れて持ち歩くと良いと言われています。
お札の飾り方など、神棚について詳しくは以下の記事で紹介しています。

【Q&A】気になる「祈祷」に関する疑問を解決

祈祷料の渡し方や服装など、実際に祈祷を受けることに関する疑問や心配事を抱えている人も少なくないはず。そこで、祈祷に関する疑問を一つずつ解決していきます。

Q.祈祷料の渡し方は?

受付で祈祷料をそのまま渡すのは、マナー違反と捉えられる恐れがあるので注意が必要です。理想はのし袋、ない場合は白い封筒に入れて渡します。祈祷料を入れるのに適したのし袋は、水引があるもの、かつ紅白で蝶結びのものです。結び切りは「繰り返しあってはならない」とされる結婚式に用いられるので、何度でも受けられる祈祷には向かずマナー違反とされます。
のし袋や封筒の表書きは、上段に「御祈祷料」や「初穂料」など、下段に祈願する人の名前を記載します。なお、祈祷で「お布施」という言葉は使えません。「お布施」は仏教用語で「他人に施しを与える」ことを意味します。祈祷料は「神様へ捧げるもの」なので適さないのです。

Q.服装に決まりはある?

祈祷は神様へお願い事を伝える儀式ですので、過度にカジュアルな服装や露出の高い服装は避け、フォーマルを意識するのが理想です。女性はスーツかワンピース、男性はスーツが適しています。
また、社殿に入る際は靴を脱ぐため、素足にならないよう靴下やストッキングを履いておくと良いでしょう。

Q.本人が神社に行けないときは?

何らかの事情で、本人が祈祷を受けられないこともあります。その場合は、代理人が祈祷を受けることも可能です。代理人が受ける場合は、本人(願い事をする人)の住所、氏名、年齢(生年月日)、お願い事などを申し込み時に書きます。
ただし、神社によっては代理人の情報を記載することもあるので、事前に確認することをおすすめします。
また郵送等による祈祷を受け付けているところもあります。

Q.手水舎で自分の柄杓を使ってもいい?

感染症予防で、神社の手水舎で柄杓を撤去しているところが増えています。そんな時でも柄杓が使いたい人にはマイ柄杓がおすすめです。マイ柄杓とは、携帯用の小型の柄杓です。柄杓の共用を停止しているところも、道具類の持ち込み禁止でなければ使用できます。
マイ柄杓は持ち運びに便利なサイズ感かつ軽量で、木製の見た目もおしゃれです。インターネット通販でも購入できますので、気になる人は探してみても良いかもしれません。

神社で「祈祷」を受けて幸せを願おう

自分や家族の幸せを神様にお願いする、祈祷。初めて受けるときは緊張するかもしれませんが、大まかな流れやマナーを把握しておけば心配いりません。さっそく、祈祷を受けられる神社を探してみてはいかがでしょうか。