「僕の“終活”は熊との戦い」タレント 厚切りジェイソンさん【インタビュー前編】~日々摘花 第19回~

コラム
「僕の“終活”は熊との戦い」タレント 厚切りジェイソンさん【インタビュー前編】~日々摘花 第19回~
人は必ず、大切な人との別れを経験します。その深い悲しみと、そこから生まれる優しさを胸に、“今日という日の花を摘む”ように、毎日を大切に生きてゆく……。「日々摘花(ひびてきか)」は、そんな自らの体験を、様々な分野の第一線で活躍する方々に共有していただく特別インタビュー企画です。

第19回のゲストは、お笑い芸人の厚切りジェイソンさん。本編は、前・後編の2回に渡ってお送りする、前編です。
米国・ミシガン州立大学でコンピューターサイエンスを学ぶ学生だった19歳の時、インターンシップで働くために初めて来日。同じ職場だった奥様と出会い、20歳で結婚したジェイソンさん。前編では夫婦を見守ってくれた、奥様のお父様との別れのエピソードと、ご自身の死生観についてお話をうかがいました。

Why!? 死にたくないけど、気にもしない

ーーいきなりですが、ジェイソンさんは「死」というものをどのように捉えていらっしゃいますか?

ジェイソンさん:特に気にしないです。

ーー「死」を「気にしない」とは、ユニークな表現ですね。

ジェイソンさん:Why!?  日本語の意味そのままですよ。ちょっとクール過ぎるように聞こえるかもしれないけど、僕にとって「死」というのは、電気のスイッチを押して「オフ」になるようなもの。死んだら死んだで仕方がないというか、心配しても仕方がないと思っています。

ーー子どものころに「死」を怖いと感じたことは?

ジェイソンさん:僕は子どものころから論理的に物事を考えるのが好きで、あまり感情的な人物ではありません。「死」についても、「人はみんな死ぬし、それが人生」って自然と考えていましたね。

もちろん、死にたくはないですよ。ただ、いつか「死」を迎えるのは事実。それならば、ただ今を大事に、いつ死んでも「悔いのない人生だった」と思いたいですね。その方が「死」を恐れながら時を過ごすよりも合理的だし、楽しいじゃないですか。

妻と義父との最後のドーム観戦

ーー身近な方を亡くされた経験は?

ジェイソンさん:数年前に妻のお父さんが亡くなりました。元気なお父さんでしたが、亡くなる1年ほど前にがんが見つかり、亡くなるまではあっという間でした。

ーー奥様のお父様とジェイソンさんはよくお会いになっていたんですか?

ジェイソンさん:初めて会ったのは、妻との結婚を決めた2005年。当時僕は19歳で、米国・ミシガン州立大学でコンピューターサイエンスを専攻する学生でした。神奈川県・厚木にある旭化成の研究所で1年間インターンをするために初めて日本に来て、同じ職場で働いていた妻と知り合って、3カ月後には結婚することになったんです。

結婚後、僕たちは米国・シカゴで暮らし、お父さんには娘と離れるさみしさもあったと思います。それでも、まあ、なんとか、見守ってくれました。シカゴにも遊びに来てくれて、アメリカらしい大きなハンバーガーを一緒に食べたのを覚えています。海外はこの時が初めてだったそうです。

2011年に日本に戻って半年ほどは、妻の実家で一緒に住みました。僕がお笑いをやりたいと思うきっかけになった『エンタの神様』(日本テレビ)を家族で見たりしましたね。芸人になることも応援してくれて、僕が『エンタの神様』に出演した時は「なんか、すごいことになりましたね」とただただ驚いていました。
ーー素敵なお父様ですね。

ジェイソンさん:そうですね。だから、妻はお父さんが亡くなったことをとても悲しんで、いまだに思い出しては泣きます。僕もさみしいけれど、妻の思いとは比べものにならないです。

ーー奥様が悲しんでいらっしゃる時、ジェイソンさんはどのようにされますか?

ジェイソンさん:ただそばにいるだけですね。慰めるのは得意じゃないです。

そう言えば、ひとつ、妻にとって良かったなと思うのは、お父さんが亡くなる直前に、父と娘で東京ドームに野球を見に行けたこと。お父さんはものすごく野球が好きだったんです。家族の思い出がある中華料理のお店でごはんを食べ、その後に試合を見て、タクシーで帰ったそうです。本当に最後の最後という時期で、病院からは外出はやめた方がいいと言われたようですが、お父さんも病院でただ死を待つよりは、娘との時間を楽しみたいと考えたんでしょうね。妻とお父さんのいい思い出になったと思います。

冒険のリスクは、残りの人生が短くなるほど低くなる

ーーご自身は、最後の時をどのように過ごしたいとお考えになりますか?

ジェイソンさん:リアルに想像したことはありませんが、生きながら死ぬというか、ある日突然最後を迎えたいですね。あれやこれやと考えることなく、最後まで思いっきり生きられますから。選択肢があるのなら、長く闘病するよりも、登山中の遭難死を選びます。

どうせ死ぬのなら、冒険をしてみたいですね。僕は常にやりたいことはやるようにしていますが、いつ病気になってもおかしくない年齢になったら、より冒険的になると思います。エベレストに登るとか、飛行機からパラシュートをつけて飛び降りるとか。熊とも戦ってみたいです。

ーー年齢を重ねると守りに入りがちですが、ジェイソンさんは真逆ですね。

ジェイソンさん:冒険したいかどうかは人それぞれですが、冒険のリスクは残りの人生が短くなるほど低くなります。残りの人生が50年として、50年分の命を賭けてまではできない冒険も、余命1カ月しかなければ、リスクは余命50年の時点と比較して600分の1。リスクが低くなるので、チャレンジしやすくなります。僕が「年を取ったら、冒険したい」と考えるのは、精神論ではなく、ただの「リスク管理」に基づいているんですよ。

ーーなるほど。ジェイソンさんが命を賭けた危険な冒険を始めたら、「人生のしまいどき」に入ったというサインですね。

ジェイソンさん:はい。ジェイソンの「終活」は熊との戦いです!

~EPISODE:さいごの晩餐~

「最後の食事」には何を食べたいですか?
妻の作るチーズナンが食べたいです。よく作ってくれるんですけど、おいしいですよ。僕の体の半分以上はチーズナンでできています。いつもは食べ過ぎに注意していますが、最後の食事では、お腹が破裂するまで食べようかな。最後なら、カロリーは気にしなくていいですしね。

#チーズナン

日本のインド料理店ではおなじみの「ナン」。インドで主食として食べられていると思われがちだが、ナンを日常的に食べるのはインドやパキスタンのごく一部。家庭では一般的ではない。また、インドのナンは丸い形であることがほとんど。「チーズナン」もインドが発祥ではなく、日本で「進化」したもののようだ。

プロフィール

タレント/厚切りジェイソンさん

【誕生日】1986年4月9日
【経歴】アメリカ・ミシガン州生まれ。ミシガン州立大学を卒業後、イリノイ大学大学院修士課程修了。2011年にIT企業の日本法人支社長として来日。お笑い芸人としてデビューして4カ月でピン芸人の大会「R-1ぐらんぷり2015」決勝に進出。IT企業の役員も務める二刀流芸人。
【そのほか】映画『コンフィデンスマンJP 英雄編』(2022年1月公開)、ドラマ『いいね! 光源氏くん』(NHK総合)に出演するなど俳優としても活動している。

Information

IT企業の役員でもあるジェイソンさんによる初のお金に関する著書『ジェイソン流 お金の増やし方』(ぴあ刊)。資産を増やすための考え方から、具体的な投資方法や節約術、ライフステージに応じたマネープランの立て方、娘たちに実践しているお金の教育まで、お金だけでなく人生を豊かにするためのヒントが満載。
(取材・文/泉 彩子  写真/鈴木 慶子)