仏教各宗派の由来や特徴・葬儀のマナーの違いを解説

お葬式のマナー・基礎知識
仏教各宗派の由来や特徴・葬儀のマナーの違いを解説
インドで発祥した仏教は、中国や朝鮮半島を経由し日本に伝わる過程でたくさんの宗派へ分かれました。2018年末時点、157の仏教宗派が存在します(文化庁『宗教年鑑』令和元年版より)。宗派の違いは、お経、焼香のやり方といった葬儀のマナーにも表れます。ここでは、宗派の由来や葬儀のマナーについて解説します。

日本における仏教の代表的宗派とその特徴

日本にある157の仏教宗派の中でも、代表的なのが「日本八宗」と呼ばれる、8つの宗派です。日本八宗は、それぞれ派生時期や特徴が異なっています。

日本の仏教 日本八宗とは

仏教は538年に日本へ伝来して以来、その時代の人々の心を反映して多くの宗派に分かれました。奈良時代には学問的な仏教が盛んになり、平安時代には唐から帰国した最澄が天台宗を、空海が真言宗を開きました。

平安末期から鎌倉時代にかけては飢餓や疫病が流行し、不安な民衆の心を救うため、阿弥陀仏を信仰する浄土宗、浄土真宗が開かれました。浄土真宗はのちに分裂し、浄土真宗本願寺派と真宗大谷派へ分かれます。

鎌倉時代には禅から派生し、曹洞宗、臨済宗が開かれます。修行を重視する禅系の宗派は武士の間で好まれ、水墨画や茶道といった文化にも影響を与えています。また、同時期に法華経を中心とする日蓮宗も生まれています。

人口の多い宗派は?

現在日本で最も人口の多い宗派は浄土宗、浄土真宗など浄土系の宗派です。浄土真宗本願寺派が約788万人、真宗大谷派が約751万人、浄土宗が約602万人となっています(文化庁・2019年度「宗教統計調査」より)。次いで真言宗、日蓮宗、曹洞宗などが続いています。

宗派同士の関係は?

浄土真宗は浄土宗から派生した宗派です。どちらも本尊が阿弥陀如来、経典を浄土三部経とするなど、似た特徴を持ちます。浄土真宗本願寺派と真宗大谷派は、双方とも浄土真宗の一派で、元はひとつの宗派でしたが、戦国時代に2つに分かれました。

臨済宗、曹洞宗は禅の思想から発展した、禅系の宗派です。真言宗と天台宗は教えを外に出さず厳しい修行をする、密教に分類されます。天台宗は多面的な宗派で、天台宗を学んだ人が他の宗派の宗祖となるなど、他宗派と広い関わりを持っています。

仏教の宗派による違い

釈迦如来は悟りを開いて以来、たくさんの教えを人々に説いてきました。その膨大な教えを記したどの経典を重視するか、本尊はどの仏にするかによって、宗派の違いが生まれました。ここでは宗派による違いをご説明します。

天台宗

天台宗を開いた宗祖は『最澄』です。多くの仏教宗派を学んだ最澄の教えに従い、奈良時代に流行した「顕教」と、平安時代に流行した「密教」のふたつの要素をあわせ持ちます。

「全ての人に悟りの世界を」という『妙法蓮華経(法華経)』の考えをもとに、全ての人は仏の子供で、一人ひとりが輝き合う世界にしたい、という教えを伝えています。

経典は『法華経 、大日経、阿弥陀経』で、本山は『比叡山延暦寺(ひえいざんえんりゃくじ・滋賀県)』です。本尊は定められていません。

真言宗

宗祖は『空海(弘法大師)』で、お大師さまと呼ばれることもあります。

すべての生命は大日如来の化身であり、仏のような心と言葉でものごとをおこなえば、誰もが仏になれるという教えを説いています。

宇宙を象徴的に表した曼荼羅(まんだら)思想を持ち、『大日如来』を本尊とします。経典は『大日経、金剛頂経、般若心経』などで、本山は『高野山金剛峯寺(こうやさんこんごうぶじ・和歌山県)』です。分派が多いのが特徴です。

浄土宗

宗祖は『法然』です。従来の仏教は、出家者が修行することによって成仏できると考えられていましたが、浄土宗では修行によって成仏するのではなく、念仏をひたすら唱えることで極楽浄土へ行けると説きます。

念仏を唱えれば誰でも救われるという教えは、当時の仏教としては斬新で、身分を問わず幅広い層の民衆に信仰されました。本尊は『阿弥陀如来』で、経典は『浄土三部経(観無量寿経、無量寿経、阿弥陀経)』とされます。本山は『知恩院(ちおんいん・京都府)』です。

浄土真宗本願寺派

宗祖は『親鸞』で、親鸞は浄土宗の宗祖である法然の弟子にあたります。浄土宗から派生して浄土真宗となり、戦国時代に浄土真宗本願寺派と真宗大谷派に分かれました。

本尊は『阿弥陀如来』で、経典は『浄土三部経(観無量寿経、無量寿経、阿弥陀経)』です。本山は『龍谷山本願寺(りゅうこくざん ほんがんじ・京都府)』で、“西本願寺”、“お西さん”とも呼ばれます。

浄土宗との違いは、浄土宗は念仏を唱えることを重視しますが、浄土真宗は念仏を唱えようとする気持ちを大事にします。また浄土宗は戒律が厳しいのが特徴ですが、浄土真宗は僧侶が結婚したり肉を食べたりしても問題ないとされます。

真宗大谷派

宗祖は浄土真宗本願寺派と同じく『親鸞』です。浄土真宗の一派であり、戦国時代に浄土真宗から、浄土真宗本願寺派と真宗大谷派に分かれました。

本尊は『阿弥陀如来』で、経典は『浄土三部経(観無量寿経、無量寿経、阿弥陀経)』です。本山は『真宗本廟東本願寺(しんしゅう ほんびょう ひがしほんがんじ)』で、“お東さん”とも呼ばれます。

曹洞宗

宗祖は『道元』ですが、第四祖の『瑩山(けいざん)』が曹洞宗を広く普及させたため、道元と共に瑩山も崇めます。修行を重視しますが、“悟りを求めない修行”により悟りを得られると説きます。

臨済宗と同じ禅系の宗派ですが、こちらは禅問答はせず、ただひたすら座禅をします。面壁(めんぺき)といって、壁に向かって座禅する修行もあります。

本尊は『釈迦如来』です。特定の経典はありませんが、『般若心経』などを唱えることもあります。本山は『永平寺(えいへいじ・福井県)、總持寺(そうじじ・神奈川県)』です。単一宗派で分派がないのが特徴です。

臨済宗

宗祖は『栄西』で、座禅などの修行を重視する禅宗のひとつです。経典に依存せず、問いかけに対して答えを考える禅問答など、人間の心を見つめる修行をおこないます。すべてのものに仏性を見るという教えから、特に経典や本尊は定められていませんが、基本は『釈迦如来』を本尊とします。

経典に頼らない教えですが、『般若心経』を唱えることもあります。さまざまな派に分かれ、臨済宗妙心寺派の本山は『妙心寺(みょうしんじ・京都府)』というように、派ごとに本山が異なるのが特徴です。

日蓮宗

宗祖は『日蓮』で、本尊は『釈迦如来、大曼荼羅』です。かつては法華宗、日蓮法華宗と呼ばれていました。

他の宗派は複数の経典を読むことが多いのですが、日蓮宗は『法華経』のみを重視します。法華経は全てのお経の中で最も優れたもので、釈迦如来の心が映し出されているとされ、非常に尊ばれます。特に、お題目といわれる「南無妙法蓮華経」の七文字には、法華経の功徳が集まっていると説きます。本山は『身延山久遠寺(みのぶさんくおんじ・山梨県)』です。

葬儀のマナーの違い

宗派による教えの違いから、葬儀の際は唱えるお経や焼香の作法にも宗派の特色が出ます。

読経の違い

各宗派は重視する経典が違うため、僧侶が葬儀で唱えるお経も異なります。これを聞き分けるには、日蓮宗の「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」というお題目や、各宗派の念仏を聞くとわかりやすいでしょう。

・天台宗は「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」、もしくは「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と唱える
・真言宗は「南無大師遍照金剛(なむたいしへんじょうこんごう)」と唱える
・浄土宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派は「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と唱える。浄土宗本願寺派・真宗大谷派は参列者全員で「南無阿弥陀仏」と10回唱えるのが特徴
・曹洞宗、臨済宗は「南無釈迦牟尼仏(なむしゃかむにぶつ)」と唱える
・日蓮宗は「南無妙法蓮華経(なむみょうほうれんげきょう)」と唱える

焼香の作法の違い

各宗派はお焼香の回数や作法にも違いがあります。お焼香の回数は分派によっても変わるため、お焼香の前に案内があった場合は指示の通りにおこなってください。

・天台宗、真言宗は抹香(まっこう)を目より上にかかげ、3回おこなう
・浄土宗は抹香を目より上にかかげ、1~3回おこなう
・浄土真宗本願寺派は抹香を目より上にかかげない1回、真宗大谷派は2回おこなう
・曹洞宗は最初の1回は抹香を目より上にかかげおこない、2回目はかかげずおこなう
・臨済宗は抹香を目より上にかかげ、1回おこなう
・日蓮宗は抹香を目より上にかかげ、1~3回おこなう

葬儀のときは仏教の宗派による違いを参考に

仏教の宗派はそれぞれが重視する経典によって教えが違います。それが現代では葬儀の作法の違いとなって表れています。宗派ごとのお経や焼香の作法を知っておけば、いざというときも落ち着いて対処できるでしょう。心のこもった葬儀がおこなえるよう、仏教の宗派による違いがあることも覚えておきたいものです。